日本市場に再参入を果たした「ヒョンデ」の車種のうち、目玉となるのが電気自動車の「アイオニック5」です。もともと世界的な評価の高いモデルですが、日本導入後には国内の専門家から絶賛の声も聞かれます。

一方で、実際にアイオニック5の購入を検討する人にとって、思わぬ懸念事項もあるようです。SNSなどで、「アイオニック5が車両保険に加入できない」という報告が寄せられているのです。

ベースグレードで479万円~と高額な車ですので、購入に際して車両保険に入っておきたいユーザーは多いでしょう。実際のところ、噂の実相はどうなっているのでしょうか。

アイオニック5、車両保険加入の可否は?

アイオニック5の車両保険加入について、ダイレクト系の損保会社7社に確認したところ、「現時点では対応していない」という回答が1社、「現状では型式が登録されておらず、加入に際しては購入後に個別の問い合わせが必要」が4社、「受付可能だが申し込み時には個別の問い合わせが必要」が2社という結果でした。

一般的な車種ではなかなか考えにくい対応ですが、なぜこのようなことになっているのでしょうか。損保会社に10年近く勤務するスタッフに聞くと、次のような答えが返ってきました。

「まず考えられるのは、新型車で料率が確定していないパターンです。車両保険の料金は『車両料率クラス』をもとに決定されるので、これが定まっていない車種に対応することは基本的にできません。

しかし、我々の会社ではアイオニック5の料率クラスはすでに算出されています。料率クラスは『損害保険料率算出機構』によって提供されるものですから、損保会社によってタイミングが大きく変わることは考えにくいでしょう」

つまり基本的に、車種ごとの料率は個々の損保会社が独自に定めるのではなく、専門機関の算出した料率に準じているということです。そのため「一方の会社では料率が出ているのに、もう一方は出ていない」という状況が頻出するとは考えにくいのです。

■ヒョンデに限らずEVは車両保険に入りにくい?

上述のように、アイオニック5が一部の車両保険に加入できない理由として、「新型で料率が確定していないから」というのは適切ではないと考えられます。これとは別の理由について、同スタッフは以下のように話します。

「今回の場合、リスク判断の結果、契約を引き受けていない会社が出ている面もあるのかもしれません。そもそも車両の母数が少ない点や、電気自動車である点などから、損保会社側にとって『リスクが高い』と判断されたとしても不思議ではありません」

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EV車種の車両保険加入に対しては、アイオニック5に限らず慎重な構えを見せる損保会社もあるようです。実際に、加入の是非について問い合わせた会社のなかには、「比較的新しい型の電気自動車の場合、基本的にどの車種であっても個別の対応としている」といった回答をする会社もありました。

この場合、実際に車を購入してから、車検証や売買契約書などを保険会社に送付し、個々の契約者の状況に応じて具体的な補償内容や保険料についての検討が行われる、という流れだといいます。

EVは発売から日が浅い車種が多く、修理例も少ないことから、「どの程度の事故でどのくらい修理費用がかかるか」といった知見が蓄積されていないと考えられます。

損保会社によっては、こうした点をリスク要因と考え、EVの車両保険加入に慎重となるケースもあるのでしょう。

■車両保険加入を断られる車は他にも……

その他、車両保険に加入できない場合がある車としては、スーパーカーや旧車など、「車両価格が非常に高額な車」「時価額の算定が困難な車」が挙げられます。

たとえばソニー損保のホームページでは、車両保険に加入できないケースとして、「初度登録(検査)年月から18年以上が経過」「発売されたばかり」「車両保険金額が1,000万円超」「車両料率クラスが17」といった条件を挙げています。

1987年に誕生したスポーツカー・フェラーリ F40。
バブル経済真っ只中の日本では3億円ほどで取引されるケースも。
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もちろん、こうした条件はそれぞれの損保会社の規定によって異なります。任意保険は公的なサービスではなく、あくまで一般企業の扱う保険商品であるため、個々の損保会社が「高リスク」と判断する契約は結ぶことが難しくなります。

高額な車種、流通量が少ない車種などを購入する際にはとくに、前もって損保会社に確認しておくとよいでしょう。