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アップルはApp Storeアプリ内でのサードパーティ(自社システム以外)決済システムや、アプリ内での外部リンクについて、世界各国の政府と色々と揉め事を抱えている状態です。今回、そのなかの2つにつき、アップルが譲歩するような新方針を発表をしています。

1つは「リーダー」Appの配信に関するアップデートです。「リーダー」とは、アップルの最新定義によれば「雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオのうち、1つ以上のデジタルコンテンツタイプをAppの主要な機能として提供するApp」のこと。具体的には動画や音楽ストリーミングサービス、電子書籍アプリなどが該当すると思われます。

公式リリースによれば、「App Store Reviewガイドラインの3.1.3(a)の更新にともない、「リーダー」Appのデベロッパは、本日より外部リンクアカウントエンタイトルメントへのアクセスをリクエストできるようになりました」とのこと。要するに開発者の運営するWebサイトへのリンクが可能となり、ユーザーはアプリ外でアカウントの作成や管理(そして30%手数料が取られない支払い)ができるようになります。

この方針は、昨年秋に予告されており、ようやく実現したしだいです。

ただし、このエンタイトルメント(資格)を得るためには、開発者のアプリはiOSまたはiPadOSでアプリ内課金を提供できないようにする点など、いくつかの制限があります。

また、もう1つのニュースリリースは「デートアプリのStoreKit外部エンタイトルメントに関するアップデート」です。こちらはオランダ限定、かつ出会い系アプリ開発者のみを対象としたものです。

この問題の始まりは、オランダの独禁当局ACMがアップルに、出会い系アプリに対して自社のアプリ内決済システム以外の支払い方法を認めなければならず、さもなくば罰金を科すとの声明を出したことです。

アップルはこの命令に従うとの声明を出しながらも、アプリ開発者に対して「オランダ国内ユーザー向けとその他の地域向けに、2つの別々のアプリを提供すること」を必須としました。

そうして開発者に過大な負担を求めたほか、代替決済システムを利用する全ての購入に対して27%もの手数料を徴収するとも宣言しており、開発者からは「代替決済を使うメリットがない」との批判を集めていました。そのためACMからは命令の要件を満たしてないとして罰金が科され続け、ついに10回目にして最大額(約68億円)に達しています。

さて今回の変更のうち、最も大きな点は「個別のバイナリ要件の撤廃」でしょう。上記の「オランダ国内と国外、別々のアプリを用意しろ」という無茶な要求がようやく取り消されたわけです。

この変更により開発者は「既存のデートアプリにいずれかのエンタイトルメントを含めることができますが、その使用はオランダ国内ストアのアプリとiOSまたはiPadOSを搭載したデバイスに限定される」とのこと。より分かりやすく言えば「App Storeに提出するのは単一のアプリで構わないが、代替決済を有効にできるのはオランダ国内だけ、ということでしょう。

米Reutersは、今後もアップルがACMの求める要件を満たさなければ、さらに高額な罰金が科される可能性があると報じていました。これまでの動きを見ていると、アップルが罰金を恐れるとも思えませんが、韓国や欧米でアプリ内での代替決済を求める圧力が高まるなかで、反感を買いすぎるのはまずいと判断したのかもしれません。

Source:Apple(1),(2)

via:9to5Mac