オンラインでの会議が続いたり、マスクで表情が読み取りづらくなったり……「最近、話が伝わっていない気がする」と悩む人からの相談が急増しています(写真:metamorworks/PIXTA)

日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。

たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。

その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は発売後、たちまち12万部を突破するベストセラーになっている。

コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「コロナで悩みが急増している『伝わらない話し方』を解消する3つの秘技」について解説する。

話が「伝わらない」悩みが急増

エグゼクティブの「コミュニケーションの駆け込み寺」である私のところには、「最近、どうも話が伝わっていない気がする」と悩む人からの相談が急増しています。


「朝から晩までオンラインでの会議だらけ。精神的に疲れる割に、満足のいくコミュニケーションがとれていない……」あるいは「リアルで話をしていても、ずっとマスクで表情が読み取りにくい……」など、まさにコミュニケーションの二重苦、三重苦状態

とくにウェブ会議では、相手の表情も読めないし、しゃべっていても独り言のようで、テンションはダダ下がり。「伝わっている感じがしない……」そんな声が聞こえてきます。

「話し方」は筋肉と同じです。才能ではなく、鍛えれば身につくけど、鍛えなければ、あっという間に落ちますし、一度落ちてしまうと取り戻すのは容易ではありません

日々、続けることによって、上達し、保たれてきた「コミュ力」ですが、その機会が失われ、「なんとなくその勘が鈍っている」。そんな感覚はないでしょうか。

長引くコロナ禍によって「伝わらない」と「話し方」の悩みも急増しているのです。

では、なぜ「話が伝わっていない」と感じるのか。主な理由は3つあります。

情報を無理に継ぎ足した「だらだら話」はNG

【伝わらない理由1】反応が見えづらく「わかってないかも……」と感じる

1つめは、「『わかってないかも……』で伝わらない」というものです。

目の前にいるときは、表情などを読み取りながら話もできましたが、物理的に距離が離れ、スクリーン越しのコミュニケーションでは、そういうわけにはいきません

「相手に伝わっているだろうか」とつねに疑問を抱きながら、話しつづけるわけですが、反応も見えず無表情だったりすると、「まだ、伝わってないかも……」と思い込んで、ついつい情報を継ぎ足しがちになります。

もしくは、最初のうちは相手も「うんうん」と聞いていてくれたのに、途中で飽きてきたような表情を見て、「あれ、もっとわかってもらわなくちゃ……」と、さらに話しつづけてしまう泥沼状態に入り込むケースも見受けられます。

【伝わらない理由2】「わかっているはず!」で「裸の王様」状態

2つめは「『わかっているはず!』で伝わらない」というもの。

「相手の知識レベルを見誤る」これも非常によくある間違いです。ずっと同じ専門知識を持ち、同じ言葉を使う社内の人と会話を続けているために、内容が「暗黙知」となってしまっている。そこに見られるのが「裸の王様」現象です。

私はリーダーシップ研修の締めくくりのプレゼン発表の場によく立ち会うのですが、外部の私が聞いてもさっぱりわからないことがしばしば。平気で専門用語を使い、それをまったく説明することはなく、「知っているもの」と「仮定」して話が進められます

「同じ社内の人間には伝わっているのか」と思いきや、実はその研修に参加している他部署の人間もまったくわかっていなかったりします。でも、理解できないことをほかの人に知られたくなくて、「わかったふり」をしてしまう。

つまり、「裸の王様」のように、誰もが「実は見えていないのに、見えているフリをしている」状態になっているということです。これでは、社内のコミュニケーションが円滑にいくはずがありません。

3つめは「『わかってくれるはず!』で伝わらない」です。

【伝わらない理由3】「わかってくれるはず」で、中身を詰め込みすぎる

日本人のコミュニケーションの大問題は「コンテンツの3密化」です。スライドに入れておけば、言葉にして伝えれば、「わかってくれるはず」とばかりに、詰め込みすぎる。あれもこれもと、文字も図も写真もぎちぎちの「3密」と化してしまうのです。

見てくれさえすれば、それを脳裏に焼き付けてくれるに違いないとばかりに、字も写真も小さすぎて、何が書いてあるのかもわからない資料を示す。

人はロボットではないので、大量のデータや情報を押し付けられても、処理が追いつきません。「ボールは投げておけば、どれかは受け取ってもらえるだろう」そんな楽観論は通用しないのです。

「伝わらない問題を」解消する「3つの数式と数字」

このように、伝え手が聞き手の「理解レベル」を見誤ることで「伝わらない」が大量発生しているのが現状です。では、これらの問題を解消するにはどうしたらいいのでしょうか。「3つの数式と数字」でその秘技をお教えしましょう。

【秘技1/「1+3+1」】一言結論とポイントを「3つ」で伝える

だらだらと要領を得ずに話してしまう癖を回避するためには、「型」を使って、簡潔にポイントを際立たせる「話し方」をマスターするしかありません。

「日本人も多い『話がムダに長い人』、即解消3秘訣」(2021年2月13日配信)でも詳しく説明しましたが、どうしても伝えておきたい「一言結論+中身+結論」の話し方をおすすめします。

ハンバーガーでたとえれば、「パン+中身+パン」ということですが、中身の量はパティとチーズとトマトというように3層ぐらいにしておきましょう。人はそんなにたくさん覚えきれないからです。手前味噌で恐縮ですが、私の会社の話でたとえれば、

【結論】
弊社が提供するのは、日本でオンリーワンのリーダー向け「コミュ力徹底改善プログラム」です。

【中身】
大きく3つの差別化ポイントがあります。
(1)完全なグローバルスタンダードのノウハウ
(2)リーダーシップ層に特化し、圧倒的な実績をもっていること、
(3)絶対的なブレークスルー効果を生むユニークなメソッドです。

【結論】
驚異的な成果をお約束します。

といった感じです。「『1+3+1』の法則」ですっきり、簡単。ぜひ活用してみてください。

【秘技2/「20+20+20」】「20秒×3=1分」に言いたいことを収める

2つめの秘技「20秒×3=1分」に言いたいことを収めることです。

日本語では、「1分に話す量は300字ぐらいが適正」と言われます。これがどれぐらいかと言うと、本記事の冒頭のリード部分が約350文字ですから、それよりちょっとだけ少ないぐらいです。かなり多いですよね。

『1分で話せ』という本が話題になりましたが、「大体1分ぐらいに言いたいことは収めて話す」ことを心がけましょう。

その場合、「最初の20秒が『青信号』、次の20秒が『黄信号』、20秒が『赤信号』と、イメージしながら話すべき」という説をアメリカの精神科医がハーバードビジネスレビューに紹介していました。

「時間を意識する」ことで、だらだらと話しつづけない癖をつけるのは大切です。

【秘技3/「1」】相手の知識・理解レベルは「1」と仮定する

3つめの秘技は「相手の知識・理解レベルは『1』と仮定する」こと。

「相手が『10』知っている、『10』わかってくれる」と思うのではなく、「相手は『1』しか知らないし、『1』しか理解してくれない」と仮定してコミュニケーションをしましょう。

「こんな基礎的なこと話したら申し訳ない」なんて思うかもしれませんが、実は相手は驚くほど、あなたのことやあなたの言いたいことを知りません

映画を途中から見せるような話し方では、結局最後まで理解してもらえないでしょう。「ご存じかもしれませんが」などと前置きしても構いません。とにかく基礎の基礎から話をしてみましょう

聞く側からすると、案外、知っているようで知らなかった、ということもありますし、もう一度おさらいする機会にもなります。そこでも手短に伝えることが大切です。

「話し方のコツ」「伝え方の方程式」を知らないだけ

冒頭で述べたように、長引くコロナ禍によって、「話し方」の悩みが急増しています。人と物理的に会う機会が減り、「職場や友人とのコミュニケーションがうまくいっていない」「孤独感や疎外感を覚える」など、この新型コロナ感染防止のためのソーシャルディンスタンスが、人々の「コミュニケーション」の量や質を大きく低下させています

ただ、本記事で解説したように、話し方には「伝わる方程式」があります。話が苦手な人は「できない」のではありません「やり方」を知らなかっただけです

たったひとつの「公式」を覚えるだけで、あっという間に自信がつくものなのです。ぜひ、「伝わる方程式」を身につけて、ラクして、楽しく伝えられる「話し方の達人」になってください。