中高年の人のうち、片足で立つ姿勢を10秒間続けられない人は、その後の10年以内に死亡するリスクが非常に高いことが、最近の研究により判明しました。この研究により、片足立ちが死亡リスクが高い人を特定するための簡易で日常的なテストとして有用なことが示されました。

Successful 10-second one-legged stance performance predicts survival in middle-aged and older individuals | British Journal of Sports Medicine

https://bjsm.bmj.com/content/early/2022/05/15/bjsports-2021-105360

June: 10-second one-legged stance | News and features | University of Bristol

https://www.bristol.ac.uk/news/2022/june/tne-second-one-legged-stance.html

Can't Complete This Balance Test? Study Finds It Predicts an Earlier Grave

https://www.sciencealert.com/can-t-stand-on-one-leg-for-more-than-10-seconds-you-could-be-headed-for-an-early-grave

イギリス・ブリストル大学の研究者であるSetor Kunutsor氏らによると、筋力や柔軟性とは異なり、バランスを取る力は60歳ごろまでかなり良好なまま保たれるものの、その後急速に衰え始めるとのこと。しかし、バランス機能に関するテストは中高年の健康診断にあまり採用されていません。

「長年にわたりバランス機能の評価に使われてきたテストが健康診断に生かされていないのは、標準的な検査方法や確かなデータがないからではないか」と考えたKunutsor氏らの研究チームは、体力や運動機能と死亡リスクとの関係を調べるために1994年から行われている取り組みであるCLINIMEX Exercise cohort studyのデータを解析する研究を行いました。

解析の対象となったのは、2009年2月〜2020年12月までの間に検査を受けた51〜75歳、平均年齢61歳の参加者1702人で、参加者の68%は男性だったとのこと。検査では、片足で10秒立つテストが実施されました。その際の姿勢として、参加者は両腕を体の横に下ろしたまま前を向き、上げた方の足を反対の足のふくらはぎに付けるよう指示されました。



検査の結果、ほぼ5人に1人に当たる348人が、片足で10秒間立っていられませんでした。不合格者の割合は5年ごとにほぼ倍増しており、51〜55歳では約5%、56〜60歳では約8%、61〜65歳では約18%、66〜70歳では約37%、71〜75歳では約54%だったとのことです。

そして、検査から平均7年間の追跡期間中に亡くなった人は、対象者の7%に当たる123人でした。主な死因の内訳は、がん32%、心血管疾患30%、呼吸器疾患9%、新型コロナウイルス感染症の合併症7%でした。

研究チームが、死亡者と片足立ちテストの結果を分析したところ、片足立ちが10秒間できた人の死亡率は4.5%だったのに対し、不合格だった人では17.5%と、13ポイントもの差が出ました。不合格だった人は全体的に健康状態が悪く、肥満・心臓病・高血圧・高脂血症の傾向がありました。特に、不合格だった人が2型糖尿病だった割合は、合格だった人の3倍もあったとのことです。

研究チームは、年齢・性別・基礎疾患を考慮して解析した結果から、「片足で10秒間立っていられないことは、それ以降の10年間に何らかの原因で死亡するリスクを84%高める」と結論付けました。



なお、この研究はあくまで結果を観察したものなので、なぜ片足立ちができない人は早死にするのか、というメカニズムが特定できていないことに注意が必要とのこと。また、参加者は全て白人のブラジル人であるため、他の地域や民族には当てはまらない可能性もあります。

その上で、Kunutsor氏は「今回の結果は、10秒間の片足立ちが、死亡リスクが高い中高年の特定に使える、日常的で実用的なツールである可能性を示唆しています」と述べました。