この時期にしか休みが取れないなど暑い夏でも旅行をするコツとは?(写真:koumaru/PIXTA)

6月下旬、日本の各地で統計史上最も早い梅雨明けが確認され、東京では6月30日時点で6日連続の猛暑日を記録している。これだけ暑いならば、どこにも出かけたくないという人も少なくないだろう。

だが、この時期に旅行する人にとって猛暑は避けられない。そこで、猛暑のなか、少しでもその影響を軽減するにはどのような旅行のプランニングがたてられるのだろうか、検討してみたい。

まず思いつくのが、暑くないところに旅行することだろう。その筆頭ともいえるのが北海道である。だが、今年にかぎっては、北海道を旅行するうえで気をつけなければならないことがある。それはすでに報道されているように、レンタカー不足と価格高騰の問題である。

例えば、楽天トラベルで、7月下旬利用で検索すると、新千歳空港から48時間借りるだけで2万9800円が最安値となった(6月29日時点)。北海道と沖縄は特にレンタカーの台数が逼迫しているため、航空券を確保する前にまずはレンタカーをおさえるか、あるいは相場を確認することからスタートしたい。

平均最高気温を見てみる

東北地方なら北海道ほどではないが涼しいのではと考える人は少なくないだろう。だが、日本海側を中心に真夏の東北地方の最高気温は意外と高い。気温を比較する場合は、最高気温に注目したほうがよい。旅行中耐えがたい苦痛をもたらすのは、おおむね日中の最高気温だからだ。もちろん湿度や風、照り返しなど条件により感じ方は変わるが、ここでは気温を1つの基準としてみてみる。

2021年8月平均最高気温は次のとおりである(出所:気象庁「過去の気象データ」)。

青森市 27.7度
盛岡市 28.0度
秋田市 29.4度
仙台市 28.7度
山形市 30.9度
福島市 30.1度
東京  31.6度

山形市や福島市では、東京と大差ないことが読み取れる。

長野県や山梨県などの避暑地を選択肢としている人もいるだろうが、これらも涼しいのは軽井沢や菅平、清里など標高が高いところだけだ。例えば、長野市は30.9度。甲府市にいたっては32.4度と東京よりも暑い。盆地はフェーン現象の影響から、特に過酷な状況を生みやすいといえる。

山は涼しく海は暑いというイメージも見直しが必要だ。例えば、千葉県で最も低いのは銚子市の29.3度。これは秋田市と大差ない。沖縄県で最高気温が最も低いのは慶良間諸島の渡嘉敷島で、最高気温は28.6度。これも仙台市とほぼ同等である。(※2021年8月の平均最高気温)

旅行とは、つきつめていえば、時空間行動である。われわれは猛暑をコントロールできないが、猛暑を避けられる目的地に行くことと同様に、時間の使い方によっても猛暑をある程度避ける旅行が可能だ。

具体的には気温が最も高い10〜17時ごろの外出行動を控えることになる。だが、この時間は多くの施設が開いている観光旅行のコアタイムともいえる。そこで提案したいのが、朝や夕方以降でも楽しめる行き先を選ぶ旅行である。

京都がおすすめ!?

例えば、筆者は夏場の猛暑で知られる「京都」をあえておすすめの場所としたい。これは、京都が朝や夕方以降の時間を有効に使える旅先だからだ。ちなみに京都の2021年8月の平均最高気温は32.3度だった。

たしかに神社仏閣の参拝をメインにするならば、10〜17時に外出せざるをえない。だが、猛暑下では、こうした参拝は思い切って行程にいれないか、あるいは朝9時すぎに1カ所のみ入れるという形にしてみると身体的なダメージは少なくてすむ。その代わりに午前5時から開門している東寺や、24時間観光可能な伏見稲荷大社や八坂神社を朝から訪れてみるのはどうだろうか。

暑さを避けるだけでなく、人混みを回避できるというメリットもある。そして10時から17時にかけては、冷房の完備された美術館や博物館などをメインにするほか、ランチやカフェなどでゆっくり時間を過ごし体力を温存する。

連泊するならば、市街地の中心部に宿をとり、そこで仮眠をとったり、シャワーを浴びたりすることも可能だ。夕方以降は暑さも落ち着いてくるので再び街に繰り出す。祇園などはむしろ夜間のほうが美しく観光に向いているともいえるし、最近は、「ザ・ホテル青龍 京都清水」最上階のルーフトップバー「K36」が話題になるなど、夜の観光の選択肢はさらに拡がっているといえる。


K36 Rooftop(写真:ザ・ホテル青龍 京都清水)

猛暑のダメージを避けるのには交通機関の選択も重要だ。最も有利なのはレンタカーを借りてなるべく車で移動することだが、前述したようにレンタカーの数がかぎられているので注意が必要だ。

レンタカーでは駐車場選びも重要になる。目的地に着く前にあらかじめ駐車場の位置を調べておくことで、目的地までの徒歩の距離を短くすることができる。複数人で旅行している場合、駐車場から全員で目的地まで歩くのではなく、目的地近くで同乗者を降ろして、ドライバーだけが駐車場にとめ、目的地で合流することも有効な手段となる。

体力の消耗を抑えることが重要

公共交通機関にたよらざるをえない場合は、地下鉄の発達している大都市が猛暑に強いといえる。例えば東京や大阪の中心部では多くの目的地に地下鉄で移動することができる。鉄道やバスだと猛暑のなか、ホームやバス停などで待たされることで疲弊してしまうが、地下鉄の多くは直射日光を避けられるのは当然のこととして、エアコンも入っているので快適な移動ができる。

それでも、日中歩かなくてはならない状況もあるだろう。水分補給などの一般的な暑さ対策はいうまでもないが、そのときは、もしアーケードがあるなら、その道を選択する。そうでない場合も太陽光線との関係を見定めながら、どちら側の歩道を歩くかなどをこまめに選択することで、体力の消耗に差が出てくる。また、日帰り温泉、銭湯に加えてネットカフェのシャワーなどを活用して適宜汗を流すことも有効だ。

持ち物で暑さを避ける工夫も必要だ。旅行用の傘はそのまま日傘として利用できる。筆者が愛用するのは扇子である。軽く持ち運びに便利でどこでも簡単に涼をとることができ、重宝する。また、冷房のかかった屋内と猛暑の屋外では、すぐに脱ぎ着できる衣服にすることで、不快さを最小限にとどめることができる。

好むと好まざるとにかかわらず、これから数カ月はこの猛暑とつきあって旅行しなければならない。そして、来年以降の夏も同様の状況が続くだろう。猛暑と賢く共存して旅行する技術は、日本を旅行する人すべてにとって重要な項目となりそうだ。

(橋賀 秀紀 : トラベルジャーナリスト)