[画像] イマドキの若者が「住まい」に求める譲れない条件


Z世代を対象とした「住まい選び」に関する調査結果をご紹介します(写真:siro46/PIXTA)

「Z世代(ゼット世代)」という言葉を聞く機会が増えてきた。一般的に「1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた世代」を指し、25歳くらい以下の若者が該当する。その最大の特徴が、生まれたときからデジタルデバイスやインターネット、SNSといった環境が身近にあった「デジタル・ネイティブ世代」だということだ。

「Z世代」と呼ばれる理由は?

なぜ、Z世代と呼ばれるのだろうか? これは、その前の世代から、X世代(40〜50代)、Y世代(26歳くらいから40歳)と呼ばれる世代があり、それに続く世代なのでZ世代と呼ばれるようになったから。その最初のX世代は、ダグラス・クープランド著「ジェネレーションX―加速された文化のための物語たち」という小説が由来だという。

Y世代もデジタルに慣れ親しんだ世代だが、「デジタル・イミグラント(移民)」、つまりデジタルの世界へと移り住んできた世代ともいわれる。

NTTドコモが「iモード」と呼ばれる、独自の携帯電話向けネットサービスを始めたのが1999年。アップルの「初代iPhone」が登場したのが2007年(日本でのiPhone発売は2008年)。Z世代はまさに、携帯電話の成長とともに誕生してきた世代だと言えるだろう。

Z世代の特徴は、スマホを日常的に使いこなし、SNSによる情報収集にも長けていること。そのため、マスメディアよりWEBメディアに慣れ親しみ、インターネットの利用時間が長いことや、WEBメディアによる多様な情報に触れていることから、SDGsのような社会問題への関心が高いことなどが指摘されている。

また、不況の時期に育っているので、シンプルな暮らしを好み、自分の価値観を重視する傾向があるとも言われている。

そんなZ世代を対象とした「住まい選び」に関する調査結果をいくつか紹介しよう。若い世代が調査対象なので、住まい選びというのは、主に賃貸住宅へのひとり暮らしが想定されているようだ。

FJネクストホールディングスが2022年3月に公表した「『Z世代 ひとり暮らしの⽣活事情』アンケート」の結果を見よう。

「部屋探しの際、どの物件を選ぶか」を聞いた結果は次のとおり、圧倒的にWi-Fi完備を求めていることがわかる。

□ Wi-Fi 完備 77.3%
□ IoT(スマホ連動)家電備え付け 10.0%
□ 家具備え付け 8.0%
□ テレビ備え付け 4.8%

ほかにも、「映画・音楽のサブスク」利用が69.5%であったり、買い物をしたときの支払い方法は、「現⾦」(14.8%)よりも「クレジットカード」(55.3%)か「モバイル決済」(24.0%)が主流であったりなどで、Z世代では“サブスク化・キャッシュレス化”が進んでいることもわかる。

インテリアにもこだわり?

次に、SHIBUYA109エンタテイメントが2022年3月に公表した「Z世代の住まいに関する意識調査」の結果を見ていこう。

「あなたの理想の暮らし」を聞いたところ、先程の調査結果と同様に、「Wi-Fi等インターネット環境が整っていること」(56.5%)が全体で1位となった。ただし、男女それぞれで順位に違いが見られた。

男性は、1位が「Wi-Fi等インターネット環境が整っていること」(57.5%)、2位が「趣味と勉強の空間を分けられる」(44.0%)で、3位「セキュリティがしっかりしている(39.5%)」、4位「自分の好きなインテリアに出来る」(33.0%)だった。

一方、女性は、1位が「セキュリティがしっかりしている」で58.0%と高い数値を示し、2位が「Wi-Fi等インターネット環境が整っていること」(55.5%)、3位に「自分の好きなインテリアに出来る」(53.5%)、4位の「ファッションを楽しめる」(47.0%)も半数がこだわる結果となった。

Z世代の男女ともに、「セキュリティ」を重視するのは共通しているが、女性のほうがこだわり意識が強く、インテリアやファッションといった理想の空間デザインを希望していることがわかった。

さらに「あなたはインテリアにこだわっているか」を聞くと、「こだわりたいが、こだわれていない」が最多(男性47.0%、女性57.0%)だった。

同社は並行してグループインタビューも行っているが、「Instagramなどでは、部屋全体のインテリアを好みのテイストに変えるのは現状の金銭面的にハードルが高いことから、写真に映る部屋の一部分だけオシャレにする工夫を凝らしている事例も見られ」、「写真に映る部屋の一部分を “SNS映え”な雰囲気に演出している」という。

SHIBUYA109エンタテイメントでは誰と暮らすかについても、理想の暮らしを聞いている。

「一人暮らし」(男性40.5%、女性53.0%)が基本であるものの、「恋人・パートナーとの暮らし」、つまり同棲志向が強いこともわかった。とくに男性は38.0%と女性の20.5%より2倍近くが同棲を理想としているが、女性は「実家暮らし」も19.5%と同棲と同程度の結果となった。


(出所)SHIBUYA109エンタテイメント「Z世代の住まいに関する意識調査」

理想の暮らしは?

さて、Z世代なら住まい探しの際にネットの情報に重きを置くのだろうと思っていたが、必ずしもそうではないらしい。同社が「一人暮らしの部屋を決める際、どのように情報収集をしたか」を聞いたところ、不動産会社に行くという回答が上位に入った。

利用する媒体は、男性が「不動産情報サイト・アプリ」(39.0%)に次いで「不動産屋に行く」(34.0%)が、女性が「不動産屋に行く」(48.0%)に次いで「不動産情報サイト・アプリ」(39.0%)が上位になった。

■一人暮らしの部屋を決める際、どのように情報収集したか


(出所)SHIBUYA109エンタテイメント「Z世代の住まいに関する意識調査」

デジタル・ネイティブであるZ世代も、住まい探しではオンラインの情報とオフラインの情報を組み合わせていることがわかった。同社によると「失敗したくないという意識から実際の物件で漏れなく確認したいという意向が強いようだ」と見ており、「女性は男性よりも情報収集を多角的に行っている」という。

Z世代がデジタルとリアルを上手に使い分けていることがわかったが、実は40〜50代のX世代もデジタルを上手に活用しているという調査結果がある。

スタイルポートが2022年4月に公表した「『X世代マンション購入者の行動変容』に関する調査」だ。「特定のマンションを具体的に購入検討した際に、どのような媒体を参考にしたか」を聞くと、東京在住の100名のX世代が参考にしたのは「不動産ポータルサイト(SUUMO)など」(52.0%)、「YouTube」(51.0%)、「Twitter」(47.0%)がTOP3だった。

同社が同年2月に公表したミレニアル世代(=Y世代)への調査で、同じ質問をした際の回答結果と比較すると、東京在住の101名のY世代では「Twitter」(70.3%)、「YouTube」(56.4%)、「TikTok」(50.5%)とSNSが上位を占め、ポータルサイトは31.7%の7位だった。

利用する媒体に違いはあれども、X世代もデジタル情報を重視していることがわかる。その理由として、豊富な画像と口コミへの期待が高いこともうかがえる。現役世代までは、今や住まい選びについても、デジタル情報の活用なくしてはできないということだろう。

Z世代が住宅購入をする年齢になると…

さて、いろいろな調査結果を見ていくと、Z世代は住まい選びの際にWi-Fi環境やカメラ越しに住まいがどう映るかを気にしていることなどがわかったが、住まい選びで重視するポイントは従来と大きく変わってはいないようだ。

SHIBUYA109エンタテイメントの調査結果で、「部屋を決める際に重視した点」の回答を見ると「家賃」(70.0%)、「間取り」(44.0%)、「部屋の広さ」(36.5%)、「水回り設備」(35.5%)、「交通の利便性」(35.5%)が上位に上がるなど、過去の多くの調査結果と類似した結果となっている。

そうはいっても、これからZ世代がマイホームを買う年齢になると、「ブランド志向が弱い」ので、良質な住宅なら大手デベロッパーなどにこだわらなかったり、「古い文化や持続可能性に関心が高い」ので、中古住宅の評価が高まったりなどで、住まい探しの間口が広がるような気がする。

また、「シンプルな暮らし」を好み、「サブスク」を利用し、フリマで買ったり売ったりして家具や衣料品を「使い回していく」ので、収納スペースなど間取りの考え方は変わっていくかもしれない。

そもそも、所有価値の重きが低く、利用価値を重視するので、マイホームを買うこと事態が減少していくのだろうか。働き方の変化が予想されることもあり、不動産業界にとっては、どんな住まいを提供していくのかを考えるのが大変な時代になりそうだ。

(山本 久美子 : 住宅ジャーナリスト)