「最初の緊急事態宣言発出から1年以上がたち、ストレスがたまっている人が増えています。日々の習慣や考え方の工夫ひとつで、心穏やかに過ごせるようにもなります。なかでも、夜寝る前の過ごし方はとても大切です」

そう教えてくれたのは、明治大学教授で心理言語学者の堀田秀吾先生。

長引くコロナ禍で、特に増えているのは「セロトニン不足」に陥る人だそう。脳内の神経伝達物質のセロトニンは、喜びや快楽などの感情を調整するドーパミンや、驚きや恐怖などの感情を調節するノルアドレナリンなどの情報をコントロールして、精神を安定させる働きをする。セロトニンが不足すると、ドーパミンやノルアドレナリンのバランスが崩れ、攻撃的になったり、不安やうつ、パニック障害などの症状を引き起こす要因になってしまうという。

「セロトニンの分泌には日光を浴びる、軽い運動をする、規則正しい生活をすることなどが大切。しかし、現在は外出や運動をする機会が減少し、睡眠が不規則になったという人が急増しました。人とのコミュニケーションも不足し、テレワークによりオン・オフの切り替えもしにくいなど、うつ傾向を招くリスク要因がいくつもあるのです」(堀田先生・以下同)

そこで今回堀田先生に解説してもらったのは、おやすみ前の行動習慣によってストレスを軽減し、鬱々とした状況を打破するためのルール。いずれも科学的な研究結果に裏づけられたものだ。すぐ取り入れられる行動なので、ぜひ心がけてみよう。

■嫌な気持ちのまま寝ない

嫌なことがあってマイナス感情を抱いたまま“ふて寝”しても、ストレス解消にはつながらない。4つにグループ分けをして記憶の定着度を調査する実験では、動物の死骸や拳銃を向けられるなど嫌悪感を覚える写真を見せて、そのまま睡眠を取り、翌日確認をしたグループが記憶が残りやすいという結果が出た。(北京師範大学・リウらの研究)

嫌なことがあっても、気分転換をしてから寝ると、翌日に嫌な記憶が約60%減少するそうだ。

「“ふて寝”をしたいときほど、趣味やリラックスの時間をとり、明日に備えるようにしましょう」

■感謝の気持ちをもつ

人生や生活において、感謝の気持ちを抱いている人ほど熟睡できているという。18歳から68歳の男女401人を対象に調査を行ったところ、どんな性格の人でも日ごろから感謝の気持ちがある人ほど睡眠の質がよく、眠りの深さや効率、昼間の活動などに好影響があることが判明。感謝の気持ちが健やかな生活に欠かせないのだ。(マンチェスター大学・ウッドらの研究)

「感謝の気持ちは、健やかに生きるための活力を生み出し、よく眠れるようになるというよいサイクルを生み出します」

日ごろから感謝の気持ちをもち、睡眠の質向上につなげたい。

■規則正しい睡眠を6時間以上取る

深い眠りの「ノンレム睡眠」では情報を整理し、浅い眠りの「レム睡眠」では情報を統合するといわれている。レム睡眠は脳の調律を行い、感情を読み取る能力をはぐくむ役割もあるため、レム睡眠を十分に取るとうつ傾向から脱却しやすくもなる。レム睡眠を十分に確保するため、6〜8時間は睡眠を取るようにしよう。(カリフォルニア大学バークレー校・ウォーカーの研究)

「成長ホルモンの分泌が最大になる夜10時〜深夜2時の間の就寝が◎。日中の疲れやストレス解消、肌のターンオーバーも促進され美肌になるなど、睡眠時間を確保することはいいことずくめです」

予断を許さない新型コロナウイルスの感染拡大。“科学的に正しい”行動習慣で、蓄積しがちなストレスを乗り越えよう!

「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載