悪路走破性を意識したようなワイルド系SUVを振り返る

 1994年にトヨタ「RAV4」、1995年にホンダ「CR-V」が発売され、いわゆる「ライトクロカン」という新ジャンルのRV(レクリエーショナルビークル)が人気を博しました。

 それから25年以上を経た現在、SUV人気は世界中に波及しており、かつてのライトクロカン以上にオンロード走行を重視したクロスオーバーが主流となっています。

クロスオーバーながらオフロード性能も意識した最新SUVたち

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 一方、最新のSUVのなかには、クロスオーバーながらもオフロード走行も意識したようなモデルも増加傾向にあります。

 そこで、悪路走破性が高そうな最新のワイルド系SUVを、5車種ピックアップして紹介します。

●マツダ「CX-30」

EV化だけでなくワイルドさも強調された「CX-30 EV」

 現在、マツダの主力車となっているのが「CXシリーズ」です。コンパクトモデルの「CX-3」からフラッグシップの「CX-8」まで多彩なSUVラインナップを構成しています。

 なかでも、スタイリッシュなデザインが高く評価されているクロスオーバーが、2019年に発売された「CX-30」です。

 CX-30はセグメントとしてはCX-3とCX-5の間に位置するモデルで、グローバルで展開されており、海外でも好調なセールスを記録しています。

 そして、2021年4月19日から中国で開催されている「上海モーターショー2021」では、新型の電気自動車として「CX-30 EV」が出展されました。

 文字どおりCX-30をベースにしたEVですがボディはノーマルよりもリフトアップされており、バンパーのラインから下の部分や前後フェンダーのデザインも異なります。

 また、前後にアンダーガード状のパーツが追加され、頑丈そうなサイドステップが装着されており、都会的な印象のCX-30がワイルドに変貌。

 詳細なスペックは明らかになっていませんが、中国市場では2021年末に発売を予定しており、日本での販売も期待できそうです。

●スバル「アウトバック ウィルダネス」

往年の「レオーネ」を彷彿とさせる「アウトバック ウィルダネス」

 スバル2代目「レガシィ」をベースにSUVに仕立てたモデル「アウトバック」は、1994年に北米市場向けとして開発されました。

 現在、日本では「レガシィ アウトバック」で販売されていますが、北米ではアウトバックの名で歴代モデルとも高い人気を誇り、スバルのブランドイメージを確立した立役者といえます。

 このアウトバックの2022年モデルとして加わったのが「アウトバック ウィルダネス」です。

 アウトバック ウィルダネスの外観は、最低地上高が標準モデルの8.7インチ(約220mm)から9.5インチ(約240mm)まで高められており、前後バンパー、フロントグリル、大型化されたホイールアーチのプロテクター、フロントスキッドプレート、六角形のLEDフォグランプなど、専用のアイテムが装着されワイルドさを演出。

 内装ではブラックとグレーのダークトーンで全体をコーディネートしつつ、随所にイエローの差し色をあしらうことでアウトドアギアのイメージを強調しています。

 エンジンは263馬力(米規格から仏馬力に換算)を発揮する2.4リッター水平対向4気筒直噴ターボを搭載し、トランスミッションはCVTの「リニアトロニック」のみとされ駆動方式はAWD、標準モデルに対し極低速時のトラクション性能が強化されました。

 アウトバック ウィルダネスは、アメリカではすでに発売されていますが、日本では残念ながら今のところ販売される予定は無いようです。

●トヨタ「RAV4アドベンチャー オフロードパッケージ」

都会的な印象からオフロード車へと変貌した「RAV4アドベンチャー オフロードパッケージ」

 現行モデルのトヨタ「RAV4」は5代目にあたり、4代目は日本で販売されませんでしたが、2019年4月に国内市場で復活を遂げ、発売以来好調なセールスを続けています。

 外観は力強さと洗練された都会的な雰囲気を融合したデザインで、フロントフェイスはオフロードを想起させる「アドベンチャー」とより都会的な「G・Xグレード」の2種類を設定。

 パワーユニットは最高出力171馬力の2リッター直列4気筒エンジン、もしくはシステム出力218馬力(2WD)を誇る2.5リッター直列4気筒エンジン+モーターのハイブリッドで、2020年6月にはプラグインハイブリッドの「RAV4 PHV」がラインナップされました。

 力強さと洗練された都会的な雰囲気を融合したデザインのSUVで、2019年4月の発売以来好調なセールスを続けています。

 このRAV4アドベンチャーをベースにオフロード性能を協会した特別仕様車「アドベンチャー オフロードパッケージ」が2020年10月に登場。

 専用サスペンションを採用したことで最低地上高をベース車より10mmアップの210mmとし、悪路走破性を高め、ブリッジ型ルーフレールやマットブラック塗装の18インチ専用アルミホイール、オールテレインタイヤを装着。さらに「OFFROAD package」エンブレムなどを特別装備しています。

 内装は、レッドステッチを施した専用合成皮革シートやインストルメントパネル、ドアトリムショルダーを採用して、随所に赤の差し色が施されるなど、ポップな印象です。

 アドベンチャー オフロードパッケージの価格(消費税込、以下同様)は、346万円です。

コンパクトなSUVも意外とワイルド?

●ホンダ「フィット クロスター」

SUV風味なコンパクトカーのなかでも意外と本格派の「フィット クロスター」

 2020年2月に4代目が登場したホンダ「フィット」は、コンパクトカーとしてのコンセプトは歴代を踏襲しながらも、さらに進化したハイブリッドシステム「e:HEV」が設定され、最新の先進安全運転支援システム「Honda SENSING」が標準装備されるなど、次世代コンパクトカーに求められる性能が充実しました。

 この4代目フィットではライフスタイルに合わせた5グレードが展開され、なかでもSUVのイメージで仕立てられたのが「フィット クロスター」です。

 外観のデザインは、他のモデルがグリルレスなのに対しクロスターにはフロントグリルが設けられ、専用デザインの前後バンパー、サイドシルガーニッシュやホイールアーチプロテクターなどの専用樹脂パーツを装着。

 また、専用の16インチホイールが装着され、最低地上高が標準より+25mmの160mmとするなど多少の悪路ならば走破できる実力があります。

 内装にも機能性の高い撥水素材を採用しており、アウトドアレジャーやマリンスポーツにも適した仕様です。

 パワーユニットは1.5リッター直列4気筒エンジンに2個のモーターを組み合わせたハイブリッドと、1.3リッター直列4気筒エンジンを設定。

 駆動方式も生活に密着したコンパクトカーとあって、クロスターのみならず全グレードでFFと4WDが用意されています。

 近年はコンパクトカーをSUV風にカスタマイズしたモデルが散見されますが、フィット クロスターは意外と実力派といえます。

 価格は193万8200円からです。

●フィアット「パンダクロス」

見た目だけでなく実際に悪路走破性能が高い「パンダクロス」

 1980年にフィアットの新時代の大衆車として初代「パンダ」が発売されました。巨匠ジウジアーロによるデザインで極力コストダウンが図られた内外装は、シンプルながらも安っぽさが感じられない秀逸な造形で大ヒットを記録。

 現行モデルのパンダは3代目で、日本では2013年に発売されました。4WDの「パンダ4×4」が遅れてラインナップされましたが、さらにパンダ4×4をベースに本格SUVに仕立てたモデルが「パンダクロス」です。

 パンダクロスの外観はパンダ4×4から大きく変更され、とくにフロントフェイスはクロスカントリー車を彷彿とさせるデザインに一新。

 アンダーガードを模した形状の前後バンパーや、独自のデザインとなっているヘッドライトまわり、最低地上高のアップなど、よりワイルドなイメージに仕立てられています。

 ボディサイズは全長3705mm×全幅1665mm×全高1630mmとコンパクトで、日本の道路事情にも最適な5ナンバーサイズです。

 エンジンは85馬力を発揮する900cc直列2気筒ターボ「ツインエア」を搭載し、トランスミッションは6速MTが組み合わされ、フルタイム4WDシステムにはセンターデフに電子式デフロックを採用するなど、本格的な悪路走破性能を実現しています。

 パンダクロスはもともと日本に正規輸入されていませんでしたが、2020年10月に150台限定で発売。さらに、2021年4月には第2弾として215台が限定販売されました。価格は263万円です。

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 SUV人気はまだまだ続きそうな勢いですが、それを裏付けるように前述の上海モーターショー2021では、世界中のメーカーからSUVが出展されました。

 さらに、それらSUVのほとんどがEVもしくはハイブリッド車で、完全に中国市場をターゲットとしています。

 かつて、RVブームの頃に流行したクロカン車は燃費が悪いことや、高速での走行安定性が犠牲になっていましたが、現在のSUVは優れた環境性能と高速性能を有しているため、いまのところ欠点らしいところもなく、さらに販路が拡大するでしょう。