シカ注意の看板の角の向きがおかしい?

 道路標識には、さまざまな種類の「動物注意標識」がありますが、なかでもシカ注意の看板を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
 
 SNSでは、シカ注意の標識に描かれたシカの「角の向き」についてのツイートが話題になっています。

「どちらがニホンジカ?」投稿画像を組み合わせて制作。画像:Hiroki INOUE | 写真家井上浩輝(@northern_inoue)

 投稿したのはHiroki INOUE | 写真家井上浩輝(@northern_inoue)さん。

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「ずっとおかしかった『シカ注意』標識の角の向きが正しく描かれている標識見っけ」というツイートとともに、角の向きが異なるふたつの動物注意の写真が掲載されています。

 写真をよく見てみると、角の向きが異なって描かれていることが分かります

 実は日本に住む「ニホンジカ」の角は後ろ向きに伸びており、標識のように前向き(写真右側)のように生えることはありません。

 しかし、国土交通省の公式webサイトで確認できる「道路標識一覧」でも、角が前向きのシカが描かれており、日本では角が前向きのシカ注意標識が基本的な標識であることが分かります。

 井上博貴さんの写真をみた人達からは、「あ!ほんとだ!間違ってたんだ」、「同じシカでもトナカイになっちゃいますね」、「気がつかなかった」といったように、シカのようでシカではない角の向きに対する驚きの反応が寄せられています。

 看板を発見しHiroki INOUE | 写真家井上浩輝(@northern_inoue)さんは、次のように話しています。

「旧標識は、角が反対向きになっていてトナカイ風にも見えていたので、おかしいなぁと気になっていました。

 新標識は、秋から冬にかけての角になっていて精悍でかっこいいですね」

 では、なぜ日本に住んでいるシカと標識のシカで角の向きが違うのでしょうか、

 実は日本のシカ注意標識に限った話ではなく、日本の道路標識は国連で定められたものが使われています。

 過去に欧州諸国で道路標識を国際的に統一しようとする動きが生まれたことにより、1949年に標識の世界統一案が提唱されました。

 その後、1968年に国際連合道路交通会議で「道路標識及び信号に関する条約」として成立しており、日本においても1963年に国際連合道路標識を取り入れる形で道路標識や区画線、道路標示に関する命令(標識令)が改正されています。

 つまり、日本の道路標識は日本の動物だけをみて作られているのではなく、国連である程度決められた標識があるということです。

 国土交通省の担当者に聞いてみても、「道路標識は国連で定められている」という回答が得られました。

 どの国の動物を参考にした標識であるかの回答は得られませんでしたが、例えばアメリカで使われているシカ注意の看板は、日本のシカ注意の標識と左右対象であること以外はほとんど同じデザインです。

 また、南北アメリカに住む「オジロジカ」は、ニホンジカのような後ろ向きではなく、標識のように前向きに角が生えてくるため、アメリカ人にとっては違和感のない看板ということになるでしょう。

 海外の看板をそのまま日本で導入したのだとすれば、日本に住むシカと角の向きが違うことには合点がいくといえます。

 また、今回のツイートで発見された「角が後ろ向きのシカ注意標識」は、どのように作られたのでしょうか。

 前述の国土交通省の担当者は、次のように話しています。

「描かれる動物には『標準の標識』を利用するものの、各道路管理者の判断で別の標識を適宜設置する例もあります」

 実際、シカで有名な奈良県の奈良公園周辺に設置されたシカ注意の看板を見てみると、すべてニホンジカと同じ「角が後ろ向き」のデザインにリメイクされていることが分かります。

 今後も道路管理者の判断次第で、正しい向きのシカ注意標識が増えていくかもしれません。

※ ※ ※

 日本に住むシカと標識のシカの角の向きが違うのは、標識が国連で定められていることが原因でしたが、道路管理者の判断によっては独自に角の向きを直すことも可能なようです。

 ほかにも、探してみれば日本の動物と標識が異なる例があるかもしれません。