いよいよヴェルファイアがワングレードに絞られる!?

 トヨタの上級ミニバンとして、「アルファード/ヴェルファイア」があります。この2車種は基本部分を共通化した姉妹車ですが、ヴェルファイアが選択肢を大幅に見直すことになるようです。

ヘッドライトが金に輝くトヨタ「ヴェルファイア Z ゴールデンアイズ」

 トヨタの販売店は次のように述べています。

【画像】 超豪華すぎる! 1500万円の「アルファード」のインテリア(36枚)

「アルファードとヴェルファイアは、2021年4月28日に、オートライト(ライトを自動的に点消灯させる機能)の装着など、法規に対応する改良を実施します。このときにヴェルファイアのバリエーションを大幅に整理します。

 従来はアルファードと同じくグレードを豊富に用意していましたが、改良後のヴェルファイアは、特別仕様車の『Zゴールデンアイズ』のみです。

 一般的なグレードは廃止されるので、ベーシックな『X』や最上級の『エグゼクティブラウンジ』が欲しいお客さまは、今後はアルファードから選んでいただくことになります」

 ヴェルファイアが特別仕様車を残してグレードを廃止する背景には、アルファードとヴェルファイアの大幅な販売格差があります。

 2021年1月から3月の登録台数を平均すると、アルファードは1か月平均で1万1368台ですが、ヴェルファイアは1061台に留まります。ヴェルファイアはアルファードの9%と売れ行きが大幅に下がったので、グレードを廃止するわけです。

 ちなみに2015年にアルファードとヴェルファイアが現行モデルにフルモデルチェンジされたときの登録台数は、ヴェルファイアのほうが多かったです。

 発売の翌年となる2016年の登録台数も、アルファードが1か月平均で3697台、ヴェルファイアは4515台でした。

 アルファードを扱うトヨペット店は全国に約1000店舗、ヴェルファイアのネッツ店は約1500店舗なので、販売規模の違いも影響していました。

 ところが2018年1月に実施されたマイナーチェンジで、両車の販売順序が変わります。両車ともフロントマスクを変更しましたが、アルファードでは存在感の強いデザインになり、人気を高めています。

 2018年の登録台数はアルファードが1か月平均で4901台、ヴェルファイアは3054台です。その後もアルファードが上まわりました。

 そして2020年5月には、東京地区に続いて、全国のトヨタの販売店でトヨタの全車を買えるようになりました。

 従来はアルファードとヴェルファイアを販売していなかったトヨタ店やカローラ店でもアルファードが好調に売れ始めた結果、アルファードとヴェルファイアに大きな販売格差が生まれています。

ヴェルファイアからアルファードへ乗り換えるユーザーも

 以前ヴェルファイアを専門に扱って、大量に販売していたネッツ店からは次のような話が聞かれました。

「最近ではヴェルファイアからアルファードに乗り替えるお客さまが増えています。中高年齢層のお客さまからは、ヴェルファイアは若い人向けのデザインだという意見を聞きます。

 いまは若いお客さまが少ないので、アルファードが好調に売れています。今後ヴェルファイアは、特別仕様車を除くと整理されるので、いつかは車種自体が廃止されるかもしれません」

トヨタ「アルファード」

 一方、以前からアルファードを販売してきたトヨペット店は次のようにコメントしました。

「ヴェルファイアはスポーティで精悍な印象が強く、ブラックのボディカラーが似合います。これも魅力的ですが、多くのお客さまが高級車に求めるのはやはりホワイトパールでしょう。

 このボディカラーがピッタリなのは、豪華さを併せ持つアルファードのフロントマスクです。

 とくにアルファードには『ホワイトパールクリスタルシャイン』に加え、ヴェルファイアには用意されていない『ラグジュアリーホワイトパールクリスタルシャインガラスフレーク』も設定しています」

 アルファードのホワイトパール系のボディカラーが人気となるには理由があるようです。前出のトヨペット店のスタッフはこのようにいいます。

「アルファード 2.5S・Cパッケージのホワイトパールは、中古車市場での人気もきわめて高いです。登録して2年程度なら値落ちがきわめて小さく、2年半ほど使われた車両を420万円で下取りしました」

 アルファード S・Cパッケージは、2.5リッターエンジンを搭載してエグゼクティブパワーシートなどを備える上級グレードです。価格は466万4000円でカーナビなどは標準装着されています。

 アルファードのホワイトパール系のボディカラーはどちらもオプション価格が3万3000円です。

 このボディカラーを選び、多少のオプションを加えると車両価格は490万円前後ですが、2年半使って420万円なら値落ちはかなり少ないといえます。

 販売店では「このように高値で売却できるという話をすると、大半のお客さまがアルファードのホワイトパール系の色を選びます」と説明します。人気がさらなる高人気を呼んでいるわけです。

 アルファードが人気車になるのは好ましいですが、ヴェルファイアは可衰想な気もします。

2008年に2代目アルファードの姉妹車として登場したときは、大柄なボディと睨みの利いたフロントマスクで一躍人気車になりました。それが結局はアルファードに負けてしまったのです。

 全店で全車を扱う販売体制はユーザーにとっては便利ですが、好調に売れる車種はますます台数を伸ばし、そうでない車種は落ち込みます。

 日産では全店が全車を扱う体制になり、「デイズ」「ルークス」「ノート」「セレナ」以外はほとんど売れなくなりました。ホンダも「N-BOX」「N-WGN」「フィット」「フリード」以外は低調です。

 ヴェルファイアがアルファードの9%しか売れなくなった現状を含めて、全店が全車を扱う販売体制は、残酷な結果を招きます。トヨタは以前から車種を削減する方針を打ち出しており、この販売格差も想定通りなのでしょう。

 そして先ほど販売店のコメントにあった通り、仮にヴェルファイアが廃止されると、売れ行きが低調だったとはいえユーザーの選択肢が減ります。

 全店で全車を買えるから便利では済まされません。ヴェルファイアとアルファードの販売格差は、ユーザーの選択肢が減っていく今の国内販売を反映しているように思います。