ブレーキが鳴るのは当たり前?

 クルマの運転中、ブレーキを踏み込むことで聞こえる「キィー」というブレーキ鳴きの金属音。なぜこのような異音が発生するのでしょうか。

なぜブレーキから「キー」という異音が発生? 実は鳴るのが当たり前だった?

 走行中に使用するフットブレーキには、ディスクブレーキとドラムブレーキのふたつのタイプがあります。

【画像】無残な姿! バーストしたタイヤのエグい姿を見る(15枚)

 ディスクブレーキは、タイヤと共に回転するディスクローターにブレーキパッドを押さえつけることで、減速させる仕組みです。

 一方のドラムブレーキは、タイヤと共に回転するブレーキドラムの内側にブレーキシューという摩耗材を押し付けることで減速させています。

 いずれも摩擦を生じさせることで、クルマの運動エネルギーを熱エネルギーに変換して放出することでクルマを止める仕組みです。

 摩擦でクルマを止めるので、厳密には音の発生を避けられませんが、そのなかでも不快な音が発生することをブレーキの「鳴き」と呼びます。

 とくにディスクブレーキの鳴きでは甲高い「キー」という鳴きが発生しますが、ブレーキが鳴く原因とはどのようなものなのでしょうか。

 ブレーキパーツを専門に開発、販売する株式会社ディクセルは次のように話しています。

「ブレーキが作動して、ブレーキパッドがローターに接触すると、摩擦によって振動し、音が発生します。

 通常の場合、発生した音はパッドやローターの柔らかさ(減衰特性)や、パッドとピストンの間にあるシムなどによって吸収され聞こえなくなります。

 しかし、その吸収がうまくいかなかったり、吸収しきれない振動が発生した場合に、耳障りな音となってしまうのです」

 さらに、同社によると吸収しきれない振動が発生するケースとして、ブレーキパッドとローターが均一に接触していない場合があるといいます。

 ブレーキを踏むと、ブレーキピストンがパッドを押し、ローターに接触しますが、パッドやローターに傷ができた場合などで均一に圧力がかからずに偏ってしまうと異音が発生するようです。

 なお、ブレーキからの不快音のなかでも、ブレーキパッドの残量が少ないことを警告する「パッドウェアインジケーター」が鳴っている場合には、ブレーキパッドの交換が必要なので、すぐにディーラーや整備工場に相談しましょう。

欧州車はブレーキが鳴きやすい?

 ブレーキが摩擦を利用して動作するものである以上、鳴きとは切っても切れない関係ですが、欧州車など輸入車のほうが鳴きの発生が多いといいます。

 これに関して、ポルシェは「Brake Squeal Explained(ブレーキ鳴きの説明)」という動画を制作しています。

 この動画でポルシェは、「ブレーキの鳴きは故障やその予兆ではなく、強力なブレーキシステムで性能と安全を保つためには避けられない」と説明。

 欧州車のブレーキ鳴きについて、前出のディクセルの担当者は、次のように話します。

「欧州車、とくにドイツ車はアウトバーンを高速で走行するために、ブレーキの性能も高く設計されています。

 ブレーキパッドでローターを削ることでストッピングパワーを得るという考え方で、パッドの特性もそのようにセッティングされています。

 国産車はどちらかというと、ローターが消耗品であるという考え方というよりも、ブレーキパッドのみの交換で対応しているケースが多いです」

 しかし、近年人気の軽スーパーハイトワゴンなどは、重量増によるブレーキへの負荷増大を、ローターを削るような設定のパッドを使用することで、対策しているケースも多いとのことです。

輸入車のホイールは、国産車と比べてブレーキダストによりホイールが黒く汚れやすい

 日本ではブレーキパットのみを交換することが主流となっていますが、前出の担当者は「欧州車はブレーキパッドとローターの同時交換が前提になっていますが、ブレーキの性能としては、それがベストで、国産車でも本来は同時に交換することをおすすめします」と説明しています。

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 ブレーキの鳴きは直接故障を意味するものではありませんが、事故防止のためにも、いつもと様子が違うと感じたら、専門家に点検してもらうのが安心といえるでしょう。