現地時間3月6日、原口元気と室屋成を擁するハノーファーはブンデスリーガ2部第24節アウエ戦に臨み、1-1の引き分けに終わっている。日本人選手ふたりは先発したが、勝利を引き寄せることはできなかった。

 この試合で解説兼レポーターを担当したヨルグ・ダールマン氏のある発言を問題視する声がドイツ国内で上がっている。試合後、終了間際に室屋のシュートが外れたシーンについてダールマン氏が、「これが決まっていたら、彼のハノーファーでの初ゴールになるはずだった。彼自身が最後にゴールを決めたのは、スシの国でのことだ」とコメント。放送直後から、この「スシの国(land der sushis)」という表現が、人種差別にあたるのではないかと指摘する声が上がったのだ。

 結果、ダールマン氏は現地で中継を担当している『Sky』から降板が決定。しかし、現地メディア『SPORTSBUZZER』によれば、室屋への発言だけが原因ではなく、過去に試合中継で不適切な発言を繰り返していることに由来する。
 
 昨年12月のDFBポカール2回戦でウニオン・ベルリン対パーダーボルンを担当した同氏は、GKロリス・カリウスについて「ベルリンでもベンチに座ることになりそうだ。恋人のソフィア・トマラとゆっくり過ごせそうだね。私も彼女と一晩をともに過ごせるなら控えに回りたい」という問題発言をしていた。

 この件について、62歳の同氏は自身のインスタグラムを更新。「私が日本をスシの国とみなせば、それは人種差別になるのか? 本気でそんなことを言っているのか?」と人種差別の意図はなかったと反論。また、ハノーファーの関係者は現地紙『BILD』に「彼の発言は面白くもおかしくもない。だが、それだけで人種差別的な思想の持ち主と決めつけ、行き過ぎた批判をすることはおかしい」とコメントしている。

 ちなみに、ドイツ国内でもファンの意見は真っ二つに割れているという。SNS上では、ダールマン氏に対して「あいつの人種差別的な話をどうやって好きになれと?」「吐きそうだ」「彼がドイツ語を話せないからと言って、見下すのは卑怯だ」といった批判の声が上がった。

 その一方、「つまらないけど、平凡な表現」「イングランドはサッカー、フランスはワインの国。これも人種差別?」「(ドイツ人は)ビールやイモと呼ばれて怒るのか?」と過剰な反応に苦言を呈する声もあるようだ。

 フットボール界における人種差別は根深い問題だ。ただ、「ピッチ外の問題に選手を巻き込むようなくだらないトラブル」(『SPORTSBUZZER』)も、今後は少なくなることを祈るばかりだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部