この記事をまとめると

■不正軽油の利用を首都圏から一掃すべく東京都が不正軽油に関するホットラインを開設

■不正軽油は軽油に灯油や重油を混ぜることで税負担を軽くする違法行為

■不正軽油を使うと排出ガスから白煙や黒煙が出やすくなり、大気汚染につながる

無印のGSで極端に安い軽油が売られていたら……

 東京都は、不正軽油に関するホットラインを開設したという。大気汚染の元凶であり、また脱税行為でもある不正軽油の利用を、首都圏から一掃する狙いがある。

 不正軽油とは、ディーゼルエンジンで使われる軽油に、灯油や重油を混ぜた燃料をいう。目的は脱税だ。軽油には、軽油取引税が課せられており1リットル当たり32.1円が、元売り業者から引き取った際に徴収される。給油所で販売されるときは、燃料代に軽油取引税が含まれた代金を消費者は支払っている。灯油や重油には石油石炭税が課せられているが、軽油取引税に比べはるかに安い税額のため、軽油にそれらを混ぜれば、混ぜた分だけ税負担が軽減され、給油所の儲けが増える。

 大手元売り会社の看板を背負った給油所でそのような不正を行えば、社会的問題として元売り企業が批判対象となる恐れがあるため、不正軽油の取引はないと思われる。だが、安売りを特徴とした無印などと呼ばれる給油所では、不正軽油の販売が行われる可能性が考えられる。

 給油所には、ガソリンや軽油の販売価格が提示されている事例が多く、そのなかで大幅に安値が付けられているときは、不正燃料が考えられる。

不正軽油の使用による異常な燃焼が大気汚染を誘発する

 不正軽油を使うと、灯油や重油は軽油と比べ燃焼条件が異なるので、排出ガスから白煙や黒煙が出やすい。

 現在のディーゼル排出ガス規制下では、かつてのような黒煙など目に見える煙が出ることはまずない。白煙だろうが黒煙だろうが、目に見える煙が排出されることはあり得ない。したがって、そうした目に見える煙を出すディーゼル車を運転している人自身、不正軽油であることを知って使っている可能性は高い。

 不正軽油の使用は、いまにはじまったことではない。不景気になると、経費を節減しようと不正な燃料を販売したり、利用したりということが繰り返されてきた。しかし、それは脱税という犯罪行為であるうえ、大気汚染という大きな括りだけでなく、そのディーゼル車の後ろを走るクルマは、外気導入の空調の状態では、有害な排出ガスを乗員が直接吸ってしまうことにもなる。

 不正軽油が使われる背景には、物流や移動でディーゼル車を利用する際の、燃料代に対する交通費を適正に支給されない、あるいは荷主に請求できないなどといった社会的課題も考えられる。世の中全般に、安いほどよいといった風潮が浸透しており、そうした意識が適正価格での経済の在り方を失わせているといえなくもない。

 法外に高い価格設定は打破されるべきであっても、無暗な安値の追求にも弊害は生まれる。適正価格での売買で良品を使うという感覚を、消費者も暮らしのなかで持つことが不正撲滅の第一歩ではないだろうか。