【特別分析#2】元ブラジル代表DFジョルジーニョは中井のクオリティーの高さを評価

 スペイン1部の名門レアル・マドリードの下部組織フベニールA(U-19相当)に所属する18歳MF中井卓大は、将来を嘱望されるタレントだ。

 そのポテンシャルは海外の目から見て、どのレベルにあるのか。かつて鹿島アントラーズに所属し、欧州サッカーも知る元ブラジル代表DFジョルジーニョ氏に訊いた。

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“ピピ”こと中井はレアルの下部組織に9歳から加入。インファンティールA(U-14相当)、カデーテB(U-15相当)、カデーテA(U-16相当)、フベニールC(U-17相当)と順調に階段を上り、昨季はフベニールB(U-18相当)、そして今季はフベニールA(U-19相当)でプレーしており、今年2月には2025年まで契約延長を結んだ。

 来季はスペイン3部リーグに所属するカスティージャ(Bチーム)に主戦場を移し、将来的なトップチーム昇格を目指す。鹿島の第1次黄金期を支え、ドイツ1部レバークーゼンや名門バイエルン・ミュンヘンでプレーした経験も持つ元ブラジル代表DFジョルジーニョ氏の目にはどのように映ったのか。

「中井はたぶん、攻撃的MFになる選手ではない。ゴールを背にしてボールを受けるようなプレースタイルじゃなく、もっとうしろから出てくる選手だよね。背番号8、セカンドボランチ、サードボランチになる選手だ。チームのプレースタイルによって、4-2-3-1でプレーするならセカンドボランチをやる。4-3-3であれば、中盤でサイドのどちらかにポジショニングするボランチになり、やはりうしろから攻撃に出ていく。

 中井は能力が高い。ドリブルやフェイントといった個人技のクオリティーが非常に高いし、視野が広い。インテリジェンスもある。1対1の場面にも長けている。守備面は、映像だけでは把握しきれていないけど、戦術的な規律もあるようだ。うしろから出てくるプレースタイルを考えれば、おそらくディフェンスの能力も高いんだろう。背も高いし、フィジカル的にも強いんだろうね」

成長を続けることを条件に、「大きな可能性がある」と期待

 スペインで研鑽を積んできた中井は、日本で成長した若手選手たちとの違いが見て取れるという。

「スペインと日本では、サッカー自体が非常に違うものだからね。もちろん、レアル・マドリードはFCバルセロナとも違っているし、試合のスタイルはチームや監督にもよるけどね。ともかく、中井はスペインサッカーの特徴を身に付けていっている。ドリブルやフェイントを多用するし、コンパクトなサッカーで、味方にパスコースやプレーの選択肢を作ることができる。今、18歳ならば、これからもっと成長していくだろう。試合に出場し続けていけば、学ぶことがすごく多い。そうなれば、将来日本のフル代表にだって、なれるかもしれないよね」

 中井が世界的名門のレアルでトップチームに上がるポテンシャルがあるのかも、ジョルジーニョ氏に聞いてみた。

「トップチームに上がるのは、僕らみんなが知っているように、簡単ではないけどね。例えば、(ブラジル代表MF)カゼミーロだってレアル・マドリードのBチームであるカスティージャで始めたんだ。そこからトップチームに上がった。そういう強力な競争相手がたくさんいる。ただ、中井もすごく良い選手だからね。彼が成長を持続できれば。そして、選手としての規律も守れるならば。さらに、自分を信じてやっていくならば、実際、大きな可能性があると思うよ。彼がトップチームに到達し、『レアル・マドリードに日本人がいる』と言える日が来たら、そんなに素晴らしいことはないよね」

 ジョルジーニョ氏も中井の明るい未来に期待を寄せていた。

[プロフィール]
ジョルジーニョ/1964年8月17日生まれ、ブラジル出身。アメリカRJ―フラメンゴ―レバークーゼン(ドイツ)―バイエルン(ドイツ)―鹿島―サンパウロ―ヴァスコ・ダ・ガマ―フルミネンセ。右サイドバック、ボランチとこなし、攻守でチームを支えたユーティリティーで、ブラジル代表としてワールドカップ優勝も経験。鹿島在籍4年間でJ1リーグ通算103試合17得点。リーグ優勝を果たした1996年にはMVPとベストイレブンに輝いた。2022年5月18日に母国ブラジル1部アトレチコ・ゴイアニエンセの監督に就任。(藤原清美 / Kiyomi Fujiwara)