韓国の清州(チョンジュ)地裁は1日、新型コロナウイルス対策の防疫ルールに違反したAさんに対して、150万ウォン(約14万3000円)の罰金刑を言い渡した。海外からの入国者には2週間の自主隔離が義務付けられているが、膵臓がんで入院中だった父親に会うために2時間外出したことが、感染病予防法違反と見なされたのだ。父親はその5日後に息を引き取ったが、もしAさんが規則を守っていたとしたら、他界する前に会うことは叶わなかっただろう。

裁判官は、自主隔離中の外出は社会を危険に晒しかねず、罪状は軽くないとしつつも、上記のような事情に加え、コロナ検査の結果は陰性だったとして情状を酌量、比較的軽い判決を下した。

軍に入隊する息子の見送り、大学入試を受ける子どもの送り迎えなど、見逃してあげてもいいのに、と思ってしまうような摘発事例もあるが、韓国の防疫当局は、海外からのコロナ流入事例が多いことを挙げ、自主隔離違反者には「ゼロ・トレランス」(無寛容)で臨むとの方針を明らかにしている。

厳しいのは北朝鮮のコロナ対策も同じだが、韓国を含めた他の国とは異なり、隔離やロックダウンの対象となった人にまともなサポートを行わず、餓死する人が相次いでいる。さらには、取締官の横暴な振る舞いにも批判の声が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

中国、ロシアとの国境に接する咸鏡北道(ハムギョンブクト)の羅先(ラソン)では、コロナの国内流入をブロックするため、中央からの指示に基づき、道内各地の防疫当局の担当者からなる糾察隊(パトロール隊)、検閲班(取り締まり班)が、防疫活動を行っている。

ところが、RFAの現地情報筋は、彼らが権力を乱用して、私腹を肥やしていると告発した。

防疫状況を検査するとして、住民の荷物を探りて、食品などよさそうな物が入っていれば、イチャモンをつけて没収したり、生きるために長距離移動を余儀なくされる行商人などを捕まえて、ワイロを要求したりする事例が続出しているとのことだ。

例えば、週1回の抜き打ち検査の回数を勝手に増やし、消毒状況を点検すると称して工場、企業所、人民班(町内会)にやってきては、住民を捕まえ釈放と引き換えに金品を要求している。

清津(チョンジン)市の稷下(チッカ)協同農場では先月初め、こんなことが起きた。アルコール代用の消毒液として、沸かしたお湯に7キロから10キロの塩を入れた食塩水を配置することが義務付けられているが、抜き打ちの検査でこれが単なる真水であることがバレてしまった。

金日成主席が現地指導を行ったことのある農場だけあり、問題が発生すると大事になりかねない。そこで、農場幹部は慌てて鶏を締めて、取締官をごちそうでもてなして、もみ消したという。

南隣の咸鏡南道(ハムギョンナムド)でも事情は同じようだ。

現地の情報筋は、取締官が国家機関、工場、企業所、人民班などで、マスク着用の実態を調べるとして抜き打ち検査を行い、マスクをしていても鼻が出ていれば5000北朝鮮ウォン、口が出ていれば1万北朝鮮ウォン、外してあごに引っ掛けた状態なら5万北朝鮮ウォンなどと、細々と罰金を徴収する。しかし、いずれも法的根拠のないものだが、誰も楯突けないのだろう。

情報筋は、その権力の強大さを示すエピソードを紹介した。

霊光(ヨングァン)の安全員(警察官)が、マスク着用状態が不良との理由で摘発されたが、激しく抗議したところ、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に報告され、解任、撤職(更迭)された上に、奥地の村に追放されてしまった。

ありとあらゆる権力、権限がカネを生み出す源泉となる北朝鮮。その原因は、生活が成り立たないほどの薄給、コロナ鎖国による経済難にあるが、たとえ経済状況がよくなったり、いびつな給与体系を改善したり、重罰化で対応したりしたとしても、一度深く浸透してしまった拝金主義、不正行為を根絶やしにするのは不可能に近いだろう。