8月3日、東京五輪の準決勝、日本対スペインが埼玉スタジアム2002で開催される。

 ペドリを筆頭に、マルコ・アセンシオ、ダニ・オルモ、ダニ・セバジョス、パウ・トーレス、ウナイ・シモンらタレントがずらりと揃うスペインの五輪代表。その中には、岡崎慎司、乾貴士、香川真司という2018年のロシア・ワールドカップで日本のベスト16進出に貢献した名手たちから、レギュラーの座を奪った男たちがいる。その3人を紹介したい。

 今回のスペイン代表で、唯一の本格派FWであるラファ・ミルはウォルバーハンプトンからレンタルされたウエスカで1年半、岡崎とCFのポジションを争った。

 2部で優勝した1年目は、チーム最多の12ゴールを挙げた岡崎が絶対的エースでミルはバックアッパー。本職ではないサイドで起用されることも少なくなかった。それでも、冬の加入ながらチーム2位の9ゴールをマークすると、翌20-21シーズンは、岡崎が開幕早々に故障離脱した隙に、がっちりレギュラ―の座を確保。チームは降格したものの、13ゴールを挙げて評価を高めた。

 191センチのがっちりした体躯で、空中戦に強いだけでなく、ボレーなどアクロバティックなゴールが多いのも特徴。昨シーズンは、目の覚めるようなミドルシュートも決めている。

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 今回のスペインでは、ミケル・オジャルサバルのバックアッパーという位置づけだったが、準々決勝のコートジボワール戦では、後半アディショナルタイムに失点した直後に投入され、起死回生の同点弾。延長戦でさらに2ゴールを奪ってハットトリックを達成し、文字通り救世主となった。日本戦ではスタメン起用される可能性も小さくない。

 このミルとともにスーパーサブの役割を担ってきたのが、ブライアン・ヒルだ。名門セビージャの下部組織で育ち、21世紀生まれの選手として初めてラ・リーガ1部でゴールを決めた左利きのドリブラーは、昨シーズンにレンタルされたエイバルで大ブレイク。乾から左サイドハーフのポジションを奪ってみせた。

 昨年11月には、13歳も年上の乾が、自身のツイッターで「この19歳(現在は20歳)はすげー。色々学んで、まだまだ上手くなろう」と綴ったことでも話題となった。まだ好不調の波が激しく、消えてしまう試合もあるが、乗った時は手が付けられない。今大会は全4試合に途中出場しており、日本戦でもここぞという場面で投入されるだろう。
 日本代表で長らく10番を背負った香川の序列を低下させたのが、ハビ・プアドだ。香川がスペイン2部サラゴサに加入した19-20シーズン、ビクトル・フェルナンデス監督(当時)はドルトムントからやってきたMFを4-3-1-2のトップ下で起用し、序盤戦は期待に応える活躍を見せていた。

 しかし、2トップの一角を担っていたラファエル・ドゥワメナが故障で長期欠場となり、緊急措置でプアドがエスパニョールからレンタルされてくると、状況が激変。システムが4-2-3-1に変更となり、トップ下にプアドが起用されたため、割を食う形で左サイドの追いやられた香川は輝きを失い、守備面で指揮官の要求に応えられなかったこともあって、次第にベンチスタートが多くなっていった。

 そのシーズン終了後、プアドはエスパニョールに復帰したが、評価を落した香川が契約解除となり、翌シーズンの前半戦を無所属で過ごすはめになったのは周知の通りだ。
 
 セカンドトップやウイングで機能するプアドは今大会、グループステージ第2戦のオーストラリア戦でスタメンを飾った以外は、ベンチメンバーから外れている。3日の試合でプッチに立つ可能性は高くないかもしれないが、7月17日に行なわれた日本とのテストマッチでは、カルロス・ソレールの同点弾を呼び込むシュートを放っており、出場すれば捕まえにくい嫌な存在だ。

 このプアドがベンチに入れず、ミルやB・ヒルがこれまでスタメンで出られないほど、スペインのタレントは充実している。日本にとっては最後の最後まで息が抜けないゲームとなるだろう。

 ただ、日本も途中出場やレギュラーの代役が活躍。総力戦では負けていない。先の“前哨戦”は1-1。雌雄を決する時がきた。

文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)