逆にあれがセーフだと言える確証があるなら知りたい!

やはり審判員の存在は必要だなと思う判定が生まれました。10日の日本ハムVSロッテ戦の5回表、ロッテの藤岡裕大さんが打ったセカンドへのゴロをファーストへと送球したときのこと。タイミング的には余裕のアウトでしたが、一塁への送球が少しそれたことでファースト高浜さんの足がベースから離れてしまいます。

その結果、藤岡さんが一塁に到達した瞬間は、ファーストの足は一塁にくっついていない状態でした。一塁塁審はこのプレーをアウトと判定しますが、ロッテ側はファーストベースコーチが大きく手を広げてセーフをアピールします。当然ロッテの井口監督もリクエストをしますが、ビデオ判定を経てもアウトの判定は変わらず。

球場のビジョンではファーストの足が離れるところがハッキリと映っていましたので、「こりゃセーフでしょwww」と笑いも漏れるようなリプレーだったとのこと。それが判定変わらずということで、ロッテ側は大層ご立腹の様子。なるほど日ハムにとってはひとつのアウト・セーフなどもはやどうでもいいというか、「大谷はいつ帰って来るのかなぁ」くらいしか考えることがないのでどっちでもいいのかもしれませんが、ロッテにとっては全試合全プレーが優勝を争う大事なプレーです。セーフっぽく見えるものをアウトと言われては納得もしづらいでしょう。ということで、出しても無意味とは思いつつも怒りの意見書提出の運びとなった模様です。

↓コレをアウトと言われてロッテ側は納得いかず!


↓「ファンが笑っているかどうか」を重大なポイントととらえた斬新な意見書を提出の意向だそうです!

素人が場内のビジョンで見たときの反応をそんなに大事にしていただけるなんて!

いっそ、ストライクとかアウトも拍手の大きさで決めてはどうでしょうか!

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はたしてこのプレー、そんなに簡単な判定なのかな?と率直に思います。確かに、打者走者がベースに到達したときは、一目瞭然でファーストの足はベースから離れています。足をのばしてベースにくっつけたのは完全に後です。そのタイミングだけを見るなら「セーフっぽく見える」はその通りだと思います。笑っちゃうくらいの分かりやすさでしょう。

しかし、真に見極めるべきタイミングはその手前、ファーストが捕球したときのほうです。このプレー、確かに足はベースから離れますが、ほぼ同時にグラブのなかにボールが消えてもいます。懸命に足をのばして、わずかでもベースに接触している間にボールを捕球していればファーストのナイスプレーでアウトです。

そのタイミングを見極めるのは、中継で提示されたリプレー映像では相当に困難ではないかと思われます。まず一塁スタンド側からの映像では、グラブのなかにボールが隠れたタイミングと捕球したタイミングがイコールではないという前提のもと、捕球タイミングをしっかり見極めるのは困難です。セカンド後方側からの映像では、捕球したタイミングは比較的見やすいものの、今度はベースから足が離れているかどうかを見極めるのが困難です。

そして、ベースから足が離れたタイミングが比較的見やすい真上からの映像では、今度は肝心のグラブが画面外に見切れており、いつ捕球したのかを見極めるのが困難です。中継には3種類映像がありますがすべてを満たす完璧な映像は残念ながらありません。足が離れたところだけを見ると笑っちゃうようなプレーかもしれませんが、しっかり見極めるのは非常に困難な映像です。

仕方ないので、単純にボールとベースだけを見るのではなく、ほかのものの動きも勘案しながら見ていきます。まず捕球のタイミングでの動きですが、セカンド後方側からの映像を頼りにすると、打者走者は一塁周辺の土の部分に「右足をつくかつかないか(おそらくつく前)」という状態であることがわかります。これは一塁スタンド側からの映像での「それらしきタイミング」の見た目とも合致しています。

では、真上からの映像で「打者走者が土の部分に右足をつくかつかないか(おそらくつく前)」のタイミングを見ていくと、その部分は画面外に見切れており、打者走者の姿はヘルメットが最初に見えてくるという格好です。ヘルメットが先に画面に入ってくるという形を鑑みると、右足はすでに地面についていて、そこから踏み込んで身体を前に進めた頃合いであるというのが推察できます。

これを改めて一塁スタンド側からの映像で見ると、「打者走者が右足を踏み込んで身体を前に進めたタイミング」は、「捕球したと思われるタイミング」よりあとです。上からの映像で打者のヘルメットが見切れた瞬間が捕球のタイミングよりあととするなら、そのタイミングではベースに足がついているように見えます。少なくとも「明確に足が離れている」とは言えません。

↓改めて時系列で並べていきますと、まず捕球したと思われるタイミングがコレ。


打者走者の右足が地面につくかつかないか。

ヘルメットより右足がわずかに前に出ている。


↓そのタイミングを一塁側から見るとこう。


やはり、打者走者の右足がつくかつかないか。

そして、ヘルメットより足が前に出ている。


↓上からの映像で打者走者の姿が見え始めたのがコレ。


ヘルメットが前に出てきているから先にヘルメットが見えたのでは?

まだ足はベースについているように見える。


↓判定を覆してもいいかなと思えるくらいに「足が離れた」とわかるタイミングでは、もう完全に上半身が入ってきている!


これは完全に右足を踏み込んだあとでしょう!

であれば捕球タイミングより完全にあと!

つまり、捕球よりも足離れがあと!

じっくり映像を見た結果、ゼロベースからでも僕の判定は「アウト」とします!



という話をするまでにこの映像を何十回も見返し、スロー映像をさらにスロー再生してコマ送りで見ました。それぐらいやってようやく、自分なりの判断がくだせるというものを、球場の大型ビジョンで見た程度で断じることなど到底できないと思われます。「足離れてるwww完全アウト草www」くらいは言うでしょうが、それを真に受けられても困る。もちろん「誰が見ても」というレベルの誤審らしきプレーもときにはありますが、大抵の揉めるプレーは「何度見てもよくわからん」というものです。このプレーもまさに「何度見てもよくわからん」プレーです。

もしもこの映像を両軍で見て合議制で判定を下そうとすれば、両方ともが「セーフだ」「いーやアウトだ」と言って譲らないでしょう。あるいは日ハムのほうは「セーフでもいいよ」「ボールもそれたし」「今シーズンはぶっちゃけどうでもいいし」と引っ込むかもしれませんが、ロッテが「アウトでいいです」と引っ込むことはないでしょう。同じ映像を見て、試合後に落ち着いたところで、まだ意見書を出そうと言うわけですから、当然プレー直後のカッカした状態で引くことなどあり得ない。

だからこそ審判員がいるのです。

グラウンドにウソつきとカンチガイとご都合野郎だけが揃っていたとしても、どちらにも与することなく裁く第三者が必要だから審判員がそこにいるのです。そういう人がいないと「互いに譲らず話が終わらない」から審判員がいるのです。このリプレーを見て「アウトでいいです」とロッテが引き下がれる世界なら審判員はいらないかもしれませんが、図らずもロッテの振る舞いが審判員が必要であることを再び示したと僕は思います。「誰かが決めてやらないとダメなんだな」と。

どれだけ道具が進化しても、「よくわからん」は出てきます。その「よくわからん」に白黒つけるとき、自分の不利を自ら進んで飲み込む覚悟が全員にない限りは、第三者たる審判員の判定に従ってもらうしかありません。そのためにリプレー検証でも、ビデオを見て明確に判定を覆す材料がない場合は、最初に審判員が出した判定通りということにしています。「よくわからん」は「審判の言う通り」でないと決まらないからです。「ブレーキが壊れていました」と主張する輩との揉め事は裁判で決めてもらうしかないように。

とりあえず、意見書を出す前にもう一度映像を見返して、お客が笑っていたからなんてことではなく、「どうしてセーフだと思ったのか」を説明することからロッテは始めるべきだと率直に思います。そこまで自信を持ってご意見を出すのなら、何がしか確信があるのでしょう。利害関係ありまくりのファーストベースコーチによる「セーフに見えました!」なんて適当な話ではなく。もしかしたらロッテだけ違う映像でも見ていたんじゃないかという気がするので、早速その映像を提出してもらいたいところですね!

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奇跡的な写真でも出ない限り、判断などつかないプレーだと思います!