細田守監督のアニメーション映画『竜とそばかすの姫』(公開中)は、インターネット上の仮想世界<U(ユー)>の世界観や映像美が話題を呼んでいるが、そのなかでじわじわと注目を集めているのが<U>に登場する天使のアバター(劇中では<As(アズ)>と呼ばれる)。ネット上では、現実世界での正体を予測する声が多く見られるほか、その独特なビジュアルが好評を博している。
本作は、高知に暮らす内気な17歳の女子高校生・内藤鈴(すず/声:中村佳穂)が、50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U>で成長していく物語。幼いころに母を亡くして以来、歌うことができなくなったすずが、<U>に<As>と呼ばれる自分の分身・歌姫「ベル」として参加し、封印していた歌声を披露したことで世界に注目される存在となっていく。そんな中、ベルは<U>で忌み嫌われる謎の存在“竜”(声:佐藤健)と出会う。本作は7月16日より公開され、8月8日までの累計で動員292万人、興行収入40億円を突破している。
天使Asは、ベルが竜を探し求めるなかで度々姿を現し、竜の棲む城へといざなう。ネット上では、「流氷の妖精」と呼ばれるクリオネ(ハダカカメガイ)にソックリだと指摘する声が上がっているが、このユニークなデザインを手掛けたのは画家・イラストレーターのイケガミヨリユキ。天使のほか、サックスを持った女の子、カヌーを乗せた犬、5人組など、<U>に登場する数々の<As>のデザインを担当している。
天使Asのデザインについては、イケガミが「クリオネのような天使のキャラクターで」という細田監督のオーダーを受け制作。「現実世界のキャラクターの繊細さ、儚さを感じさせるデザインに近づけていった」という。イケガミが特にこだわった点はフォルム(形、形状)で、現在に至るまでの経緯について以下のように話している。「クリオネのフォルムがなかなか定まらなくて、監督と相談しながら何度も修正した記憶があります。最初はもっと羽根が長かったり胸のランプの代わりに雪の結晶を入れてみたりと複雑なビジュアルだったのですが、最終的に今のシンプルでかわいらしいフォルムになりました。体がちょっと透明になっていて胸の灯りがぼんやり灯っているように見えるところが気に入っています」
イケガミは、2019年に「ボローニャ絵本原画展」入選。橋爪志保の歌集「地上絵」の挿画を担当し、昨年8月に100点以上の作品を収録した「イケガミヨリユキ作品集」(玄光社)が発売された。
なお、<U>のビジュアルには多彩なクリエイターが集結しており、歌姫ベルのキャラクターデザインを『アナと雪の女王』『ベイマックス』などで知られるジン・キム、竜を書籍の装画なども手掛けるクリエイターの秋屋蜻一(あきや・かげいち)が担当。竜の城とくじらは、「ファイナルファンタジーXII」の背景アートディレクターを務めたイラストレーター、アートディレクターの上国料勇によるもの。YouTuberコンビ・ひとかわむい太郎とぐっとこらえ丸を、『サマーウォーズ』のアバター、キングカズマ(ウサギ型アバター)を担当した岡崎能士と、仮ケンジ(リス型アバター)を担当した岡崎みなが共作。<As>の一部を、漫画家のippatuが手掛けている。(編集部・石井百合子)
外部リンクシネマトゥデイ