現行フィットよりも進化したe:HEVを搭載

 2021年2月18日に世界初公開されたホンダのコンパクトSUV、新型ヴェゼル。その日本仕様が4月22日に正式デビューし、詳細が明らかになった。

 シンプルかつ上質なデザインに一新されたエクステリアは、車格とともにボディサイズもアップしたように感じさせるが、実際の寸法は全長×全幅×全高=4330×1790×1580(16インチタイヤ装着車)or1590(18インチタイヤ装着車)mm、ホイールベース2610mmとほぼ変わらない。

 なお、初代は標準仕様が全長×全幅×全高=4330×1770×1605mm、RS系グレードが4340×1790×1605mmで、ホイールベースはともに2610mm。新型の全長は初代の標準仕様、全幅はRS系と同値になり、全高は25〜35mm下がっているため、むしろダウンサイジングされたというのが正解だった。なお車重は、初代の1180〜1390kgに対し、新型は1250〜1450kgと70kg前後増加している。

 また最低地上高も、新型の16インチタイヤ装着車は初代と変わらず、FF車が185mm、4WD車は170mm。18インチ車はFF車が195mm、4WD車が180mmへと、初代よりも上がっているのだ。

 となると気になってくるのが室内の広さだが、カタログ上の客室内寸法は初代が長さ×幅×高さ=1930×1485×1265mmなのに対し、新型は2010×1445×1225(パノラマルーフ装着車は1240mm)と、幅と高さが40mm減る一方、長さは80mm拡大している。

 そして後席の取り付け位置が後ろに下げられたことで、そのレッグルームとニールームは35mm拡大。背もたれも角度が2度起こされたうえにクッションの厚みも増しているため、後席の快適性はむしろアップしたと言えるだろう。

 その分荷室は奥行きが減り、さらに上側が深く傾斜したバックドア形状によって容積も減っていると推測されるが、フィット譲りのセンタータンクレイアウトと6:4分割式後席ダイブダウン&チップアップ機構は新型にも踏襲されているため、その高い積載能力をフルに使い切る場面はごく限られるはずだ。

 グレード構成はガソリンエンジンを搭載する「G」と、2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載するベーシックタイプの「e:HEV X」、中間モデルの「e:HEV Z」、2トーンボディカラーとプライムスムース×ファブリックの専用コンビシートを採用する最上級グレード「e:HEV PLaY」の4種類で、「e:HEV PLaY」以外はFFのほか4WDも設定するのは既報の通り。

 今回そのガソリンエンジンとe:HEVの詳細がようやく明らかになった。前者は初代のL15B型1.5リッター直列4気筒直噴DOHC i-VTECから、新開発のL15Z型1.5リッター直列4気筒ポート噴射DOHC i-VTECに換装。最高出力は129馬力/6600rpmから118馬力/6600rpm、最大トルクは153Nm/4600rpmから142Nm/4300rpmへとダウンしたが、静粛性が向上しているという。

 また、組み合わされるCVTは、ギヤが4.992から5.436にローレシオ化されたほか、コーナー進入手前や下り坂のブレーキングで自動的にシフトダウンする「ブレーキ操作ステップダウンシフト制御」が導入された。

 後者は新型フィットと同様に、7速DCT内蔵1モーター式の「スポーツハイブリッドi-DCD」から「e:HEV」へ全面的に変更されたが、その中身は新型フィットより一段と進化している。

 駆動用リチウムイオンバッテリーを内蔵するIPU(インテリジェントパワーユニット)とPCU(パワーコントロールユニット)を別体化したうえで、IPUを48セルから60セルに容量アップ。PCUをエンジンルームへ移設することで、荷室容量を犠牲にせずモーター走行領域を拡大した。

 LEC型1.5リッター直列4気筒アトキンソンサイクルDOHC i-VTECエンジンは、フィット用LEB型の98馬力/5600〜6400rpmから106馬力/6000〜6400rpmにパワーアップ。H5型2モーターも、ギヤを3.423から3.909にローレシオ化しつつ、最高出力を109馬力/3500〜8000rpmから131馬力/4000〜8000rpmへと向上している。

 さらに、ECON・NORMAL・SPORTからなる3つのドライブモードに加え、回生ブレーキの効きをパドルシフトで4段階から選択できる「減速セレクター」を実装。e:HEVの4WD車はさらに、リヤデフのトルク容量を550Nmにまで拡大して後輪の駆動力を高めているのも、見逃せないポイントだろう。

ボディにも大きく手が加えられている

 ハンドリングや乗り心地に直結するボディ・シャシーの改良点も少なくない。980MPa級以上の超高張力鋼板の適用比率を、初代の9%に対し新型では15%に拡大して軽量化に配慮。そのうえで、サスペンションがより滑らかに動くよう、サスペンション取付部周辺とリヤ開口部の剛性を高めている。

 また、ダッシュロアーパネルと呼ばれるエンジンルームとキャビンとの隔壁の板厚を先代の0.8mmから1.4mmにアップしたほか、ルーフやフロア、ガラスやドア開口部まわりに補強材や制振材を追加、固有振動数をチューニングするなど、ノイズ・振動の低減策が数多く盛り込まれた。

 シャシーに関しては、コラムシャフトをボールスライダー式に変更するなどステアリング各所の剛性アップを図りつつ、前後サスペンションのスプリングレートを約10%ダウン。さらにフロントのストラット式サスペンションは、横力キャンセルスプリングを採用するなど、フリクションを細部にわたり低減している。リヤのトーションビーム式サスペンションも、ダンパーのストロークを拡大しながら、横方向の動きを抑えるべくインナーシャフトにフランジを入れた液封コンプライアンスブッシュを採用して、路面の凹凸をしなやかにいなすセッティングとしている。

 そして気になる価格は、下記の通り。

G(FF/4WD)…227万9200円/249万9200円
e:HEV X(FF/4WD)…265万8700円/287万8700円
e:HEV Z(FF/4WD)…289万8500円/311万8500円
e:HEV PLaY(FF)…329万8900円

 初代にも存在したほぼ同じ名称のグレード(G、ハイブリッドX、ハイブリッドZ)と比較すると、全体的に15万円前後の価格アップとなっているが、それらよりも遥かに高いプライスタグを提げる新たな最上級グレード「e:HEV PLaY」が圧倒的一番人気。しかしこの「e:HEV PLaY」のみ4WD車が設定されていないため、「一番いいやつ全部付き」が欲しいならば、慌てずに4WD車が追加されることを願って待つのも一手かもしれない。