いま、地方競馬はコロナの巣ごもり需要もあり、「オッズパーク」「楽天競馬」といったネット馬券での売り上げが伸びているという。今年度売り上げはバブル期のピークと並ぶ9千億円台到達か、との声も。にもかかわらず、岐阜県の笠松競馬場が閉鎖の危機に直面しているというが、どうもここだけの問題ではなさそうで。

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「関係者約20人の所得隠しが原因で、笠松競馬が存続の危機にあります。名古屋国税局の税務調査で7年前から総額3億円を超える所得隠しを行っていたことが発覚したのです」

 と、競馬に詳しいジャーナリストが解説する。

「そのうち2億円は配当金で、騎手や調教師が他人名義で馬券を購入して的中させた金。それだけ当てられたのは“人気馬だが今回は脚の調子が悪い”“出走予定だが鼻血が出ている”といった内部情報を騎手や調教師のグループで共有していたから。それゆえ、本来、関係者の馬券購入は競馬法で禁じられているのです」

所得隠しで1〜2月のレースは中止

 この件には前段があり、

「昨年6月、騎手3人と調教師1人が競馬法違反(馬券購入)の容疑で強制捜査を受けたのです。引退したこの4人を含む、所得隠しが露見した20人は、現時点では修正申告で済んでいるものの、捜査と税務調査の過程で禁じ手を常用していたことが判明、存続が危ぶまれているわけです」

1着でも1万円

 なぜ競馬法違反を繰り返したか。そこには、地方競馬ならではの緩さと切迫した事情がある。強制捜査を受けた元調教師が明かす。

「日本の競馬界は中央競馬と地方競馬に分かれます。首都圏でいえば、大井競馬場や川崎競馬場が地方競馬です。中央競馬の騎手が平均年収1千万円といわれるのに対して、地方競馬の騎手は平均年収200万〜300万円程度で、生活がきわめて苦しいのです」

 笠松競馬場は、騎手が15人、調教師が20人ほど。

「その半分が月収30万円以上とっていますが、残りの半分は30万円に届くか届かないか。家庭があり、子どもがいると生活はぎりぎりです。だから一度味わってしまうと、麻薬のようなものでなかなか抜け出せないんです……」

 くわえて、こんな事情も。

「騎手は本来、レース前は外部との連絡を禁じられており、中央競馬では厳しく管理されています。が、笠松ではなんのチェックもなく携帯を持ち歩けました。中央競馬のレースは最大18頭、地方は10頭以下もザラ。数頭の馬の調子を外部に伝え、馬券を買えばかなりの確率で当てられます」

 ご法度破りを犯すのは、月収の少ない騎手や調教師とのこと。

「騎手の収入例を挙げると、中央競馬の騎乗手当が1レース4万から8万円なのに対し、地方競馬は5千円程度。レースの賞金も笠松などの地方競馬では1着20万円程度です」

 この賞金を、馬主が80%、調教師が10%、騎手と厩務員が5%で分けるという。

「つまり1着でも騎手の取り分は1万円程度。騎乗手当を加えても1万5千円。5着だったりすると、レースに出ても1回数千円にしかなりません」

「週刊新潮」2021年2月25日号 掲載