5戦全勝。J1リーグは4節を終了して、1試合多く試合を消化している川崎フロンターレが、昨季の勢いそのままに首位を走っている。川崎を追い掛ける力がありそうなチームは、現状では名古屋グランパス(4戦全勝)しか見当たらない。

 とはいえ今季の川崎が、戦力を大幅にアップさせたようには見えない。これまでに出場した新戦力は、ジョアン・シミッチ、橘田健人、遠野大弥、塚川孝輝の4人。大分トリニータに昨年、レンタル移籍していた知念慶を含めると5人だ。粒ぞろいではあるが、絶対的な存在はシミッチぐらい。本来なら中心になる大島僚太は、怪我で長期戦線離脱中だ。

 コロナ禍というご時世もあるのだろうが、外国人選手も4人のみ。枠を満たしていない。人件費にお金を賭けていない印象だ。Jリーグのレベルから抜けだし、世界に羽ばたこうとするクラブとしての気概を、選手の顔ぶれからうかがうことはできない。欧州のように、周辺の国々と切磋琢磨する環境にない日本サッカー界の悲哀が、昨季の覇者、川崎の現在の姿に表れている。

 その一方で、川崎のサッカーの質そのものは昨季以上。右肩上がりを示している。右サイドバック(SB)山根視来がブレイクしたのは昨季だが、今季は、怪我で戦列離脱している登里亨平の代役として左SBに抜擢された旗手怜央が光っている。

 昨季まで旗手は、中盤より上でプレーしていた。MF的なテイストを備えた左SB。中盤がサイドまで広がったという印象だ。旗手は、槍のごとくサイドを駆け上がっていくのではなく、周囲と絡みながら、左サイドというエリアを、ジワジワと支配していくタイプのSBだ。

 それは、旗手の前方で構える左ウイング三笘薫が、昨季よりさらに成長した姿を見せていることと深く関係する。三笘にボールが整ったいい形で出やすくなっているのだ。

 先週の土曜日に等々力で行われた柏レイソル戦。後半35分、家長昭博の決勝ゴールをアシストしたのは三笘だった。左サイドで塚川からボールを受けると、対峙する柏の右SB高橋峻希に、躊躇うことなく1対1を挑んだ。

 右利きの左ウイングは概して、相手SBとのまともな勝負を避け、内にかわして逃げようとする。並のウイングは縦への突破ではなく、切り返し、勝負を避けようとする。それだけに毎度、縦に勝負を挑む三笘は光る。相手に突っかけていき、縦突破を図る。勝率5割なら一流と言われる中で、三笘は7、8割台を誇る。

 注目したいのは抜いた後だ。ゴールライン際から、左足を使って折り返す。これが一般的なプレーになるが、三笘はさらに抜きに掛かる。ゴールライン付近に到達したら向きを変え、ゴールラインを左手に、マーカーである右SBを右側に従えながら、相手ゴール方向にドリブルで前進する。

 対面の右SBを2度にわたって抜く感じだ。場所はペナルティエリア内。相手は迂闊に足を出せないので、いっそうドリブラー優位になる。

 柏戦。決勝ゴールのシーンでは、ゴールエリア手前付近まで進出。そこから右足のアウトで、家長にマイナスのラストパスを送った。アイスホッケーの選手が、ゴールの裏から、ゴール正面で構える選手にパスを送るような決定的プレーである。三笘はまさにゴールラインをえぐるような、ドリブルを披露した。 三笘は後半5分にも、似たようなドリブルを魅せている。この時は、マーカーは2人いた。右SB高橋と、右ウイング、クリスティアーノを右側に従えながら、縦突破を敢行。突っかかっていき、いざ勝負という段では、定石通り、2人の間を狙った。障害物を越えるように、三笘はゴールライン付近まで前進。マイナスの折り返しを送った。旗手、田中碧のシュートは相手に阻まれたが、少なくとも三笘は、そこで100点満点のプレーをした。