疾走する新幹線N700A。この3月で新幹線の回数券各種が発売を終える(写真:tarousite/PIXTA)
この春、全国各地で新幹線の回数券各種が廃止される。JR東日本は「新幹線料金回数券」や「定期券用新幹線自由席回数券」などを3月末限りで発売終了。JR東海とJR西日本も東海道・山陽新幹線の回数券のうち、多くの区間で発売を終える。ネット予約や交通系ICカードの利用拡大による利便性向上が理由だ。
ただ、3月限りで発売終了する回数券は購入後、有効期限の間は使うことができる。このため、最も遅く購入した場合で有効期限3カ月の回数券であれば6月末までは使えるということになる。
そこで今回は「最後のチャンス」として、1枚当たりの値段が通常購入よりも安い新幹線回数券類をさらにお得に活用する方法をご紹介したい。
特急の代わりに新幹線で…
まずは、東海道・山陽新幹線の「新幹線自由席回数特別急行券(定期券用)」だ。全廃ではないものの、多くの区間の発売が3月末で終了する。
これは新幹線と並行する在来線用定期券(ICカード定期券は除く)との併用で、設定された区間を運行する「のぞみ」「ひかり」「こだま」の普通車自由席に乗車できる10枚セットの回数券だ。新幹線の停車駅を2駅以上含む在来線の磁気定期券を持っていれば使える。
この回数券は、特に51km以上の距離が通常の特急券と比べるとかなり安い。例えば、東京―小田原間や品川―熱海間は通常なら1760円のところが1枚当たり990円だ。
今春のJRダイヤ改正では、いままで520円のライナー券で乗れた東海道線の「湘南ライナー」が特急「湘南」に変わり、乗車区間に応じた特急料金が必要になる。東京―小田原間(83.9km)の場合、特急券を車内で購入すると1280円、事前購入だと1020円。「えきねっとチケットレスサービス」は920円、同サービスのキャンペーン価格で720円だ。
これなら、どうせ同じくらいの料金で乗れるなら速い新幹線で、という選択もありではないか。6月までは定期券を磁気券にして、新幹線通勤してはいかがだろうか。
この定期券用新幹線回数券の区間は100km以下しか設定されておらず、例えば品川―熱海間(97.8km)の設定はあるが東京―熱海間(104.6km)はない。ただ、組み合わせて使うことは考えられる。東京―静岡間(180.2km)を利用する場合を考えてみた。
通常の東京―静岡間の特急料金は2530円。回数券の場合、東京―小田原(10枚つづり9900円)と小田原―静岡間(9900円)を買うと、片道1回当たり1980円となり、550円安い。だが、これは片道だけ新幹線利用にしたい人にしかオススメはできない。
【定期券と組み合わせて月20日往復の場合】
・東京―小田原間:7万9650円
(在来線定期券1カ月4万0050円+回数券9900円×4セット)
・小田原―静岡間:8万5700円
(在来線定期券1カ月4万6100円+回数券9900円×4セット)
=東京―静岡間:計16万5350円
*東京―静岡間の新幹線定期券:13万6330円
往復利用なら素直に新幹線定期を買ったほうが安い。
同様の例としては米原―新大阪間がある。この区間も、片道利用ならお得に使える。通常の同区間の特急料金は2530円だが、米原―京都間(9900円)と京都―新大阪間(8700円)の回数券を買うと片道1回当たり1860円となり、670円安くなる。
宇都宮線・高崎線ユーザーはこちらに注目
JR東日本は「定期券用新幹線自由席回数券」の発売を3月31日で終了する。これも新幹線停車駅を2駅以上含む在来線の磁気定期券を持っている人向けで、特急券のみ6枚つづりの回数券である。有効期間は3カ月だ。
こちらも51km以上の距離は通常の特急券と比べるとかなり安い。上野―熊谷・小山間、大宮―宇都宮・高崎間などの場合、通常は1870円のところが6枚つづり6000円なので1枚当たり1000円となり、870円安い。東京―小山・熊谷間は7200円で、1枚当たり1200円。両区間は通常だと2080円なので880円安い。
ちなみに、在来線普通列車のグリーン料金は平日の事前料金の場合51km以上1000円なので、この回数券を使って新幹線に乗るのと変わらない。宇都宮線や高崎線で長距離通勤している人なら買って損はなさそうだ。
ただ、東京発着の場合、発売区間は東北新幹線だと大宮・小山、上越新幹線だと熊谷のみだ。そこで、2つの区間を組み合わせることを考えてみたい。例えば大宮―宇都宮・高崎間と東京―大宮間の回数券を組み合わせると、東京―宇都宮・高崎間の特急料金は1回当たり2050円(東京―大宮間1050円、大宮―宇都宮・高崎間1000円)になる。通常の特急料金は2510円なので割安だ。
回数券という名前ではないが、この3月末で発売終了する商品としては「新幹線Wきっぷ」もある。
これはJR東日本の新幹線各線に設定されている、乗車券と自由席特急券がセットになった2枚つづりのきっぷで、往復利用の際に使えるのはもちろん、片道2回分や2人で使うこともできる。例えば新潟―長岡間は4280円。同区間は通常の場合片道3040円(自由席利用)なのでかなりお得なきっぷといえる。
Wきっぷの設定区間は東北エリアや新潟県内などが中心だが、高崎―軽井沢間で利用することもできる。高崎―軽井沢間という設定はないが、高崎―安中榛名間(2060円、1枚当たり1030円)と、安中榛名―軽井沢間(2200円、1枚当たり1100円)の設定があるからだ。高崎―軽井沢間は通常2640円(自由席利用)だが、この2つのWきっぷを組み合わせると片道2130円。通常よりも510円安くなる。
使い勝手がよくお得なため、発売終了が惜しまれるこのきっぷ。3月末の発売終了後も有効期間内は使用可能だが、期間が1カ月と短いので注意が必要だ。
発売終了区間、どうやってカバーする?
ここまで発売終了する回数券を紹介してきたが、東海道・山陽新幹線の回数券は今後も区間によっては存続する。これからも発売が続く回数券を組み合わせることで、発売が終了する区間をお得に使うことができる。
例えば米原―新大阪(大阪市内)間だ。普通車自由席用回数券は6枚つづり2万5080円で、1枚当たり4180円。通常なら4510円なので330円お得だが、この区間の発売は3月末で終了してしまう。
だが、米原―京都間(1万1880円、1枚当たり1980円)と京都―新大阪間(8160円、1枚当たり1360円)の回数券は今後も発売が続く。存続する2区間の1枚当たりの値段を合計するとなんと3340円! 通常の運賃・特急料金より1170円も安くできるだけでなく、発売終了になる回数券よりも安い。
いかがだったであろうか。またもや「ケチだ」と言われるかもしれないが、コロナ禍で仕事が減ったりなくなったりして大幅な収入源に追い込まれる方も多い中、国は一律の定額給付金支給に否定的だ。見放されてしまったわれわれはいま、ケチにならずして何になれというのだろうか!? 共感頂けた方はぜひご一緒に、ケチの美学を探求しようではありませんか!
外部リンク東洋経済オンライン