現役復帰の可能性を問われ「あと1回トライアウトを受けるチャンスが」

 プロ野球を変えると宣言して就任した日本ハムの新庄剛志監督が連日、球界の話題をさらっている。2003年オフにメッツから日本ハムへに移籍した当時チーム統轄本部長を務めていた三澤今朝治氏は、現役時代から指導者としての資質を感じていたという。当時新庄獲得に奔走した元祖新庄劇場の仕掛け人が、選手復帰の可能性もゼロではないと見ている。【石川加奈子】

 就任会見で選手復帰して「代打、俺」をコールする可能性を問われた新庄監督は、冗談とも本気ともつかぬ答えを返した。「実は今年1年、野球の勉強しながら体は作ってきました。あと1回トライアウトを受けるチャンスがあるので、それを今ちょっと考えています。そこで監督の僕が『あの選手いいやん』と、獲ったろうかなという考えはちょっと頭の中にあります。後は球団と話し合います」と言ってニヤリと笑った。

 単なるリップサービスなのか、それとも本音も混じっているのだろうか。三澤氏は「よく分からないけど、本当に自分がやれるという自信があれば、選手登録するかもしれませんよね。自分がチームのために戦力になり、それが勝利のための大きな影響力になるというのであれば。僕は可能性はゼロではないと思います」と秘策として温めている可能性を示唆した。

 会見をテレビ中継で見ていた三澤氏は「あれは一つのイベントという風に見ていました。彼の野球に対しての本当の姿というのは、10のうち1か2しか出していないと思うんですよ」と語る。沖縄・国頭での秋季キャンプ視察で派手なジャージを着替えるなど、一挙手一投足が注目を集めたことも「全部計算づく」と捉えている。

弱いチームが頂点へ、2004年の北海道移転当時と重なる現状

 思い出すのは、北海道移転1年目の2004年2月の沖縄・名護キャンプだという。新庄が入団して、話題を一人占め。東京時代20〜30人だった報道陣が150人も集まり、休日でも300人程度だったファンが平日に数千人という大フィーバーになった。

「当時の日本ハムは地味な選手ばかり。ファンに対してのアピールも下手でしたし、ファンの力が自分たちのプレーにどれだけ影響を与えるのか分からない選手が多い中、彼が来て、注目されました。そこでアピールしようという者が出てきて、良いプレー、良い結果につながっていったんです。そういう潜在能力を彼が引き出したんですよ。今もそれを選手にやらせようとしているんですよね。低迷しているチームに」と語り、2006年優勝へとつながっていく2004年キャンプと現状を重ね合わせた。

 日本ハム選手時代のパフォーマンスについても三澤氏は「時期をみるとチームが低迷している時にやっていたんですよね。ただ闇雲に自分が目立ちたいとか、面白いからじゃなくて。ファンを喜ばせるのもあるんですけど、チームを活気づかせるために全部計算してやっていたんです」と振り返る。

 チームは3年連続5位と低迷し、観客動員数も2018年以降200万人に届いていない。今年は選手の暴力問題など暗い話題も追い討ちをかけただけに、新庄監督への期待は大きい。「再来年、新球場ができる。そこに向かう一番良い時期になってくれたと思います。監督という立場なら自分の考えや思っていることができ、やりたいチームをつくれるはずです」と救世主の登場を歓迎した。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)