警察官は交通取り締まりに「ノルマ」はあるのか?

 全国ではさまざまな場所で警察官による交通の取り締まりがおこなわれています。

 噂のひとつには、「取り締まりにノルマはあるのか」という話題があります。なかには「多く取り締まることで給料アップに関係する」などと認識している人もいるかもしれません。

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 では、実際のところはどうなのでしょうか。今回は、取り締まりの経験を持つ元警察官に「取り締まり時のノルマ」について詳しく話を聞きました。

警察官に「ノルマ」があるってホント? (画像はイメージ)

 今回話を伺ったのは交番勤務6年、生活安全部門2年携わってきた経験を持つ警察官のBさん。取り締まり時のノルマや給与について、以下のように教えてくれました。

 交通取り締まりは、交通事故を未然に防止するため、主に白バイ隊員や交番の警察官などがおこなっています。

 交番の警察官を例にお話すると、交番勤務の警察官には1日の間にさまざまな業務があります。

 例えば、1軒ごとに家庭を訪問して困りごとを聞いたり、事件・事故への注意喚起をしたりする巡回連絡という活動や、交通事故・刑事事件の対応、遺失拾得物の処理、夜間パトロールなどがあります。

 交通取り締まりもその業務のうちのひとつで、住民から要望のあった場所、交通事故が多い場所、事故が発生する危険性が高い場所などを中心にパトカーやバイクを使って取り締まりをおこないます。

 実際に交番で勤務をしていた当時は、信号機のない横断歩道や一時停止の標識がある場所で歩行者とクルマが衝突する事故が発生することもあったので、事故防止のため、重点的に取り締まりをおこなっていました。

 ここで噂のひとつにある「警察官の交通取り締まりにノルマがあるのか」という疑問についてお答えすると、「ノルマは設けられていない」というのが実状です。

 理由としては、例えば新型コロナウイルスが流行し、外出自粛が求められている期間はクルマの交通量が大幅に減少したり、そもそも交通違反をする人が少なければ多くの件数を取り締まることはできないため、必ず達成しなければいけない件数を定めること自体が困難だからです。

 その代わり、警察官の士気を高める目的で、1か月間に何件くらい切符を切るという「目標件数」が定められています。

 これを聞くと、目標件数という名の実質ノルマではないかと考える人がいるかもしれません。

 しかし、この目標を達成できなかったからといって、給料を下げられる、上司から何か不当な扱いを受けるといったことはありません。

 あくまで努力義務のようなものであり、職務怠慢でない限りペナルティを受けることはないといえます。

 ただし、白バイ隊員は交通取り締まりの業務をメインに行う部署であるため、さまざまな業務を幅広く行う交番の警察官よりも厳しい目標件数を課されるという話は聞いたことがあります。

 また交通取り締まりにノルマの噂に加え、「交通取り締まりをたくさん行うと給与が上がるのではないか」、「異動の希望が通りやすくなるのではないか」などの質問を受けることもよくあります。

 給与については、たくさん交通取り締まりをしたからといって給与がアップすることはありません。

 警察官の給与は公安職給料表で定められており、表の等級が上がらなければ基本給が上がることはないからです。

 業務成績が優秀であれば等級が上がって給与がアップする可能性はあるかもしれませんが、交通取り締まりの件数だけでなく、業務全般を総合的に評価するものなので、交通取り締まりのみを頑張ったからといって給与が上がるわけではないのです。

 異動の希望についても、交通取り締まりの件数で左右されることはまったくありません。

 警察官は非常に異動の多い職業であり、早ければ数年に1度のペースで勤務地が変わり、交通取り締まりの件数が多くなくても希望する部署へ配属されるケースもあります。

 生活安全課、刑事課、警備課など交通取り締まりに直接関わらない部署も多いので、取り締まりの件数で異動の希望が通りやすくなることはないといえるでしょう。

※ ※ ※

 警察官の交通取り締まりは、地域によって差はあるといえますが、ノルマはないというのが実際のところのようです。

 ただし、交通事故を減らすためにも目標という形で、日々取り締まり活動がおこなわれています。