日産が究極のエンジンを開発! 内燃機関は新たなステージに突入か

 日産がカーボンフリーに至るまでの技術発表会をおこなった。概要を紹介すると、電気自動車の開発と並行してe-POWERの技術を磨くというもの。

 具体的には今より25%くらい燃費を向上させられる熱効率50%のe-POWERを発表し、100%電気自動車の時代になるまでのリリーフとして投入するという。以下詳しく説明したい。

次世代「e-POWER」発電専用エンジンで世界最高レベルの熱効率50%を実現(画像は新型ノートのe-POWER)

【画像】これはカッコイイね! 初公開された新型キャシュカイを見る(34枚)

 御存知の通り欧州は2025年のノルウェーを皮切りに、2030年から世界規模でエンジン搭載車の販売を規制していく。

 2040年になればフランスなど最後までエンジン搭載車の販売を認めていた国も電気自動車だけになります。

 日本は2050年に「カーボンフリー=ガソリンの販売を終了する」ということなので、2035年くらいから事実上電気自動車になる。

 ヨーロッパの自動車メーカーを見ると、現在のガソリン車からフルハイブリッドを経由せず、直接電気自動車に移行しようという戦略をたてているようだ。

 一方、日本勢は2030年あたりから始まる電気自動車の本格的な普及の前に、燃費の良いフルハイブリッドを「繋ぎ」として導入しようと考えてます。良い狙い目だと思う。

 トヨタは得意のハイブリッドシステム「THSII」の進化でフルハイブリッドのど真ん中を進む。

 そんな状況のなか、日産はe-POWER技術を磨いていきます、というのが今回の技術発表の要旨です。

 日産によれば、いくつかのステップがあるようだ。最初の一歩は2021年2月18日に欧州市場向けに発表したクロスオーバーSUVの新型「キャシュカイ」。平均走行速度の高い欧州の道路事情で通用する高出力e-POWERの実用化だという。

 現在、日本で販売している1.2リッターのe-POWER、連続して走れる上限速度は車種によっても違うけれど130km/h程度。しかも高速域になると燃費が極端に落ちてしまう。

 欧州で走らせると燃費悪くて遅いクルマになる。だから1.2リッターのe-POWERを欧州で販売していない。というか、日本だけしか通用しないと考えていい。

 新型キャシュカイに搭載される新しいe-POWERの発電用エンジンは1.5リッター3気筒ターボで154馬力。これだけパワーあれば「エクストレイル」級のボディを180km/hくらいで巡航させられる。

 しかも熱効率の高いエンジンになっているため、130km/hくらいまでなら燃費の良いトヨタのハイブリッドと同等以上の実燃費になるという。

熱効率50%って何がスゴイの? EVとe-POWERで日産が強みを増す!

 今回発表された新技術は、現在最大で40%程度の熱効率を50%に引き上げるという強烈な内容です。

 ガソリンエンジンの熱効率、トヨタのハイブリッド車やマツダのスカイアクティブX、スバルの希薄燃焼ターボなどで40%程度に達してます。

 これまで、熱効率を30%から40%になるまで30年ほど掛かった。それを日産は2030年代半ばをメドに50%を目指すという。

 ガソリンエンジンとしては夢のような熱効率といってよい。

 2020年のこと、東京工業大学と慶應義塾大学で共同開発した超希薄燃焼とシリンダー内の水噴射を組み合わせたエンジンで熱効率52%を達成したことが大ニュースになったほど。

「50%の実用化、スゴイ!」文頭に書いた通り熱効率40%より25%くらい燃費良くなるというから素晴らしい。

欧州向けの新型「キャシュカイ」には、1.5リッター+VCターボを組み合わせたe-POWERを採用。このe-POWERにも次世代技術の考え方が用いられている

 今回、発表された技術を簡単に説明すると、薄いガソリンをキッチリ燃焼されることと、エンジンを発電専用と位置づけて効率の良い回転数&負荷だけで使うというもの。

 これが実現すると、エクストレイル級のクルマでも25km/Lに肉薄する実用燃費になることだろう。もちろん世界中の厳しい燃費規制をクリア出来る可能性大。

 日産は電気自動車と、極めて燃費の良い電動化車両という今後20年の自動車に必要なアイテムをふたつ揃えたことになります。

 しかも電気自動車もe-POWERも同じプラットフォームとモーター、インバーターに共通化出来る(変速機は不要)。

 基本骨格として考えたら万全。コストダウンしながら魅力のあるクルマ作りが出来たら日産は強くなります。