乗り慣れていないと分からない「暗黙の了解」的なマナーも
自分でクルマを持っていたり、よく運転して誰かを乗せることがある人は、自然と車内や乗り降りで「されるとイヤなこと」というのはわきまえているものです。でも、自分で運転しない人はもちろん、あまり誰かのクルマに乗せてもらうこともない人は、なかなかそうした”暗黙の了解”的な乗車マナーはわからないですよね。今回は、無意識にやってしまいそうだけど、じつは相手がイヤがる同乗者の服装や行動をご紹介したいと思います。
1)服装
まず1つ目は、クルマに乗ることがわかっているなら避けたい服装について。チャックやスタッズなどの大きな金具、女性ならピンヒールや固いヘアアクセサリーなど。どれも、普通に乗り降りしているだけでも、大事なクルマのボディや内装を傷つけてしまう可能性があるからです。狭い駐車場でクルマとクルマの間を歩く際に、関係ない他人のクルマのボディにまで金具で傷をつけてしまったら大変。
ピンヒールは足を出し入れする際にサイドシルの樹脂部分に線状の傷を付けてしまったり、カーペットがケバケバになってしまうことも。本革シートなどもデリケートなので、お尻のところにスタッズが付いているデニムなども要注意です。また白いシートは洋服の色移りもしやすく、とくに雨の日のブルーデニムにも気をつけたいですね。もし、同乗者がそのような服装をしてきたら、ブランケットをそっとシートに敷いてあげるなど、ドライバーも配慮をするといいでしょう。
2)ドアの開け閉め
2番目はドアの開け閉めです。乗り慣れていない人は、力任せにバタンと閉めてしまいがち。開ける時も閉める時も、風の強い日には急にドアが持っていかれて隣りのクルマにドアパンチしてしまうこともありえます。勢いよく開けず、最初に10cmほど開けて様子を見てから、ゆっくり開けていくようにするといいですね。
また、降りる時にいきなり周囲の確認もせずにドアを開けてしまう人もいますが、通行人がいたり縁石やポールがあったりしたら大変です。ドライバーも、さっさと先に降りてしまうのではなく、同乗者がドアを開けようとしていたら一緒に周囲の確認をしてあげるようにしましょう。
大きな荷物を助手席で抱えていると視界の妨げに
3)飲み物の扱い
3番目は、駅などで待ち合わせをして同乗者を迎えに行ったら、飲み物を買って乗り込んでくることがありますが、クルマに乗り慣れていないと「こぼれる可能性」を考慮しない人も多いのです。密閉できない紙パック飲料や、クリーム盛り盛りのショコラドリンクなど。それらは車内に置き場所がないこともありますし、なみなみと注がれたキャップのないカップ飲料などは、もし急ブレーキを踏んだらこぼれること必至。
もし同乗者がそうしたドリンクを買ってきたら、少し停車した状態で飲んでから出発するなど、愛車を汚すリスクを少しでも減らしたいものです。また、帰る際は飲み終えた容器をそのまま置いてきてしまうのもNG。もしゴミ箱が見当たらなかったり、ゴミを持ったまま降りるのが難しい状況なら、「このままになってしまうけどすみません」とひと言、ことわりとお礼の気持ちを伝えてから降りましょう。
4)バッグや小物の置き場所
4番目は、バッグや小物の置き場所です。乗り慣れていない人は、バッグや上着などを後部座席に置いてから助手席に乗り込むという流れが身についていないので、座りながら膝の上に抱えてしまう人も多いのです。でもそれはドライバーからすると、大きなバッグだとサイドミラーを遮ってしまったり、カーブのたびにシフトレバーのあたりに倒れてきたりして、ちょっと迷惑になることも。
またバッグから出した小物をダッシュボードの上に置く人もいますが、ここは多くのクルマでは万が一の際、エアバッグが飛び出してくるところです。命を守るはずのエアバッグとともに小物が飛んできたら、凶器になってしまう可能性もゼロではありませんので、小物の置き場所にも注意が必要です。ドライバーからもひと言、「後ろの席に置いていいよ」などの声がけや、「小物はこの収納トレイを使ってね」といった気遣いを見せてあげましょう。
5)シートのリクライニング
5番目は、シートのリクライニングを倒しすぎてしまうこと。もちろん、シートのリクライニング機能とは、乗る人にリラックスして快適に座ってもらうためのものでもありますが、同時にシートベルトの安全性を十分に発揮するために乗車姿勢を適切にするための機能、とも言えます。
クルマに乗り慣れている人は、常に「万が一」が起こりうることを頭のどこかで警戒していることが多いため、走行中にあまり深くリクライニングする人は少ないのではないでしょうか。でも慣れていない人は、食後などちょっとお腹が苦しいからと、寝そべるくらいまで倒してしまったり、シートベルトを緩めたりしてしまいがち。
でもそんな時に衝突などで強い衝撃が加わると、「サブマリン現象」が起こることがあります。これは衝撃によって体がシートベルトの拘束からすべり抜けて、前方の空間に潜ってしまう現象で、当然ながらシートベルトの効果がなくなるので大怪我を負う可能性が高くなります。最悪の場合には命を落とすことも。あくまで走行中は「万が一に備える」ことを忘れずに、リクライニングはほどほどにしたいものですね。
ということで、何度か乗車するうちに分かることでも、慣れていない人にとっては気づきにくい、「されるとイヤなこと」をピックアップしてみました。ドライバーから指摘しにくいシーンもあるかもしれませんが、人と愛車を守るためにも、ちゃんと理由を話してマナーを理解してもらいましょう。