人間関係づくりに重要な5つの問いをご紹介します(写真:takeuchi masato/PIXTA)
人は1人では生きられない。人生100年時代、あなたは家族や友人、近隣の人たちとの関係をどう築いていけばよいのだろうか。それは、過去の関係とは、どのように違うのか。14万部突破のベストセラー『ライフ・シフト2』から、あなたの人間関係づくりにとって重要な5つの問いについて、抜粋・編集してお届けする。
人生100年時代の人間関係の考え方
歴史を通じて、人はつねに支え合いながら生きてきた。人類が成功を収めるうえでカギを握ってきた要素は、集団で行動し、協働する能力だった。
人生の期間が長くなり、移行の機会が増えつつあるなかで、私たちはほかの人たちとの関係をどのように築き、維持すべきかを考え直す必要がある。
マルチステージの人生は、柔軟性が高く、成長と進化を遂げるチャンスも多い。しかし、人間関係を深めるために投資しなければ、移行の回数が増える結果として人生が細切れになる危険が出てくる。自己の意識とアイデンティティーを見失い、漂流状態に陥りかねないのだ。
私たちの人間関係の核を成すのは家族だ。パートナー、両親、親族との関係は、人生のいくつものステージにまたがって続く可能性がある。
ほとんどの人は、親を大切にし、子どもたちに成功してほしいと願っている。わが子がせめて自分と同じくらい、できれば自分よりいい暮らしをすることを望む。
一方、平均寿命が延び、子どもの数が減っている結果、家族の構造は、ピラミッド型からビーンポール(豆などのつる植物の支柱)型に変わりつつある。きょうだいの数が少なくなり、家族内に多くの世代が共存するようになっているのだ。
こうした変化に伴い、新しい問いも持ち上がっている。たとえば、曾祖父や曾祖母の世話は誰がすべきか、といったことだ。
あらゆる人間関係に関わる世代間の関係
家族という核の外側には、親しい友人たちがいる。そのような友情は、しばしば何十年も続く。ハーバード大学医学大学院のグラント研究が明らかにしたように、親しい友人は人の幸福度と人生への満足度を大きく左右することがある。
その外側には、それほど長期的ではない人的ネットワークが存在する。この種の人間関係は、仕事と娯楽の両面でメンターやロールモデルの供給源となり、学習のプロセスで重要な役割を果たす場合がある。
頻繁に移行を経験するマルチステージの人生では、前のステージではぐくんだ人間関係を維持し、それに投資し続けるために、より多くの努力と積極的関与と目的意識が必要とされる。
また、自宅で仕事をしている人は、仕事上のコミュニティーを築こうと思えば、わざわざ時間を割かなくてはならない。その点、従来型の職場で働く友人たちは、とくに意識的に努力しなくてもそのようなコミュニティーをはぐくめる。
その外側に位置するのは、地域コミュニティーと隣人たちだ。地域コミュニティーの一員となり、なじみの面々と顔を合わせれば、喜びを感じられるだろう。そして、そのさらに外側には、いくつもの地域コミュニティーの相互作用により形づくられる社会が存在する。
こうしたすべての人間関係に関わってくるのが世代間の関係だ。長寿化により、同時にいくつもの世代が共存するようになり、人生のあり方に関する世代間の考え方の違いがいっそう際立ってくる。
若い世代は、新しい生き方を見いださなくてはならない。しかし、若者たちが新しい生き方を実践しようとすれば、世代間の摩擦が強まる。
それが政治的対立に発展することを避けるためには、単純な偏見と固定観念に基づいた世代観をもつのではなく、若者と高齢者の間に新しい社会的・経済的パートナーシップをはぐくむ必要がある。
人間関係に関する計画を点検する
あなたの人間関係づくりにとって重要となる問いを、以下にまとめてみよう。
*問い1 十分な時間を確保できているか?
あなたの未来の計画を考えるときは、パートナーや子ども、そのほかの家族や友人などとの関係を通じて得られる喜びと満足感も大切にしたいだろう。
こうした「純粋」な人間関係を構築するには、長い時間がかかる。一緒に長い時間を過ごし、じっくりと相互の信頼と愛情、共感と理解をはぐくまなくてはならない。あなたは、いま思い描いている人生の進路とステージのなかで、こうしたことに費やす時間を確保できているだろうか。
エネルギッシュに活動するステージばかりが続き、活動量を落とす時期がほとんど予定されていないとすれば、計画を再検討したほうがいい。ゆとりの時間をもっと増やすべきかもしれない。
*問い2 どのような未来を望むかを明確に話し合ったか?
人生が長くなり、マルチステージ化すれば、選択肢が広がるし、さまざまな活動に携わる順序も何通りにも増える。
しかし、そうした新しい機会を生かすためには、身近な人たちと慎重に調整することが必要だ。あなたの大切な人たちは、あなたとは違う計画を立てていたり、新しい選択肢に気づいていなかったりする可能性もある。
あなたは、自分がどのような未来を望んでいて、その未来がまわりの人たちにどのような意味をもつかについて、多くの時間を割いて、明確に、そして自由闊達に話し合っただろうか。
*問い3 適応力をもてるか?
カップルのあり方は、「キャリア+ケアラー」型から「キャリア+キャリア」型へ変わりつつある。それに伴い、2人の関係の組み立てはいっそう複雑になり、2人がそれぞれ適応力をもつ必要が高まる。
あなたが思い描いている人生のステージに到達するためには、自分自身とパートナー、そしてまわりの人たちに、どのような適応が必要なのか。
*問い4 コミュニティーとの関わりに時間を費やす用意はできているか?
いま計画している人生の進路について、コミュニティーとの関わりという観点から考えてみよう。あなたが加わろうと思っているコミュニティーは、人生に喜びをもたらし、学習を促すようなものだろうか。
人生のさまざまなステージを通じて、ほかの人たちを支援したり、持続可能性の高い地域社会を築いたりするなど、コミュニティーに投資するための時間を十分に取っているか。周囲の人たちと関わる時間を増やすための習慣を生活に組み込もう。
*問い5 さまざまな年齢層の人たちと一緒に過ごす用意はできているか?
自分より高齢の人や若い人と接する時間が多ければ、あなたの人生プランはいっそう強力で実りあるものになる可能性がある。いま計画している将来のステージや活動を具体的に思い浮かべた場合、同世代の人たちだけで集まる可能性が高くはないか。
もしそうであれば、ほかの年齢層の人たちと接する機会を増やすためにどうすべきかを考えよう。年齢で人を判断すべきではない。大切なのは、それぞれの人がどのような人間なのかだ。
(アンドリュー・スコット : ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授)
(リンダ・グラットン : ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授)
外部リンク東洋経済オンライン