アップルはAR(代替現実)やMR(混合現実)ヘッドセットを開発中だと噂されていますが、同社がiPhoneやiPadだけで立体映像を見られる特許を取得したことが明らかとなりました。

米特許商標庁(USPTO)が4月末に承認した「電子機器ディスプレイの分割画面駆動」なる特許は、平面スクリーンに3D画像を表示する機能を説明したものです。つまり噂のアップルメガネやMRヘッドセットを装着しなくともARやVR映像を楽しめるというわけです。

ただ技術的には簡単なことではなく、アップルは「この種のコンテンツをスマートフォンやタブレットなどの多機能デバイスで提供するのは、モーションブラー(被写体ぶれ)輝度のズレなど目立った効果や、視聴者に不快感や目眩を感じさせることなしには困難です」と述べています。

一般的なVRないしMRヘッドセットは、それぞれ左右の目の前に専用画面を1枚ずつおき、別々の映像を送って同期させる方式を採っています。しかしiPhoneやiPadはディスプレイが1つしかないため、本特許は見え方が異なる2つのビューを用意する「分割画面モード」を実装することで同じような効果を出すアプローチを取っています。

平面スクリーンに立体視の機能を持たせることは、過去にも前例がありました。特許文書では、偏光や色つきゴーグルなどを視聴者に掛けてもらい、同時に表示されている2つの映像を視覚的に分離して左右の目に別々の映像を見せることで3次元的な奥行きを与えられるという、懐かしの3Dメガネ方式にも言及されています。

アップルの説明する新技術も、基本的には同じく「画面を分割して左右の目に見せることで3D効果を狙う」というものです。そのためには左目には右目用の映像が、右目には左目用が見えないようにすることが必要ですが、その方法は説明されていません。

ともあれ、特許文書では1つの画面に2つの異なる画像を表示する方法が詳しく説明されています。ディスプレイにはピクセル配列があり、通常は「ピクセル配列の上から下に向かって順次ピクセルの列を操作する」とものの、そうである必然性はないとのこと。そこで「分割画面モードでは、ピクセル列を交互に操作」するという手法が述べられています。

1枚の画面での裸眼立体視としては、たとえばニンテンドー3DSが「視差バリア」により実現していました。これは左目用と右目用の画像を交互に並べて1つの画像にした上で、すき間の空いた薄い膜を液晶画面に貼って右目が左目用画像を、左目が右目用を見えないようブロックするという、要するに3Dメガネを画面に内蔵したものといえます。

それに対してアップルの「分割画面モード」は、2つの独立した画面を別々に描画するということで、かなり処理の負荷がかかり、高度なリフレッシュレートが必須になるとも思われます。

その点で、おそらくスマートフォン最高峰のSoC・A15(仮)を搭載し、Proモデルでは120Hz対応が噂されるiPhone 13(仮)世代であれば条件は満たしているはず。しかし3DSの裸眼立体視も高い人気を勝ちえたとは言い難く、果たしてユーザーの需要はあるのか疑問が残ります。

アップルのようなハイテク大手は毎週のように特許を申請・取得しており、そのうち製品化に至るものはごく一握りにすぎません。一応は研究開発を進めながらも途中で没になった特許も多いと思われますが、アップルが任天堂さえ商業的に苦戦した裸眼立体視にどう取り組むのかも見てみたいところです。

Source:USPTO

via:AppleInsider