1983年4月に開園した東京ディズニーランド(TDL)にとって、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した2021年3月期は試練の年だった。

感染対策の休園や入場者数制限が響き、隣接する東京ディズニーシー(TDS)も合わせた入園者数は前年度比74%減の756万人と大幅に落ち込み、まだTDLしかなかった1983年度の993万人さえも下回って過去最低を記録した。

これに伴って、TDLとTDSを運営するオリンタルランドの2021年3月期連結業績は、売上高が前期比63%減の1705億円となり、最終損益は541億円の赤字(前期は622億円の黒字)に沈んだ。最終赤字となったのは1996年に東証に上場してから初めてだ。

上場以来初の最終赤字

コロナ禍が「不要不急」のレジャー産業にもたらした打撃は大きかった。2020年4〜6月期は全面的に休園を強いられ、7月に再開したものの入園者数を大幅に制限しながらの営業となり、売り上げは大幅に減少。20年4月に予定していたTDLの新エリア「ニューファンタジーランド」のオープンも5か月遅れ、制限営業下では開業効果も望めなかった。

パーク周辺で直営する「ホテル事業」やモノレールの運行を含む「その他の事業」も営業赤字に落ち込んだ。

運営側も手をこまねいていたわけではない。チケット価格を改定したり、TDLでアルコール飲料の販売を一時解禁したりして、入園者1人当たりの売上高は前期の1万1606円から1万3642円に2000円以上増やした。だが、入園者の減少をカバーするまでは至らなかった。

オリエンタルランドが千葉県浦安市の埋め立て地に、ほとんどの事業を集中しているリスクは、以前から指摘されてきた。一つは自然災害に対するリスクで、実際に2011年の東日本大震災では約1か月の休園を余儀なくされた。

もう一つのリスクは、テーマパークの運営とそれに付帯することに事業が集中していることだ。事業を多角化するため、国内各地に劇場を展開する計画もかつてはあったが、いつのまにかに立ち消えになってしまった。

こうしたリスクへの備えとして、オリエンタルランドが注力してきたのが財務を手厚く積むこと。今回のコロナ禍を経ても資金繰りには余裕を残している。

「厳しい状況は続くが、必要な投資は継続する」

これからどうやって反転攻勢をしていくか。TDLとTDSではコロナ禍前に打ち出した大規模投資計画が進行している途中であり、今期(2022年3月期)には国内5か所目のディズニーホテル「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル」が開業を予定する。

2023年にはTDSを大規模に拡張して、「アナと雪の女王」をテーマとするエリアなどがある「ファンタジースプリングス」もオープンする予定だ。

TDSの拡張プロジェクトは全体で約2500億円を投じる大計画だが、今年6月29日付でオリエンタルランドの社長に就任する吉田謙次常務執行役員は、

「非常に厳しい状況は続くが、必要な投資は継続する」

と述べており、計画を進める方向に変わりはなさそうだ。

世界各国で新型コロナのワクチン接種が進んでいけば、訪日外国人の規制は徐々に緩和されることが見込まれ、2023年には「コロナ禍前の水準に戻る」と期待する旅行関係者もいる。

コロナ禍で厳しい経営環境を強いられているオリエンタルランドでも、コロナ禍後を見据えた投資をここで継続できれば、元の賑わいを取り戻す日もいずれ訪れそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)