この記事をまとめると

■欧州では、企業平均値としての二酸化炭素(CO2)排出量を制限している

■日本ではいまだガソリン車とHVが併売されており、消費者の志向が大きく変わっていない

■CO2排出量を抑えて温暖化を防がないと生きることさえ苦難になる時代になりかねない

国や地域によって地球環境保全の規制が異なるのは問題だ

 地球環境の保全は世界の問題だ。したがって、環境基準が国や地域によって異なることは不自然といえる。

 欧州は、自動車メーカーが販売する新車すべてにおいて、企業平均値としての二酸化炭素(CO2)排出量を制限している。このため、小型の大衆車から大柄な高級車や超高性能なスポーツカー、GTカーを含め、そのメーカーが販売した新車のすべてのCO2排出量を平均して、規制値を達成しなければならない。

 現在の欧州のCO2排出量規制は95g/kmだから、ホンダは、新型フィットやシビックではハイブリッド車(HV)しか販売しない。

 一方、日本は昨年、経済産業省が2030年の燃費基準を策定したが、車両重量ごとに達成すべき燃費性能が定められている。たとえば車両重量が1トンのクルマなら27.3km/L、1.6トンなら23.0km/L、2トンなら19.1km/Lという具合だ。そこで、HVとガソリンエンジン車が併売されている。

 しかし日産自動車は、新型ノートをHV専用車とし、ノートオーラも同様だ。これに対し、世界で初めて1997年にHVを発売したトヨタはいまなお、ガソリンエンジン車とHVを併売している。販売実績を見ても、それなりにガソリンエンジン車が売れているので、25年近く経っても消費者の志向が大きく変わっていない現状もあるだろう。

今のままだと食料や水にも懸念が生じて生きることが苦難となる

 メーカーの意思だけでなく、消費者の意識も変化していかなければ、HV比率はある段階で頭打ちになる。
米国や中国は、電気自動車(EV)の強制導入という規制を行っている。新車販売のうち何パーセントかをEVにしなければならない内容で、年を追うごとにEV比率が高まっていく。当面は、EVのなかにプラグインハイブリッド車(PHEV)も含む移行期間がある。

 そのうえで、世界的にエンジン車の販売禁止の方向性が打ち出されている。ただし、PHEVはモーター走行に加えハイブリッド走行も併用するので、PHEVの扱いをどうするかは必ずしもまだ明確ではない。

 一方、HVは、走行するため必ずエンジンが必要になるので、エンジン車販売禁止にあてはまる可能性が高いだろう。

 いずれにしても、今日にでもCO2ゼロにしなければならない自然災害の甚大化が迫っている。それは大気の温度上昇にとどまらず、海水温度もあがってしまったためだ。したがって欧州ではCO2排出をゼロにしても、この先30年は気候変動が収まらないと見る動きもある。もはやHVの次元を超え、全面的なEV化を果たせるかどうかが未来の暮らしを左右することになる。

 すでにアラスカなど永久凍土が融けはじめており、シベリアには永久凍土の下に大量のメタンがある。メタンガスはCO2の数十倍の温室効果があり、万が一メタンが大気中に放出されだしたら、いまの気象状況でさえ保てなくなると思うべきである。

 となると、食料や水にも懸念が生じ、生きることさえ苦難の時代を迎えることになりかねない。すでに生産量の減った小麦が値上がりし、野菜の品質が落ち、漁獲量の変動が激しくなっている。米国では、牛が吐き出すメタンの量を減らす取り組みもはじめられているほどだ。じつは水田も、メタンを発生させている。

 CO2排出量を少しでも抑えることは世界的にも急務となっているのだ。