●視聴率が気になる段階は、もう超えた

女優の米倉涼子が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』の10年目突入となる第7シリーズが、あす14日(毎週木曜21:00〜※初回は15分拡大 TELASAでは過去シリーズ、スピンオフ全作を配信中)からスタートする。

米倉にとって昨年4月に個人事務所「Desafio(デサフィオ)」を立ち上げてから初の『ドクターX』。内田有紀、勝村政信、岸部一徳、遠藤憲一、西田敏行らおなじみのファミリーたちが集結し、狂言師・野村萬斎が最大の敵として立ちはだかるという豪華キャストや、100年に1度のパンデミックによって世界中で医療崩壊が起こっている――とコロナ禍を反映させた物語に注目が集まっている。そんな新シリーズの見どころや、大門未知子への思い、共演者たちとの絆について米倉に話を聞いた。

女優の米倉涼子(撮影:宮川朋久)


――個人事務所の「Desafio(デサフィオ)」はスペイン語で「挑戦する」という意味。常にチャレンジを大事にされている米倉さんですが、長寿シリーズとなった『ドクターX』ならではのモチベーションはどんなところにありますか。

「慣れ親しんでいても甘んじず」という思いです。私が出演していないシーンもチェックしていますが、全員が全力を出し切って演じている姿に「私もちゃんとしなきゃな」と背筋が伸びます。視聴率について何か言われるのはあまり好きではないですが、『ドクターX』においてはそんな段階ももう超えている。口にせずとも、皆がいかに心地よくそのシーンを終えられるかを一番に考えていて、「やりこなす」ということがない現場になっています。

世間の評価は視聴率をはじめとした「固定観念にとらわれすぎている」……そう書いておいてください(笑)。でも「ドクターX=面白い」と思ってくださっている方々がいるから、私たちはのびのびやれている。本当に有り難いことです。

――演じていて感じる、大門未知子の好きなところを教えてください。

爽快で自由に見えるところ。天真爛漫でありながら真面目なところ。思ったことをはっきり言うブレないところ。そんな未知子を演じるうえで、私もとにかく「まっすぐいる」ことを大事にしています。

――2年ぶりに未知子を演じて、いかがでしたか。

撮影の初日は1日中ヒールでした。撮影前に首や肩甲骨をジムで調整してもらっていたのですが、帰ってから腰と首が痛くて1日で崩れたなと。ヒール恐るべし! 今はスニーカーも流行ってますし、ここ2年くらいほとんどヒールをはいてないから、一番の敵は蛭間(西田敏行演じる蛭間重勝)よりヒールだなと思っています(笑)。



――共演者の皆さんと再会した感想を教えてください。

本当に皆歳を取りました(笑)。(内田)有紀ちゃんとも「初めて出会ってから20年以上経っているよね」と言っていたのですが、身体や美容についての話題が増えてきていますね。

キャストが集まると相乗効果で皆元気になっていく……そんな『ドクターX』にはホームという感覚もあります。海外ドラマ『フレンズ』のキャスト陣が久しぶりに再会している番組を見たのですが(アメリカ・NBCで1994年〜2004年にシーズン10まで放送された大ヒットドラマ。今年、キャストが再集結した特別番組『フレンズ:ザ・リユニオン』が配信された)、集まった瞬間に皆が当時に帰ったような表情をしていたのが印象的でした。歳を取って、見た目だって変わっているけど、あうんの呼吸は変わらない。『ドクターX』もそんな場所だったらいいなと思っています。私も年齢を重ねてきたけど、まわりはもっと年上で労らないといけない部分もありますが(笑)、今は共に過ごしてきた軌跡をもう1センチ伸ばせることがうれしい。10年を通して、何も言わなくても信頼できる仲間、絆ができました。

●強く印象に残っているのは、号泣した第5シリーズ

――この10年で一番変わった人、変わらない人を教えてください。

変わったのはエンケンさん(遠藤憲一)かな。最初は全然違う役柄だったし、物語の中で異動も多くて。あとは痩せたり太ったりしているところも(笑)。何も変わらないのは有紀ちゃん。淡々としていて本当に変わらない。私は同じ歳ですが、アップダウンが激しいしやりたいこともさまざまなので、未知子並みにぶれない有紀ちゃんが羨ましいくらいです。

――これまでのシリーズで特に印象に残っている撮影はありますか。

未知子が余命3カ月というストーリーを演じたとき(第5シリーズ)に、「本当にこれで終わるんだ」と号泣した思い出があります。私にとって主演を務める連続ドラマがシリーズ化していくのは初めての経験。常に新しいことをやりたいと言っていたけど、続けてきたことに後悔はなかったし、「まだやりたい」と思ってしまうほどでした。

「もう皆と会えなくなってしまう」と考えたとき、「連続ドラマ」という短い3カ月や4カ月の積み重ねでもそれほどの関係を築くことができるんだなと……第3シリーズくらいで終わっていたら気づけなかったことです。皆の「このドラマを良くしたい」「『ドクターX』はこうありたい」という思いが1つの大きなかたまりになって『ドクターX』が出来上がっているんだと改めて実感しました。





――今回の第7シリーズは、コロナ禍を反映させたストーリーになっていますが、率直な感想を教えてください。

今年になってもまだコロナ禍を描かなきゃいけないという世界の情勢を改めて感じさせられました。ただ、危険なことはコロナだけじゃないというひねりが入っているところに『ドクターX』ならではの魅力があると思います。

――コロナ禍でドラマを撮影する苦労はありましたか。

私はコロナ禍で連続ドラマの撮影をするのはほぼ初めて。コロナ禍じゃなかったらもっと自由に動けるのに、色々と気をつけなきゃいけないことがあるのはやはりストレスになります。これまでも映像作品が時代にあわせて、たばこを吸うのはどうだろうとか、血を見せ過ぎちゃいけなくなるとか、変化を求められるたびに寂しさを感じてきましたが、今回は命に関わることだから演出の方も大変ですよね。

――『ドクターX』をきっかけに医療従事者を目指すようになったという声も多くあると聞きます。このコロナ禍で、医療ドラマを届けることへのメッセージをお願いします。

知り合いと話をしていて「病気になったときこういう治療をした」という話を聞いたりすると「その症状だとその処置だよね」と理解できることがあるので、『ドクターX』を通して少しは医療現場にかかわっていたんだなと実感しています。

医療従事者の皆さんをどう労ることができるかというのは難しいですが、精一杯私たちの思いを伝えていきたい。コロナ以外の苦悩を描いたエピソードもあるので、今はコロナでニュースが埋め尽くされていますけど、それ以外でも苦しんでいる方々に手を差し伸べたり、そんな患者さんに対応しているお医者さんたちもたくさんいるんだと知って頂けるチャンスになればと思います。未知子としてはちょっと体が重くなっていますが(笑)、一生懸命ジムに通って未知子らしく頑張ります!









■米倉涼子

1975年8月1日生まれ、神奈川県出身。1993年モデルとしてデビュー。1999年に女優へ転身。近年は、『35歳の高校生』(日本テレビ系・13年)、『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』(テレビ朝日系・18年)などに出演。ミュージカルでも活躍しており、2008年に『CHICAGO』の日本版でミュージカルに初出演。2012年7月には『CHICAGO』でブロードウェイデビューを飾り、2017年、2019年と、3度ブロードウェイ主演を果たした。主演を務めるNetflixオリジナルシリーズ『新聞記者』の配信も控えている。

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スタイリング/栗田泰臣 ヘアメイク/佐藤郁江