日本には存在しない「後席重視主義」とは

 日本では、昨今下火となっているセダン市場ですが、中国では一定数の人気を誇っています。
 
 日本、欧州などの自動車メーカーは中国専用となる車種を設定することが多く、なかでもコンパクトからミドルのセダンの人気が高いことでも有名です。
 
 そのなかで、車名の後ろに「L」の表記がある車種を各自動車メーカーはラインナップしていますが、どのような意味があるのでしょうか。

従来の「Cクラス」よりも後席居住性を大幅に向上させている新型「CクラスL」

 メルセデス・ベンツの中国法人は、2021年4月19日に開催された上海モーターショー2021にて、新型「Cクラス L」を発表しました。

【画像】中国で新型アリオン&新型シルフィ爆誕! 日本では生産終了も中国では人気? (28枚)

 このモデルは、新型Cクラスのロングホイールベース仕様となり、中国市場における「後席空間の広さ」を重視した中国専用車です。

 新型Cクラス Lは、足元のスペースが広くなっただけでなく、ラグジュアリーヘッドレストや、大きなアームレスト、広い収納スペース、USBポート、カップホルダーなどが装備されたことで後部座席での高い快適性を実現しています。

 メルセデス・ベンツでは、Cクラス以外にも「Aクラス」「Eクラス」「Sクラス」に「L」が付けられたロングホイールベース仕様をラインナップしています。

 また、日産の中国法人は2021年5月13日にインフィニティブランドのミドルセダン「Q50L」の2021年モデルを発表。このモデルも、北米などで展開されているQ50をロングホイールベース化した車種です。

 なお、中国市場においてもっとも売れているセダンといわれているのが、日産「シルフィ」です。2019年に現行モデルとなっていますが、年間40万台以上の販売台数を誇る日産の中国市場における主力車種となっています。

 そのほかの自動車メーカーでも欧州、北米、日本などの市場で展開していない後席重視の中国専用車をラインナップしており、車名の後に「L」を付けているのが一般的です。

 こうした背景には、中国における文化が関係しているといいます。

 中国では、家族や親戚を大事にするという文化が浸透しており、家族など多人数でクルマを利用する際は、機能性とデザイン性の両立がポイントとされています。

 そのため、世界最大級の自動車市場を誇る中国において、各自動車メーカーは、広い後部座席や高い快適性を有する「L」が付いた車種を展開しているのです。

 また、近年ではコンパクトからミドルのセダンでも後席を重視する傾向があるといい、既存車のボディサイズの中間に位置するセダンが人気です。

 そうした需要に対応するためにトヨタでも「アリオン」と「レビンGT」という、既存セダンの間となる新たなモデルを2020年11月に発表しました。

 このようにセダンの後席重視が続くなかで、シルフィが好調な要因について、日産の担当者は次のように説明しています。

「シルフィは、2006年に中国市場への投入以来、室内空間の快適性などを重視してきました。

 また、マーケティングによってシルフィのコアアドバンテージを強調することで、中国の家族層においてユニークな製品の位置づけを確立したことで、中国市場での激しい競争のなかで支持いただいております」

※ ※ ※

 世界中の自動車市場では、その国や地域に合わせた専用車や仕様が展開されています。

 日本においては、軽自動車が該当しますが、市場規模において世界トップクラスの中国市場には、セダンだけでなく昨今話題となっている電気自動車(EV)でも中国専用車が存在するなど、自動車市場のトレンドをけん引している存在だといえます。