コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは覚醒作用があることで知られており、エナジードリンクの成分としても用いられています。ところが、イギリスに住むパーソナルトレーナーの男性がカフェイン粉末入りのドリンクを作る際に計量ミスを犯し、「コーヒー200杯分のカフェイン」を一気に摂取したことで死亡してしまった事例が報告されました。

Personal trainer Thomas Mansfield died after overdosing on caffeine powder drink, inquest hears | Daily Mail Online

https://www.dailymail.co.uk/news/article-10565493/Personal-trainer-Thomas-Mansfield-died-overdosing-caffeine-powder-drink-inquest-hears.html

Man dies after consuming drink equivalent to 200 cups of coffee | Live Science

https://www.livescience.com/caffeine-overdose-200-cups-of-coffee

カフェインには覚醒作用や倦怠感の軽減、運動のパフォーマンス向上といった効果があると知られており、筋トレ直前に飲むサプリメントにも利用されています。そのため、筋トレに取り組む人の中には自分でカフェイン粉末を入手し、ドリンクと混ぜて摂取する人もいます。

イギリスの北ウェールズに住んでいたトーマス・マンスフィールドさんという男性は、警備員として働く傍らでパーソナルトレーナーとしても活動していました。2021年1月5日、マンスフィールドさんはサプリメント会社から購入したばかりのカフェイン粉末を使い、自分でカフェイン入りドリンクを作りましたが、このドリンクを飲んだ後でマンスフィールドさんの口の中は泡立ち、ソファの上で胸を押さえて苦しみ始めたとのこと。

妻のスザンヌ・マンスフィールドさんは苦しむ夫の姿を見て、まずは近所の人に助けを求めようと家を飛び出し、その後で救急車を呼びました。数分以内に到着した救急隊員はマンスフィールドさんの心臓が「ひどく異常な」リズムで脈打っていたと証言しており、除細動器を使うなどして手を尽くしましたが、病院に緊急搬送された時には心停止状態だったそうで、5日の16時頃に死亡が確認されました。



死後の検査により、マンスフィールドさんの血液から1リットル当たり392mgという異常な濃度のカフェインが検出され、死因はカフェイン中毒だったことが判明しました。一般的に、コーヒー1杯を飲んだ後の血中カフェイン濃度は1リットル当たり2〜4mgだそうで、1リットル当たり392mgという血中カフェイン濃度は「コーヒー200杯分」に相当する計算です。カフェインの致死量は血中濃度が1リットル当たり78mgといわれており、マンスフィールドさんは致死量のほぼ5倍ものカフェインを摂取していたことになります。

マンスフィールドさんが異常な量のカフェインを摂取してしまった原因は計量ミスだと考えられています。カフェイン粉末の推奨摂取量は1回当たり60〜300mgとされていましたが、マンスフィールドさんが持っていたデジタルスケールの開始重量は2gだったとのこと。捜査官によると、マンスフィールドさんは最大で5gものカフェイン粉末をドリンクに入れた可能性があるそうです。カフェイン粉末を販売したブランドは、当時の規制に違反していたわけではありませんでしたが、この事件の後で商品に計量スプーンやA4の説明書を添付するなどの改善を行ったとのこと。

また、マンスフィールドさんとスザンヌさんの間には2人の子どもがいたことから、スザンヌさんは家族を養うために募金活動を行ったと報じられています。スザンヌさんは「彼は私の人生の全てでした。これを乗り越えることはできないでしょう。トム、あなたは私の人生でした」と、ソーシャルメディアに書き込みました。

近年では、覚醒作用をうたうカフェイン入り錠剤などの普及でカフェイン中毒により搬送される若者が急増していると報じられており、過去には500mlのエナジードリンクを1日4本飲む生活を2年間続けた男性が、重度の心不全と腎不全で入院した事例も報告されています。

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