森保監督はW杯の舞台で勝たせることができる手腕の持ち主なのか

 日本代表は12日、埼玉スタジアムでカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第4節オーストラリア戦に臨み、後半41分のオウンゴールによる決勝点で2-1と競り勝った。

 貴重な勝ち点3を手にした日本だが、日本在住のオーストラリア人ジャーナリスト、スコット・マッキンタイヤー氏は「Football ZONE web」のインタビューで「日本代表にとっては悪い結果だと思う」と指摘。白星で日本代表の森保一監督の続投方針になったことが、代表の未来にとってはマイナスと独自分析している。

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 日本が勝ちましたが、イーブンな試合だったと思います。オーストラリアにとっては不要なミスから2失点。前半にチャンスもあったし、PKもあったかもしれない。どちらが勝ってもおかしくないような展開だったので、選手もファンも当然落胆している。

 実は、この日本戦はオーストラリア代表にとって、実に2年ぶりの有観客試合だった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ホームで試合を開催できず、アウェーや中立地で無観客試合を戦ってきた。埼スタのサポーターについて、アーノルド監督も選手も心理的に大きかったと振り返っていました。日本代表はスタンドから後押しを受けていましたが、その影響は少なからず存在した。

 ホームの地の利がない状況で、4試合で3勝。オーストラリア代表にとっては悪いスタートではないと思う。一方で、日本のサポーターにとっていい勝利だったが、日本代表にとってはある意味で悪い結末になってしまう。その理由は、今回の勝利で森保監督が続投してしまうからだ。

 果たして彼は日本代表をW杯の舞台で勝たせることができる手腕の持ち主なのか。そこは依然として疑問が残る。

 両軍ともにシステム変更はあったし、選手の入れ替えもありましたが、それはディテールの一つ。最大の違いはインテンシティーにあったと思う。

 この試合には絶対に負けられないということで、キャプテンの吉田ら選手、監督もすさまじいプレッシャーを感じていた。サッカー界の危機に瀕して、チームは反応した。スローで緩慢だった中盤のクオリティーも際立っていた。3試合寝ていたチームがようやく目覚めた印象だ。

解任というプレッシャーがやってこなければ…

 それでは、最終予選の最初の3試合でなぜこのサッカーができなかったのか。オマーン戦、そしてサウジ戦。もっと言えば、森保監督は就任3年間で、なぜこのインテンシティーを崖っぷちになるまで引き出すことができなかったのか。

 解任というプレッシャーがやってこなければ、ここまでの強度を上げることができない。切迫感をピッチ上で表現できない。それは指揮官として問題だと思う。相手が格上だろうが格下だろうが関係なく、どんな相手でも引き出せなければいけない。

 森保監督とJFA(日本サッカー協会)に改めて目標を聞いてみたい。日本がW杯に出場することなのか、それともW杯で優勝したいのか。W杯出場が目標だった時代は1998年のこと。もうW杯に行こう、というメンタルではないはず。出場7大会目となれば、目標は勝利であるべき。森保監督でそれが可能なのだろうか。

 現在のオーストラリア代表と比べて、選手個々のレベルは日本が断然上。両代表から11人を選ぶとすれば、日本代表から9選手が入るぐらいの差がある。そこまでのタレントの差がありながら、ホームの地の利を手にしても、イーブンな試合だったことは忘れてはいけないと思う。(スコット・マッキンタイヤー / Scott McIntyre)