在宅時間が増えたために、マンション内で発生している新たなトラブルとは(写真:haku/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大で移動が制限され、在宅時間も増加した。リモートワークの導入など巣ごもり生活を経験したことが、暮らし方や住まい=マンションを見つめ直す契機となった方も多いのではないだろうか。快適なマンションライフを送るためには、専有部分、共用部分のそれぞれの適切な維持管理が欠かせない。

一方、在宅時間が増えたためにマンション内に新たなトラブルも発生している。今回は最近問題となっている「エコキュートの在庫不足」「値上げラッシュが管理組合の収支に与える影響」「置き配トラブル」の3つの困りごと例を中心に、マンションでの暮らしを豊かにするためのポイントと注意点をご紹介したい。

エコキュートの在庫不足・品薄が続いている

ガスの給湯器や電気温水器とは異なり、空気中の熱を取り込み利用するしくみを用いるのが自然冷媒ヒートポンプ給湯器「エコキュート」だ。外気からくみあげた熱とヒートポンプが使った電気を使う点で効率的、さらに二酸化炭素の排出を軽減できるため、「エコロジー」かつ「エコノミー」な家庭用給湯器として2001年に製品化。その後オール電化の普及と共に、設置台数を増やしてきた。

一般的にエコキュートの寿命(耐用年数)はヒートポンプユニット、貯湯タンク共に10〜15年となっている。設置場所や使用頻度などで差はあるものの、交換時期に差しかかかるエコキュートが多いはずだ。

エコキュートの修理に際しては、おおよそ1〜5年程度、メーカーや販売店の保証期間が設けられていることがほとんどだ。しかし基本的には交換部品の在庫があることが前提のため、保守部品の在庫がない場合は急ぎの修理は難しくなる。

製造から10年を経過しているエコキュートは部品がなく、修理ができない可能性も高くなってしまう。現在は快適に利用できている場合でも、メーカーや販売店に部品の有無を事前に確認しておきたい。

またエコキュートは使用頻度が高くなる冬のシーズンに入った途端、前触れなく故障するケースも少なくない。給湯器が欠かせない時期の故障は、日常生活に不便を強いられることになる。

ところが今、世界的に給湯器の部材不足に見舞われ、入手が困難な状況が続いているのだ。コロナ禍による海外の製造工場のロックダウンなどにより発注から3、4カ月程度待たされる状況下にある。メーカーによって入手時期に多少の差はあるものの、補修用の部品についても同様の状況だ。

事態を重く見た経済産業省は昨年12月、国土交通省と連名で給湯器の安定供給への対応を関連業界に文書で要請した(『家庭用給湯器の安定供給に向けた要請を行いました』)。

これは異例の事態と言え、今後しばらくは、供給の不安定な状態が継続していくだろう。冬場はもちろん、季節を問わず給湯器の入手が難しくなると予想される。自宅のエコキュートが使用から10年以上経過している、機器から異音が聞こえてくるというケースでは、早めに交換の手配をするなどの対策が必要だ。

転倒対策も重要

エコキュートに関してはもう1つの懸念材料がある。先ほども少し触れたが、エコキュートは本体の他にお湯を貯めておくタンクを設置しなければならない。貯湯タンクは高さもあるため、地震の時などに倒れてくる恐れがある。

そのためタンクの転倒防止策として、コンクリートの土台にアンカーボルトを打ち込み、貯湯タンクとつなげてしっかりと固定しなければならない。実際、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の際、機器の設置工事の不備によるものと見られる転倒事例も発生している。

貯湯タンクの固定は必須であるが、メーカーや製品によってタンクの形状が異なる。そのため、新たな機器に交換する場合、再度確実に固定する必要がある。固定には一般的にアンカーボルトが使用されるが、このピッチ(アンカーボルト間の間隔)が変わってくる可能性が高い。場合によっては、アンカーボルトの打ち直しも視野に入れなくてはならない。

しかし、そう簡単に打ち直すことはできない。マンションの管理規約、もしくはリフォーム細則などによって床や壁などの躯体(くたい)にアンカーボルトを打ち込むのを禁じているマンションも多い。

自宅の管理組合がエコキュートの交換時のアンカーボルトの施工が禁じられていないかは必ず確認しておきたい。仮に工事の前例がない場合、マンション規約の変更など新たな手続きが必要となるためだ。

無事にエコキュートの交換が決定したら、搬入経路の確保が要チェック事項となる。エントランスを通過可能か、エレベーターでの運搬ができるか、専有部分の玄関からバルコニーまでの経路に難がないかを再度確認しなければならない。

さらに新築時には、一旦クレーンで吊り上げ、バルコニー側から搬入していた可能性もある。交換時にはまったく違う搬入経路の確保が必要になるかもしれない点も頭に入れておこう。

値上げラッシュが管理組合の収支にも影響

マンションでは照明やエレベーター、給水ポンプ、機械式駐車場など共用部分で多くの電気を使用することになる。マンションでの快適な生活を実現するために、電気は不可欠な存在だ。ところが電気の利用料金は年々、上昇の一途をたどっている。毎月値上げしているような状況が続き、過去最高値を記録するほど高騰しているのが現状である。

背景には緊張が続くウクライナ情勢により原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入価格の高騰、燃料費が上昇していることが影響を及ぼしている。さらにコロナ禍からの回復による経済活動の活発化、世界的な脱炭素化の流れなど複数の要因も関係し、電気料金上昇へとつながっているのだ。

※東京電力の標準的な家庭の1カ月当たりの料金を例に挙げよう。2022年3月は8244円で、さらに4月分は115円上昇して8359円となっている。さらに5月は8505円、4月より146円アップした。値上がり幅はそれぞれ1.39%、1.7%となる。月単位ではそれほど多くない電気料金も、年単位で考えると大きな負担となる。特に月間数十万の電気料金を負担するマンション管理組合会計への影響は避けられない。

マンション管理組合としては、電気料金や値上がりについて加味したうえで予算を見直す必要がある。総会用の議案書の予算項目に電気料金や値上がり分について加筆、議案書を作成することを推奨したい。

■コロナ禍で増えた「置き配」がさまざまなトラブルの原因に

快適なマンション生活を妨げる3つめのトラブルは、「置き配」が関係している。コロナ禍の巣ごもり需要により、ネットショッピングの利用者が増えた。それに伴い、非対面で荷物を受け取れる「置き配」のニーズも高まる一方である。しかし急速に浸透した「置き配」は、次のような複数のトラブルの原因にもなっている。

●荷物の盗難や不法侵入
玄関前に置かれた荷物が盗まれてしまう。盗難目的でマンション住人ではない部外者が入り込んでくる可能性もある。

●つねに荷物があふれかえっていて大混乱となる
宅配ボックス・ロッカーなどの共用設備があらかじめ用意されているマンションもある。これまでもお中元やお歳暮などの時期は、ボックスのキャパシティを超えた荷物が集まり、つねにあふれる事態に。置き配が増えると、繁忙期以外も混乱が続いてしまうと考えられる。

●荷さばきスペースが用意されていない
宅配便の荷さばきをする場所がないのも大きな課題の1つ。また専用の駐車場もないため、宅配便のドライバーが乗ってきたトラックの置き場、駐車スペースの確保にも四苦八苦するケースも多く見られる。

●マンション共用部に荷物を置くことへの是非
そもそも、マンションの共用部分である廊下などに物品を置くのは、原則認められていない。ルール違反として反発する住人もいるようだ。そこで経産省、国交省では『置き配の現状と実施に向けたポイント』を作成した。 

同資料によると、“専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認めないものの、宅配ボックスがない場合など、例外的に共用部分への置き配を認める場合には長期間の放置や大量・乱雑な放置等により災害時の避難に支障とならないよう留意する必要がある”とまとめている。居住者の利便性と時代の流れに配慮した格好だ。

●置かれた荷物につまずいて怪我をする、破損させてしまう
子どもなどが置き配された品物を壊してしまう、また荷物につまずいて転んでしまう。

安全、安心に置き配を利用するためのルール作り

残念ながら、置き配のトラブルを解消する決定打があるとは言いがたい。しかし、安全かつ安心して置き配を利用するためには、管理組合が率先してルール作りに取り組む必要があるだろう。新たに分譲されるマンションでは、荷さばきスペースを広めに取ることも視野に入れておきたい。

宅配ボックスの空きがない場合は置き配専用のバッグを利用するのも一案だ。また長期間留守をする際には置き配を利用しないようにしたいものだ。さらに購入先のトラブル対応についても再度確認しておけばさらに安心できる。

時代や社会情勢によってマンションを取り巻く状況も大きく変わる。時勢やニーズに合わせて管理規約を見直し、場合によっては管理規約・使用細則の見直しを検討したい。個々のマンションの実情に合わせたきめ細かなルールがあってこそ、充実した暮らしが成り立つと言えるだろう。

(長嶋 修 : 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長))