税金も安く燃費も良好な軽スポーツに注目!

 2022年3月に生産を終了すると発表されたホンダ「S660」。実用性よりスポーツ性に特化させた軽スポーツですが、2015年の登場から7年で終了してしまうのは残念な限りです。

 そうなると気になり出すのが、いま新車で買える軽スポーツカーです。環境負荷も少なく税制面でも有利な軽自動車でスポーツ走行が楽しめるのですから、クルマ好きにとって実は非常に魅力的なジャンルといえます。

【画像】最後のS660は早くも完売! 走りが楽しい軽スポーツカーたち(36枚)

 今回は軽スポーツカーの魅力的なモデルを5台ピックアップして紹介します。

最後の特別仕様車 ホンダ「S660 モデューロX バージョンZ」

●ホンダ「S660」

 2シーターのオープンボディで、リアミッドシップにエンジンを搭載するホンダ「S660」。1991年から1996年に生産されたホンダ「ビート」と同じレイアウトながら、現代的なスポーツカーらしさを感じさせる仕上がりとあって、2015年の登場以来、注目を集めました。

 2022年3月を持って生産終了となりますが、このアナウンスとともに登場した最後の特別仕様車「モデューロX バージョンZ」に予約が殺到。特別仕様車のみならず、通常仕様もすでに完売するなど、駆け込み需要が殺到したことも話題になっています。

 S660は全長3395mm×全幅1475mm×全高1180mmのボディサイズに、自主規制枠いっぱいの64馬力を発揮する660cc直列3気筒ターボエンジンを座席後部に搭載。後輪を駆動させる、いわゆるMRが最大の特徴です。

 トランスミッションは6速MTとCVTが選べ、2シーターでかつ頭上空間がオープンになるタルガトップとなっており、走る楽しさを追求しました。

 その本気度はタイヤにも現れており、フロントが165/55R15なのに対してリアは195/45R16と径も太さも違う前後異径ホイールを採用。軽とは思えない本格仕様で、見た目もホンダのスポーツカーらしいシャープなスタイルを採用しています。

 衝突被害軽減ブレーキの搭載や騒音規制への対応、衝突安全基準などがクリアしにくいとの判断から惜しまれつつも生産終了となりましたが、今後はここまでスポーツに特化した軽自動車は登場しないかもしれません。

 お金に余裕があればぜひ購入しておきたい、魅力にあふれた軽オープンスポーツカーです。

●ダイハツ「コペン」

 ハッチバックやハイトワゴン系のボディが主流の軽自動車のなかで、S660と双璧をなす軽スポーツオープンカーがダイハツ「コペン」です。

 S660と同じ2シーターの軽スポーツカーでありながら、コペンはFFベースで扱いやすさも兼ね備えています。

 現行となる2代目は、スポーツカーらしいロングノーズ&ショートデッキな雰囲気を演出したデザインに進化して2014年に登場。

「ローブ」「エクスプレイ」「セロ」とデザインコンセプトの異なる3バリエーションを揃え、さらに、TOYOTA Gazoo Racingの知見を盛り込んだ「GRスポーツ」もラインナップして現在は4タイプを展開(GRスポーツはトヨタでも販売)。

 最大の特徴となっているのが、高い剛性と空力性能を発揮する骨格構造「D-Frame」を採用したことで、一部樹脂製のボディ外装パーツを好みに合わせて着せ替えできる「Dress-Formation」構造(外装パーツ変更は販売店でのみ交換可能)を実現しました。

 ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1280mm(エクスプレイS)、搭載されるパワーユニットは64馬力の660cc直列3気筒ターボエンジンで、トランスミッションは5速MTかCVTが選べます。

「アクティブトップ」と呼ばれる電動開閉式ルーフの採用もコペンの特徴のひとつ。約20秒でフルオープンにもなり、屋根を閉めればクーペとして楽しめます。それでいてトランクも装備され、荷物を積むことができるなど実用性も確保しました。

 コペンはダイハツのラインナップで唯一「スマートアシスト(予防安全機能)」が設定されていませんが、VSCやTRC、ブレーキオーバーライドシステム、エマージェンシーストップシグナルなど独自の安全機能を装備し、誰もが安心してスポーティな走りを楽しめる仕様になっています。

●スズキ「アルトワークス」

 軽スポーツの代名詞とも呼ばれ、スポーツ性能の高さで人気なのがスズキ「アルトワークス」です。

 軽のスタンダードであるハッチバックボディにターボエンジンを搭載し、登録車のスポーツカーに匹敵する走行性能が自慢です。

 8代目となる現行「アルト」をベースとしたアルトワークスは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm、660cc直列3気筒ターボエンジンを搭載し、FFは5速MTのみ、4WDは5速MTと5速AMTの「5AGS」が選べます。

 このクラス最強のエンジンは、64馬力と最高出力こそ一緒ですが、最大トルクは10.2kgm(100Nm)を発生。さらにFFモデルは670kgという軽量ボディで、数値だけでもその速さが期待できます。

 この軽さに加え、専用レカロシートの採用や専用設計のショートストロークシフト(5速MT)は、1速から4速までをクロスレシオ化し、5AGS車ではパドルシフトを備えており、スポーティな走りを演出。

 サスペンションも専用のチューニングが施され、一般的な市街地走行では硬いけれどスポーツ走行では頼もしさを感じさせるセッテイングとしました。

 しかも超軽量にも関わらずスズキの安全予防機能「セーフティサポート」も搭載。5AGS車には衝突被害軽減ブレーキや前後に誤発進抑制機能なども盛り込み、実用性や安全性を犠牲にすることなく徹底的に鍛え上げられたスペシャルなスポーツモデルとなっています。

新時代の軽スポーツカーから古典的なレイアウトを採用した輸入モデルも!?

●ホンダ「N-ONE」

 ホンダの軽自動車シリーズは「Nシリーズ」と呼ばれており、スーパーハイトワゴンの「N-BOX」や使いやすさを追求した「N-WGN」などが人気を博しています。

 そして、運転する楽しさを盛り込んだ新時代のスタンダードを目指したモデルとして、2012年に誕生したのが「N-ONE」です。

 2020年のフルモデルチェンジでは初代モデルの普遍的なデザインを踏襲しており、外観の変化は少ないのですが、中身が大きく進化しました。

6速MTで走りを楽しめるホンダ「N-ONE RS」

 ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1545mm(4WDは1570mm)で、搭載されるパワーユニットは、58馬力の660cc直列3気筒エンジンと、64馬力の同ターボの2種類。

 搭載されるトランスミッションはCVTですが、上級グレードにはMTモード付きパドルシフトが装備され、そしてスポーツグレード「RS」には6速MTも用意されています。

 内装ではインパネのデザインが変更され、フロントシートは初代のベンチタイプからセパレートシートに変更。

 またホンダの安全運転支援システム「ホンダセンシング」を搭載。軽スポーツであっても安全装備が充実している点はうれしい進化といえそうです。

 最高出力こそ64馬力ですが、専用のチューニングが施された装備となっているRSは、
S660譲りのクロスレシオ化された6速MTでスポーティな走行も楽しめるとあって、家族も乗せたいけど運転も楽しみたいという人におすすめしたい軽スポーツです。

●ケータハム「セブン160」

 軽自動車といえども現在の衝突安全基準や環境性能は非常に厳しいレベルで、今後はさらなる安全性やEV化が進むと予想されています。そんななか、軽の基準を軽く超越した軽スポーツカーがケータハム「セブン160」です。

 ロータスが開発し製造していた「セブン」の生産権を引き継ぎ、1960年代から基本設計を変えずに作り続け販売しているイギリスの小規模メーカーがケータハムで、このセブンにフォード製エンジンなどを自社でチューンして搭載し生き延びてきました。

 そんなケータハムが手掛ける「セブン160」はスズキのエンジンを搭載し、日本の軽規格に合わせてトレッドやタイヤを変更して全幅を1.48m以下にすることで軽登録できるようにしています。

 セブン160は、1950年代のレーシングカーそのままの構造(剛管パイプを用いたスペースフレーム構造)で、ユーザーが自分で組み立てられる「キットカー」としても販売されるなど、走ることに特化。ほかの軽スポーツカーとは次元が違う乗り物だといえます。

 ボディサイズは全長3100mm×全幅1470mm×全高1090mm、車重は490kgしかありません。スズキ製660cc直列3気筒ターボエンジンを搭載し、エンジンは軽自動車の自主規制枠を超越した80馬力まで強化されました。

 その代わり、エアコンはおろか(ヒーターは160Sに標準装備)、現在では当たり前のパワステやブレーキサーボなどはありません。

 もちろんエアバッグなどもあるはずもなく、しかもミッションは5速MTのみ。それでいて新車価格は407万円からという、乗る人を選ぶ軽スポーツカーになっています。

 最高速度こそ160km/hながら0-96km/h加速はわずか6.5秒。この数字は387馬力を誇るトヨタ「スープラ」と一緒という優れた加速力の持ち主なのです。

 なお、正規輸入モデルはすでに国内在庫限りで販売終了とアナウンスされており、後継モデルについては明らかになっていません。

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 現代のクルマは環境性能や安全性能が求められており、スポーツカーにとっては厳しさがさらに増していく可能性が高いでしょう。

 だからこそ、環境への負荷も少なく、操る楽しさを感じられる軽スポーツカーは今一度注目してほしいジャンルだといえます。