連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。今回は「この1年間で利用者が増加するパーソナルジム」について。

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 パーソナルトレーニングに関して、最も多く受けるのは、「いくらぐらいかかるものですか?」という質問です。フィットネスジムに行ったことはあっても、パーソナルジムには行ったことがない、目にしたこともないという方のほうが圧倒的に多いため、「まったく見当がつかない」とよく言われます。

 私がこれまでみてきた経験から言うと、現在、首都圏のパーソナルトレーナーの平均相場は1セッション5〜6000円(45〜60分)程度です。もちろん、価格帯にはトレーナーの経験値によって幅があり、新人や研修期間のトレーナーで2〜4000円程度、一流といわれるトレーナーで1万円超。トップトレーナーになると3万円程度が目安となります。

 パーソナルトレーナーは以前、アスリートや俳優、あるいは富裕層など、特定の方たちがつけるイメージが強かったと思います。しかし、現在は一般の会社員や主婦の方の利用も増加。特にこの1年間で、利用者がグッと増えています。

 この現象が起きた理由はいくつかあります。

 一つは、感染症対策。昨年から続くコロナ禍により、大勢が利用するフィットネスクラブよりも1対1でトレーニングを実施できる環境を求める人が増えています。

 次に、テレワークの浸透、あるいは外出の制限によって、かなりの体力低下や体形の変化があり、自己流のトレーニングや運動ではいよいよ追いつかなくなった、と感じる方が増えているため。

 そして、月会費で比較・検討し、手頃な価格の総合フィットネスクラブや24時間のフィットネスジムに入会したものの、結局行かなくなる、または自己流のトレーニングでは効果が出ないと感じているため。

 以上が主たる要因です。

最近、増えているのは「ハイブリッド式」

 一般的な総合フィットネスクラブや24時間ジムに共通する利点は、月数千円から1万円程度で、何回でも利用できることです。ところが多くの方は、例えば有酸素運動や筋トレの順番、重さやセット数の設定など、自分の体調や体形、目的に合ったトレーニング法がわからない。結局、自己流ではトレーニングの成果を感じられず、モチベーションも下がり、だんだん、通わなくなってしまいます。

 ならば、安価でも効果が得られないより、お金を出してでも専門家に任せて取り組むほうがいい。こういった考え方が、ジム通いが続かなかった方たちの間で広がっているようです。

 さらに、今はカスタマイズの時代。カフェ・ラテひとつとっても、エスプレッソのショット数や、ローファット、ノンファットのミルクを選べるなど、カスタマイズをするのは当たり前です。そういった感覚がトレーニング界にも波及し、「カスタマイズされたメニューが欲しい」というニーズが高まることに、つながっているのでしょう。

 とはいえ、「効果は期待できそうだけど、高すぎるから無理」と感じ、パーソナルトレーニングを諦める方は多いと思います。しかし、必ずしも頻繁に……例えば週1ペースなどで、パーソナルトレーニングを行う必要はありません。最近、増えているのは、パーソナルトレーナーとフィットネスジムを併用する「ハイブリッド式」です。

 ハイブリッド式とは、時々パーソナルトレーナーにトレーニングをみてもらったり、メニューを作成してもらい、普段は自分自身で、通いやすいジムに行って、メニューを実施するスタイルです。

 私のクライアントにも、普段は地元のジムに通い、月1回私の元でトレーニングをされる地方住まいの方や、2、3か月に1回のペースで、トレーニングを受けてメニューの見直しをする高校生がいます。また、フィジークなどのボディコンテストに出場する方にも、厳しいトレーニングで自分を追い込みたいときだけパーソナルトレーニングをお願いする、という方はいます。以上のように、パーソナルトレーニングを受けるペースやお願いする内容は様々。今は誰でも、自分に合った使い方ができるのです。

 ただ、パーソナルトレーナーの立場から言うと、最初の1か月だけは週1のペースで通っていただくと、よりカスタマイズされたメニューが立てやすくなります。

 やはり、初めてお会いした方に対し、1回のセッションだけで最適なメニューを作成することは、非常に難しい。結局は、雑誌でよく見るようなまずまず外さないオーソドックスな種目の組み合わせ、もしくは、「結果が出るかは一か八かだが、やってみよう」というメニューになり、パーソナルトレーニングの良さを生かしきれません。また、どのようなフォームで動作するのか、どの程度の負荷をかけると体がどのように反応するのかの確認ができないまま、しばらく放ったらかしになるので、トレーナーとしても非常に不安になります。

最も大事なことは自分との相性

 おすすめは、最初の1か月は週1のペースで通い、筋力、持久力、動きの癖などから、自分の体をしっかり見てもらったうえで、メニューを作ってもらう。その後は、普段は通いやすいジムでメニューを続け、2、3か月に1回、パーソナルトレーナーのセッションを受ける、というプラン。普段、自分でトレーニングできれば、だいたい3か月に一度、メニューを組み直せばOKです。

 さて、パーソナルトレーニングジムの選び方ですが、長続きしない傾向のある方には、週1、2回、必ず通うことを条件にするジムは最適です。しかし、金銭的に続かなくなる場合もあります。体作りの要望に応えるだけでなく、クライアントの財布事情も考え、できるだけ続けられるペースを考えてくれるなど、自分の要望に対して、臨機応変に対応してくれるジムを探しましょう。

 そして最も大事なのは、自分との相性です。

 パーソナルトレーナーも人間。自分に合う、合わないはあります。ですから、持っている資格の種類や数が多ければいいということではありません。「お願いしたい」と思うトレーナーを見つけたら、まずはトレーニングを体験し、話をして、その人が自分の悩みや希望に対して親身になってくれるかどうかをみてください。「この人合うな」と感じる人を見つけていただくことが、一番重要ですよ。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。