JA全農とNTT東日本は11日、施設園芸生産者に遠隔地からリアルタイムで栽培指導するシステムの実証を今秋から始めると発表した。情報通信技術(ICT)を活用して、「コックピット」と呼ぶ指導拠点と全国の園芸施設をつなぐ。実証を通じて、大・中規模生産者を対象にした遠隔のコンサルサービスの実用化を目指す。 全農は、高度な技術が求められる施設園芸生産者向けに栽培指導を行い、収量の向上や経営改善を支援している。ただ、訪問時以外はメールや電話などのやりとりで、リアルタイムの情報共有に課題があった。新型コロナウイルス禍で移動が制限される中でも、限られた人員で効率的に生産者の要望に応えようと遠隔指導に乗り出す。 東京都調布市の「NTT中央研修センタ」内に「遠隔栽培指導センタ」(通称コックピット)を新設した。実証は栃木県、高知県、佐賀県でトマトやナス、キュウリを栽培する園芸施設「ゆめファーム全農」などを対象に行う。■生育、環境データなど集約 コックピットでは、全農の栽培技術者が、施設から届く生育データや室内温度・日射量といった環境データ、作業時間などの労務データを確認。映像と併せて、施設と生産者の状況を確かめる。必要に応じて生産者に遮光や換気などをアドバイス。摘果や誘引する箇所など具体的な作業も指導する。 生産者は現地で、スマートグラス(カメラ付き眼鏡型端末)やスマートフォンなどの機器を使い、映像や音声を共有する想定だ。 NTT東日本は、通信機器やアプリケーションの選定、通信システムの整備を担う。農業ICT分野で専門性を持つNTTアグリテクノロジーも連携する。 実証後は、コックピットを拠点とした遠隔コンサルサービスの展開を検討。全農は「栽培技術者の移動時間を削減し、指導する生産者を増やせる。生産者のためになるシステムを築き上げたい」(高度施設園芸推進室)と話す。