●ショートカットを自作して日々の作業を自動化しよう
iOSで提供されている「ショートカット」アプリを使えば、iPadで行うさまざまな業務を自動化してワンタップで実行できるようになる。前回は、「ギャラリー」としてあらかじめ用意されたショートカットを取得・使用する方法を紹介したが、ショーカットは自分で作成したり、既存のショートカットをカスタマイズしたりすることもできる。そこで今回は、自分なりのショートカットを作成する方法を説明しよう。
ショートカット自作のための基礎知識
ショートカットは「アクション」と呼ばれる小さな処理を複数組み合わせて作成する。アクションには、単に画面にテキストを表示したり、キーボードからの文字入力を受け取ったりするようなものから、アプリからデータを受け取ったり、逆にアプリにデータを渡したりするようなものまで、さまざまなものが用意されている。
それぞれのアクションは、実行結果として次のアクションに対してデータを受け渡すことができる。渡されるデータの内容はアクションによって異なるが、例えば生成されたテキストや日付、検索の結果、各アプリで使用している内部データなどがある。そうしてアクションからアクションへデータを受け渡して一連の処理を順番に実施するのが、ショートカットの基本的な動きになる。
単に順番にアクションを実行するだけではなく、複数の項目に対して順番に同じ処理を実行するような、繰り返し処理を実現することもできる。同様に、指定回数だけ同じ処理を繰り返すようなアクションもある。
条件を指定して、その条件を満たすか否かで処理を分けるようなこともできるようになっている。
一つ一つのアクションはシンプルなものが多いが、うまく組み合わせることで複雑な作業をすべて自動化することも可能である。なお、操作はすべて画面上のアイコンなどを操作するだけで良いため、プログラミングなどの専門的な知識がなくても問題ない。
「今日の予定をメールで送る」の作り方
それでは、実際に自分でショートカットを作ってみよう。ここでは、カレンダーに登録されている当日の予定をまとめて指定されたメールアドレス宛に送信する「今日の予定をメールで送る」というショートカットを例に挙げて、その作り方を解説する。
ショートカットを追加する
新規でショートカットを作る場合、ショートカットアプリの任意のフォルダで、上部にある[+]アイコンをタップする。
すると、次のようにショートカットの作成画面が表示される。
最初にショートカットの名称を決めてしまおう。デフォルトでは「新規ショートカット」となっているので、その右にあるアイコンをタップして詳細設定ダイアログを開く。
ここで、ショートカットの名称を変更することができる。そのほか、共有シートやApple Watchに表示するかどうかなどの設定も行える。
1つ目のアクションを追加する
さて、準備ができたらアクションを追加してショートカットを構築していこう。アクションは右のパネルから選ぶ。今回は、まずカレンダーから今日の予定を抽出したいので、「App」のカテゴリーを開いで、アプリの中から「カレンダー」をタップする。
カレンダーで提供されているアクションが表示されるので、この中から「カレンダーイベントを検索」を選択する。
すると、次のように左のエリアにアクションが追加される。「カレンダーイベントを検索」アクションでは、カレンダーに登録されたイベントを検索するための条件などを細かく指定することができる。今回は対象の日付(開始日)を「今日である」に、並び順序を「カレンダー」順に変更し、順序として「昇順」を選択しておく。
この設定で、カレンダーから今日の予定(イベント)を時間順に取得して、リストとして次のアクションに渡すことができるはずだ。
2つ目のアクションを追加する
次のアクションでは、取得したカレンダーイベントを使ってメール本文を作成したい。取得できたカレンダーイベントはリストとして渡されるはずなので、1件ずつ加工して文面を整えることにする。リストにある項目を1件ずつ順番に処理したい場合には、「スクリプティング」カテゴリーにある「各項目を繰り返す」というアクションを使用する。
このアクションは、「各項目を繰り返す」と「繰り返しの終了」の間に挟まれたアクションを、項目の数だけ繰り返し実行するというものである。
●
テキストを結合してアクションを追加する
今回は、カレンダーイベントから時間やタイトルなどの情報を取り出してメール本文の文章を作りたい。これはテキストを加工するアクションを使って実現できる。「書類」カテゴリーにある「テキストを結合」というアクションを使ってみよう。これは複数の情報を結合してテキストを作成するアクションである。
選択した直後は「繰り返しの終了」の後ろに追加されているので、ドラッグして次のように繰り返し処理の場所に移動させる必要がある。
デフォルトでは、「繰り返す項目を改行で追加」という形になっている。「繰り返し項目」というのは、ここではカレンダーイベントになる。今回はカレンダーイベントではなく、ここから時間とタイトルを個別に取り出して空白などで結合して1行の文章にしたい。そこで、「繰り返し項目」の部分をタップして、次のように内容の詳細を表示させる。
ここでリストから「開始日」を選択すると、続いて次のように日付・時間のフォーマットを指定できる。この例では日付を「なし」(表示しない)に、時間を「短」(時間と分のみ)に設定した。
イベントの時間だけでなくタイトルも表示したいので、「開始日」の横にある[+]アイコンをタップして項目を追加しよう。下部に項目の詳細が表示されるので、今度は「タイトル」を選択する。
あとは結合方法だ。デフォルトでは「改行」になっているが、今回は1つのイベントごとに1行で表示したいので、これを「空白」に変更する。
以上でメールの本文を作成する部分は完成した。「繰り返しの終了」から次のアクションに渡されるデータは、次のような形式のテキストになっているはずだ。
9:00 開発チーム 定例ミーティング
14:30 マイナビ ニュース記事入稿
15:30 技術評論社 打合せ
メールを送信するアクションを追加する
これをメールアプリを使って決められた宛先に送信したい。メールの送信は、「メール」カテゴリの「メールを送信」アクションで実行できる。このアクションでは、次のように「送信内容」、「宛先」、「件名」を指定できる。
今回の例で送信する内容は「繰り返しの結果」である。宛先は、連絡帳に登録されている連絡先のほかに、任意のメールアドレスを指定できる。そして件名は、タップすると次のようにソフトウェアキーボードが立ち上がって任意の件名を入力できる。
ここで、自分で固定の件名を付ける以外に、キーボード上部に表示されている項目から可変の値を設定することもできる。例えば「現在の日付」を選択すれば、件名にはショートカットを実行した日時が追加されるようになる。フォーマットも指定できるので、今回は時刻を省略して日付のみ使うようにする。
変数の前後に自分でテキストを付け加えることもできる。「2021/08/31の予定」のような形式の件名にしたい場合は、次のように「[現在の日付]の予定」と入力すればよい。
なお、「メールの送信」アクションでは、「表示を増やす」をタップすることで次のようにアプション項目が表示されて、送信元やCc/Bccのアドレスなどを追加することもできるようになっている。
このオプションのうち、「作成シートを表示」は、メールの送信前に確認画面を表示するかどうかの選択である。有効にすると、メールを送る前にプレビューが表示され、自分で送信ボタンを押すことで実際に送信される。無効にした場合には確認なしで送信されるようになる。
5個のアクションを組み合わせたショートカットが完成
以上で「今日の予定をメールで送る」のショートカットは完成だ。全体像は、5個のアクションの組み合わせで次のようになっている。
右上にある再生アイコンをタップすれば、作ったショートカットをすぐに実行できる。なお、この再生アイコンはショートカットを作成している途中でも押せるので、アクションを追加するごとに実行結果を確認しながら作成を進めるのがいいだろう。
今、カレンダーの今日の予定が次のように登録されているとする。
この状態で「今日の予定をメールで送る」ショートカットを実行すると、メールアプリが起動して次のようなプレビュー画面が表示されるはずだ。これで問題なければ、右上の送信アイコン(矢印アイコン)をタップすればメールが送信される。
なお、自作したショートカットも、ギャラリーから取得したショートカットと同様、ショートカット一覧にアイコン表示されるので、ここから実行したり設定を変更できる。
○まとめ
ショートカットの自作はプログラミング的な考え方が必要とされる部分もあるので、少し敷居が高く感じられるかもしれない。しかし、基本的にはアクションを組み合わせるだけなので、パズル間隔で試しながら作ってみるといいだろう。最初は、ギャラリーなどから取得した既存のショートカットをもとにして、自分なりにカスタマイズすることから始めることをお勧めしたい。使いこなせば、iPadで行っている日々の業務の一部を自動化して、作業時間を大幅に削減することができるだろう。
iOSで提供されている「ショートカット」アプリを使えば、iPadで行うさまざまな業務を自動化してワンタップで実行できるようになる。前回は、「ギャラリー」としてあらかじめ用意されたショートカットを取得・使用する方法を紹介したが、ショーカットは自分で作成したり、既存のショートカットをカスタマイズしたりすることもできる。そこで今回は、自分なりのショートカットを作成する方法を説明しよう。
ショートカット自作のための基礎知識
ショートカットは「アクション」と呼ばれる小さな処理を複数組み合わせて作成する。アクションには、単に画面にテキストを表示したり、キーボードからの文字入力を受け取ったりするようなものから、アプリからデータを受け取ったり、逆にアプリにデータを渡したりするようなものまで、さまざまなものが用意されている。
それぞれのアクションは、実行結果として次のアクションに対してデータを受け渡すことができる。渡されるデータの内容はアクションによって異なるが、例えば生成されたテキストや日付、検索の結果、各アプリで使用している内部データなどがある。そうしてアクションからアクションへデータを受け渡して一連の処理を順番に実施するのが、ショートカットの基本的な動きになる。
単に順番にアクションを実行するだけではなく、複数の項目に対して順番に同じ処理を実行するような、繰り返し処理を実現することもできる。同様に、指定回数だけ同じ処理を繰り返すようなアクションもある。
条件を指定して、その条件を満たすか否かで処理を分けるようなこともできるようになっている。
一つ一つのアクションはシンプルなものが多いが、うまく組み合わせることで複雑な作業をすべて自動化することも可能である。なお、操作はすべて画面上のアイコンなどを操作するだけで良いため、プログラミングなどの専門的な知識がなくても問題ない。
「今日の予定をメールで送る」の作り方
それでは、実際に自分でショートカットを作ってみよう。ここでは、カレンダーに登録されている当日の予定をまとめて指定されたメールアドレス宛に送信する「今日の予定をメールで送る」というショートカットを例に挙げて、その作り方を解説する。
ショートカットを追加する
新規でショートカットを作る場合、ショートカットアプリの任意のフォルダで、上部にある[+]アイコンをタップする。
すると、次のようにショートカットの作成画面が表示される。
最初にショートカットの名称を決めてしまおう。デフォルトでは「新規ショートカット」となっているので、その右にあるアイコンをタップして詳細設定ダイアログを開く。
ここで、ショートカットの名称を変更することができる。そのほか、共有シートやApple Watchに表示するかどうかなどの設定も行える。
1つ目のアクションを追加する
さて、準備ができたらアクションを追加してショートカットを構築していこう。アクションは右のパネルから選ぶ。今回は、まずカレンダーから今日の予定を抽出したいので、「App」のカテゴリーを開いで、アプリの中から「カレンダー」をタップする。
カレンダーで提供されているアクションが表示されるので、この中から「カレンダーイベントを検索」を選択する。
すると、次のように左のエリアにアクションが追加される。「カレンダーイベントを検索」アクションでは、カレンダーに登録されたイベントを検索するための条件などを細かく指定することができる。今回は対象の日付(開始日)を「今日である」に、並び順序を「カレンダー」順に変更し、順序として「昇順」を選択しておく。
この設定で、カレンダーから今日の予定(イベント)を時間順に取得して、リストとして次のアクションに渡すことができるはずだ。
2つ目のアクションを追加する
次のアクションでは、取得したカレンダーイベントを使ってメール本文を作成したい。取得できたカレンダーイベントはリストとして渡されるはずなので、1件ずつ加工して文面を整えることにする。リストにある項目を1件ずつ順番に処理したい場合には、「スクリプティング」カテゴリーにある「各項目を繰り返す」というアクションを使用する。
このアクションは、「各項目を繰り返す」と「繰り返しの終了」の間に挟まれたアクションを、項目の数だけ繰り返し実行するというものである。
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テキストを結合してアクションを追加する
今回は、カレンダーイベントから時間やタイトルなどの情報を取り出してメール本文の文章を作りたい。これはテキストを加工するアクションを使って実現できる。「書類」カテゴリーにある「テキストを結合」というアクションを使ってみよう。これは複数の情報を結合してテキストを作成するアクションである。
選択した直後は「繰り返しの終了」の後ろに追加されているので、ドラッグして次のように繰り返し処理の場所に移動させる必要がある。
デフォルトでは、「繰り返す項目を改行で追加」という形になっている。「繰り返し項目」というのは、ここではカレンダーイベントになる。今回はカレンダーイベントではなく、ここから時間とタイトルを個別に取り出して空白などで結合して1行の文章にしたい。そこで、「繰り返し項目」の部分をタップして、次のように内容の詳細を表示させる。
ここでリストから「開始日」を選択すると、続いて次のように日付・時間のフォーマットを指定できる。この例では日付を「なし」(表示しない)に、時間を「短」(時間と分のみ)に設定した。
イベントの時間だけでなくタイトルも表示したいので、「開始日」の横にある[+]アイコンをタップして項目を追加しよう。下部に項目の詳細が表示されるので、今度は「タイトル」を選択する。
あとは結合方法だ。デフォルトでは「改行」になっているが、今回は1つのイベントごとに1行で表示したいので、これを「空白」に変更する。
以上でメールの本文を作成する部分は完成した。「繰り返しの終了」から次のアクションに渡されるデータは、次のような形式のテキストになっているはずだ。
9:00 開発チーム 定例ミーティング
14:30 マイナビ ニュース記事入稿
15:30 技術評論社 打合せ
メールを送信するアクションを追加する
これをメールアプリを使って決められた宛先に送信したい。メールの送信は、「メール」カテゴリの「メールを送信」アクションで実行できる。このアクションでは、次のように「送信内容」、「宛先」、「件名」を指定できる。
今回の例で送信する内容は「繰り返しの結果」である。宛先は、連絡帳に登録されている連絡先のほかに、任意のメールアドレスを指定できる。そして件名は、タップすると次のようにソフトウェアキーボードが立ち上がって任意の件名を入力できる。
ここで、自分で固定の件名を付ける以外に、キーボード上部に表示されている項目から可変の値を設定することもできる。例えば「現在の日付」を選択すれば、件名にはショートカットを実行した日時が追加されるようになる。フォーマットも指定できるので、今回は時刻を省略して日付のみ使うようにする。
変数の前後に自分でテキストを付け加えることもできる。「2021/08/31の予定」のような形式の件名にしたい場合は、次のように「[現在の日付]の予定」と入力すればよい。
なお、「メールの送信」アクションでは、「表示を増やす」をタップすることで次のようにアプション項目が表示されて、送信元やCc/Bccのアドレスなどを追加することもできるようになっている。
このオプションのうち、「作成シートを表示」は、メールの送信前に確認画面を表示するかどうかの選択である。有効にすると、メールを送る前にプレビューが表示され、自分で送信ボタンを押すことで実際に送信される。無効にした場合には確認なしで送信されるようになる。
5個のアクションを組み合わせたショートカットが完成
以上で「今日の予定をメールで送る」のショートカットは完成だ。全体像は、5個のアクションの組み合わせで次のようになっている。
右上にある再生アイコンをタップすれば、作ったショートカットをすぐに実行できる。なお、この再生アイコンはショートカットを作成している途中でも押せるので、アクションを追加するごとに実行結果を確認しながら作成を進めるのがいいだろう。
今、カレンダーの今日の予定が次のように登録されているとする。
この状態で「今日の予定をメールで送る」ショートカットを実行すると、メールアプリが起動して次のようなプレビュー画面が表示されるはずだ。これで問題なければ、右上の送信アイコン(矢印アイコン)をタップすればメールが送信される。
なお、自作したショートカットも、ギャラリーから取得したショートカットと同様、ショートカット一覧にアイコン表示されるので、ここから実行したり設定を変更できる。
○まとめ
ショートカットの自作はプログラミング的な考え方が必要とされる部分もあるので、少し敷居が高く感じられるかもしれない。しかし、基本的にはアクションを組み合わせるだけなので、パズル間隔で試しながら作ってみるといいだろう。最初は、ギャラリーなどから取得した既存のショートカットをもとにして、自分なりにカスタマイズすることから始めることをお勧めしたい。使いこなせば、iPadで行っている日々の業務の一部を自動化して、作業時間を大幅に削減することができるだろう。