女子ツアーの2021年初戦となるダイキンオーキッドレディス(沖縄県・琉球GC)を、渋野日向子は通算5アンダーの13位タイで終えた。

 2日目に通算6アンダーまで伸ばして5位タイに浮上しながら、3日目と悪天候に見舞われた最終日にスコアを伸ばせなかった。だが、およそ1年3カ月ぶりにギャラリーが入ったこともあり、ホールアウト後の渋野の表情は思いのほか明るかった。

「途中で投げ出したくなるような思いをすることもありましたけど、ギャラリーがいてくれたからこそのバーディーもあったと思う。久しぶりにみなさんの前でプレーできたこの1週間は、本当に楽しかったです」


今年初戦のダイキンオーキッドレディスを13位タイで終えた渋野日向子

 昨年12月に全米女子オープンに出場(4位)してから3カ月――。初日から、渋野にははっきりとわかる"変化"があった。

 まずはスイングだ。以前よりも明らかにバックスイングをコンパクトにした横振りになっていた。初日のラウンド後、渋野はスイング改造中であることを公言した。

「狙いは安定感。再現性の高いショットが打てるように、トップの位置を気にしています。今まで高めに上げていたのをちょっと低めに、トップに(クラブを)上げた時に、自分の肩よりも手が上がらないようにしています。そして、スイングは縦振りではなく横振りで、円っぽい動きを目指しています。それによって左へのミスが消えるので」

 また、パッティング時のルーティンにも変化があった。

「これまで両手で構えてから打つまでが長かったので、右手だけで(パターを持って)ラインを決めて、左手を添えて構えてから4秒以内に打つというのを意識しています」

 さらにクラブセッティングに関しても、昨年までユーティリティ2本で勝負してきたのを1本にし、長短2本の6番アイアンを入れ、ウェッジも4本(46度、51度、54度、57度)とした。

「2019年シーズンや昨年のスタッツを見ると、明らかにパー5のバーディー率が低かった。それで、マネジメントの重要性を感じて......。刻んだ時の100ヤード以内のショットの精度を上げることで、バーディーチャンスにつけられる確率が高くなる。(以前に比べて)攻めのゴルフからは遠ざかっていますけど、新しい攻め方もあると知って、それを今回実践しました」

 5つスコアを伸ばした2日目は、こうした"攻めない"マネジメントが功を奏し、すべてのパー5でバーディーを奪って大きく順位を上げた。

 そして、最も大きな変化は、2017年から師事してきた青木翔コーチとの発展的コンビ解消だろう。初日のラウンド後、渋野はこう打ち明けている。

「"卒業"したという感覚。昨年末です。2017年のプロテストに落ちていなかったら、青木コーチと出会うことはなかった。本当に、落ちてよかったと思います。なかなか小っ恥ずかしくて(直接本人には)言えないんですが(笑)、青木さんがいてくれなかったら今の自分はない。感謝しかないです。

『わからないことがあれば頼ってくれていいよ』と言ってくださって。その点は有り難い。心置きなくやっていけます。まだこれから不安はありますけど、決めた事はやり通したい」

 他のコーチに師事するわけではなく、先輩プロから助言を得ながら、今後は戦っていくという。

 およそ2カ月のオフを挟み、新たな渋野の船出が今回のダイキンオーキッドレディスだった。新型コロナウイルスの感染拡大によって3カ月遅れとなった昨年の開幕戦では、予選落ちだった。そのことを思い返せば、まずまずのスタートと言えるのではないだろうか。

 最終日を3バーディー、4ボギーで回った渋野は、13位タイという結果を受け「悪いところが全部出た」とも振り返った。

「パー5で(2つのバーディーを)取れましたけど、ティーショットが左にいく場面もありましたし、ちょっとスライスの感じでもありましたし、アイアンに関してもまだまだ練習をしないと......。

 パッティングは、1mぐらいのは打てていたなと思いますし、外してもおかしくない微妙なパットが入っていたので、なんとかこのスコアで回ることができた。合格でもないし、不合格でもないかな」

 昨年からの"変化"が、渋野にとって"進化"であるのか――。それが問われる2021年となる。