中山てつや氏は著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』のなかで、職場における諸問題について語っています。当記事では、中山氏のキャリアコンサルティングとしての実務経験をもとに、日本の企業における問題点を考察していきます。

画期的な制度として注目を集めた「成果主義

成果主義という言葉が語られるようになってから、すでにかなりの年月が経過しています。

当初は、多方面から注目され、画期的な制度として取り上げられました。バブルが崩壊して、未曾有の不況に突入した頃でしたので、各企業とも、何かにすがるかのごとく、「年功序列」に見切りをつけて、「新しい人事評価の仕組み」に移行していきました。

その頃、「成果主義」なるものを、転職先で初めて経験します。

転職した会社では、新しい人事制度として、成果主義に基づいた仕組みを構築したばかりで、実際に運用するのは初めてでした。制度は、多岐にわたる、複雑な要素で構成されていたのですが、大雑把にいうと、「個人の成果と、会社の業績に応じて、年俸が決まる」という内容でした。

「成果主義」へのシフトチェンジでどう変わった?(画像はイメージです/PIXTA)

年俸が前年を下回る社員が続出…一体なぜなのか?

そうこうしているうちに初年度が終わり、新制度に基づいて、「人事評価」が行われることになったのです。その年の会社の業績は良く、利益も予定通り確保しました。

間もなくして、各人の人事評価が、新しい報酬制度のもとで実施されました。すると、年俸が前年を下回る社員が続出してしまいます。

最大の理由は、成果に対する評価基準が曖昧で、上司によって判断がバラバラになってしまったことにあります。後で聞いた話ですが、中には「相性の悪さ」が、露骨に反映されたケースもあったようです。

もっと大きな誤算は、従業員の反乱です。

「昨年にも増して頑張って、成果を出して、会社も利益が出たにもかかわらず、我々の報酬が下がるのはどうしてだ。納得できない!」

表立ってではありませんでしたが、主力メンバーからの強烈な突き上げを食らって、結局「前年並みの給与を支給することになった」と記憶しています。

管理職の基本給が統一され、年配管理職の年収が大幅減

日系大手企業で働く知人の話によると、やはり、この頃に人事制度の見直しがあります。

それまで、ばらつきのあった管理職の基本給が統一された結果、年配管理職の年収が、大きく減ってしまいました。この仕組みは、後に、大量定年を迎える団塊世代の、人件費削減を兼ねた制度としても、うまく機能したようです。

以前在籍した会社の仲間からも、同様の話が舞い込んできます。当時の会社も、同じ頃成果主義に移行した結果、役職者の年収が、いきなり大幅に下がったのです。

新しい仕組みの詳細は聞いていないので、はっきりしたことは言えませんが、新聞などで知る限り、会社の業績自体は、売上、利益ともに極めて順調だったので、おそらくここでも、管理職の基本給見直しが影響したのではないかと思われます。

同時に、上司による「好き嫌い」評価に、拍車がかかった可能性も否定できません。

「成果主義は日本の風土に合わない」は本当なのか

以前、新聞でこんな記事を目にしました。

「1990年代後半から2000年代にかけて、多くの日本企業が成果主義の導入を検討し、そして実行に移しました。しかし、成果主義の導入が期待した成果を生まなかった、あるいは逆に士気と生産性を低下させたと評価される事例が相次ぎました。そのため、成果主義は日本の風土に合わないと主張する声もありました」※注

記事は続きます。

「本当にそうでしょうか。〈中略〉主な問題は、現代の多くの職業については、商人の生み出す利益であるとか、戦いにおける勝利とそこで勝ち取った戦国武将の首の数のような客観的な成果指標がなく、成果全体が正確に測れないことでしょう。

そのため、成果指標で測れないものが無視され、例えば同僚や他部署と協力・連携するということが阻害されたりします。また、成果を良く見せるために、目標設定や販売計上時期を操作するということも起こり得ます。

成果指標が主観的であれば、経営側の契約順守姿勢も弱まり、会社の人件費抑制のために、評価を合理的な理由もなく引き下げるという行動にもつながります」

成果主義の最大の問題は、「個人としての成果」が測りにくいことです。また、企業経営者が「人件費抑制の手段」として、悪用する場合も考えられます。

人事制度は、従来の年功序列型から脱却して、成果主義に移行するという、歴史的な変遷を経て今日に至っています。その過程で発生する、様々な問題を解決しながら、改善を図ってきました。

しかし、成果主義の抱える「本質的な矛盾」が顕在化する中で、多くの日系企業は、再び大きな「転換期」を迎えているような気がしてなりません。

※注…やさしい経済学第10章「良い組織・良い人事」東京大学教授・大湾秀雄、日本経済新聞 2014年4月16日

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中山てつや

1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。