オリックスで4年、阪神で8年間プレーした葛城育郎氏

 プロ野球は前半戦を終え現在は五輪期間中でシーズンは一時、中断。エキシビションマッチでファンを楽しませているが、セ・パで首位を走る阪神、オリックスの日本シリーズ“関西決戦”にも注目が集まっている。

 この関西2球団に現役時代所属していたのが葛城育郎氏だ。現在は報徳学園のコーチとして球児たちを指導しているが、酸いも甘いも知るOBに今後の展望、関西セ・パの違いなどを語ってもらった。

 葛城氏は1999年にドラフト2位でオリックスに入団。2年目の2001年にはレギュラーに定着し130試合に出場、打率.268、14本塁打。2003年オフに阪神へトレード移籍し2011年に現役を引退した。ここまで関西の2球団が首位を走る現状に「関わっていた選手たちもいるので、素直に嬉しいですね。まだ半分ですが、もし日本シリーズが実現すれば凄いことになるでしょうね」と笑顔を見せる。

 阪神は下馬評通りの活躍を見せているが、前半戦終盤にはやや失速し2位・巨人とのゲーム差は「2」に縮まった。

「最初の勢いは少しなくなったが首位ターンは素晴らしいこと。新人の佐藤、伊藤、中野が活躍したがいきなり1年間やるのは体力的にもきつい。失速の原因はあるが、その中でも今年はオリンピック期間がある。そこで一度、休めるのは本人たち、チームにとっても大きいのかなと思います」

 2008年の阪神時代には巨人に最大13ゲーム差を逆転されV逸を経験。追われる難しさは身を持って味わっているだけに「追われる方がしんどいですよ。あの時は僕らはそこまで負けてない(シーズン82勝59敗3分)。巨人が勝ちすぎたんですよ(9月に破竹の12連勝)。普通にできたけど逆転された、追われる身は本当にしんどかった」と振り返る。

 一方、下馬評を覆す活躍を見せるオリックスには「昨年までのイメージは足を使った野球でしたがラオウ君(杉本)がいて、吉田正、T(T-岡田)も頑張ったで“打つ野球”になった。元々、先発投手はいいし宮城君が入った。数はしっかりしている。今年は投打が噛み合った印象ですね」と、昨年からのプラス要素に目を細める。

「オリックスでサヨナラ勝ちしても負けた阪神が一面。なんでや!って」

 葛城氏は同じ関西の2球団でも現役時代に雲泥の差を感じたという。「まずはマスコミの数ですよね。阪神は1軍、2軍どこにでも記者はうじゃうじゃいる。オリックスはイチローさんがいた時は多かったですが移籍してからは記事にすらならない(笑)。阪神は何しても記事になる。そこですよね」。

 オリックス時代は勝っても負けても試合の記事を探すことが必要だったが、阪神はほぼ毎日一面を飾る。トレード当初は驚きもあったようで「めちゃくちゃ衝撃だった。オリックスでサヨナラ勝ちしても負けた阪神が一面。なんでや!って。それが僕が阪神にトレードされた時に一面になった。まだプレーもしてないのに(笑)」と苦笑い。

 阪神移籍後はマスコミの多さに困惑し、勝てば騒がれ負ければ叩かれるジェットコースターのような時を過ごしたが「ある意味それが素直。お金をもらってプレーしているので活躍したら称賛を受け、失敗したら叩かれる。やっぱり目立ってなんぼ。ファンの前でやることも含めて選手にとってはそれが一番だと思います」。

 五輪が終われば後半戦も始まり、いよいよペナントも佳境に入ってくる。仮に日本シリーズで“関西決戦”が実現すれば阪神対南海の1964年以来となる。葛城氏は「両方頑張ってほしい。首脳陣も僕らがやっていた時の仲間が多い。オリックス4年、阪神8年ですがオリックスに入ってなかったら今はないですから。関西を盛り上げてくれたらいいですよね。今は暗いニュースばかりですが頑張ってほしい」とエールを送っていた。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)