昨今、40代以上のひきこもりが若年層よりも多いことが明らかになり、衝撃が走っている。それにより、80代の親が50代の子供を養う「8050問題」が勃発。しかも中年から突然ひきこもりになってしまう人が半数を超え、高年齢化が進んでいるひきこもりたちに今、何が起きているのか。ひきこもりと関わりながら仕事をする人々に話を聞いた。

◆ひきこもり当事者の経験から同じ人の支援で社会と接する

 青森県在住の下山洋雄さん(40歳)は、自身の経験を当事者向けに発信し、社会復帰に繋げる活動を行っている。

 下山さんは幼少時から集団行動が苦手だった上、父親恐怖症や小学校時代に教師から受けた体罰のトラウマなどが重なり、中学1年から不登校のひきこもりになってしまった。現在も実家に暮らしながら有償相談や、当事者活動を精力的に行っている。

 きっかけは、心のよりどころだった「いのちの電話」。スタッフから「不登校やひきこもりの経験は財産だから大切にして、同じような人たちやその家族の寄り添い人になってみてはどうか」と言われた。ひきこもり経験を肯定されたことが力となり、下山さんは断続的に社会復帰ができるようになった。

◆「ひきこもり経験も生きがいに繋がっていくのだと捉えてほしい」

 そして35歳から、本格的に自身の体験を行政に向けて発信開始。オンライン当事者会の開催や「ひき出るラジオ」のパーソナリティとして、ひきこもりの人々の悩みに寄り添い続けている。

「私自身もまだまだ心が揺れ動いてはいるのですが、逆にそれが相手に親近感を与えるようです。会った瞬間に『同じにおいがする』と言われることもしばしばです(笑)。ひきこもっている人がSOSを出しても、それをキャッチする人がまだまだ足りない。その一助になればという思いでやっています」

 下山さんは、社会がひきこもりをネガティブに捉えていることに危機感を持っているという。

「私のように、ひきこもり経験も生きがいに繋がっていくのだと捉えてほしいですね」

 下山さんもまた、ひきこもりをアイデンティティの一部にして生きる、新しいタイプといえるかもしれない。

◆倉庫バイトがひきこもり脱出の一歩に?

 某大手通販企業の倉庫が、就労ブランクのあるひきこもりのリハビリ的な場所となっているという。この企業に勤務するA氏は、次のように話す。

「ウチは特にひきこもり就労支援を行っていないのですが、倉庫で発送業務を行うアルバイトには、なぜか中高年のひきこもりの方が多いんです。募集要項で職歴や経歴は不問で、即日採用というユルさが要因なのかもしれません。

 現場には70歳くらいの親御さんが一緒に来て、パイプ椅子に座って子供が勤務終了するまで見守っている。会社も黙認しているのか、親御さんが注意された光景は見たことがありません」

◆だが1週間続けばいいほう

 支援者に勧められて来たというケースも見受けられるという。人と必要以上に話さなくても済む点は彼らに最適であるが、「ただセグウェイに乗れなかったり、作業ミスが多く、仕事についていくのは大変そうです。だから1週間続けばいいほうですね」とA氏は言う。

 実際、彼らをケアする人もいない倉庫は、非常に過酷な環境であるといえるのかもしれない。

◆ひきこもりを医療機関に運ぶ「民間救急」の仕事とは

 親族や行政などから依頼を受けて、ひきこもり当事者を病院や施設へ搬送する仕事が「民間救急」だ。一時期、暴力行為が取り沙汰された「引き出し屋」は、無認可の個人や半グレ集団によるものだったが、今は警備会社を経由し合法的に行われている。

 5年前からこの仕事に携わっている橋本謙也さん(仮名・45歳)によると、ひきこもって10年以上の40〜50代が増えているという。他者の介入を拒絶し、精神疾患やアルコール依存になる人も少なくない。

「現場では、あなたを否定するわけではないが一度診察を受けてみましょうと説得します。しかし、時にはナイフで脅されたり、殴りかかられることもあるので護身術の心得は必須ですね」

◆同じ人を何回も搬送することも

 ほとんどの人は素直に入院し治療を受けるが、退院後は元の生活に戻ってしまうため、同じ人を3回、4回と搬送することも。その間に餓死、病死、自殺する場合も少なくないという。

「そのうち治るだろうと放置し、定年になって慌てる親が多い。民間救急はあくまで最終手段であることを知ってほしいです」

<取材・文/週刊SPA!編集部> ―[高齢化する[ひきこもり中年]]―