●トルコで日本人がニート生活?

「ニート」という言葉を聞いて、皆さんはどんな状況をイメージしますか? そもそもニートとは「not in education, employment or training」(就学・就労をせず職業訓練も受けていない者)を意味する言葉。好ましくない、ネガティブな状況を思い浮かべる人も多いかもしれませんね。

そんな中、「トルコでニート」を標榜し、2018年に単身トルコに移住。以来、トルコでの働かない日々をYouTubeやツイッター、インスタグラムで配信している“超アクティブ”なニートの日本人がいます。その名も、ニートさん(@kenthashiTurkey)。

ニートさん

ニートさんのYouTubeチャンネル『NEET in Turkey』の登録者数は8,860人(2021年2月現在)。社会のオンライン化が進む中で「海外に移住したい・住んでみたい」と考える日本人から熱い注目を集めています。

今回は、ニートさんに渡航の理由や、トルコでのニート生活について詳しく聞いてみました。

ニートさんが住むイスタンブールは、アジアとヨーロッパをつなぐトルコ屈指の大都市だ

○きっかけは?

――そもそもの質問になるのですが、ニート生活を、しかもなぜトルコでしようと思われたのでしょう? わざわざ海外でニートをするという発想がとてもユニークだと思うのですが

「ニートをすることに決めたのは、仕事をすることに飽きて、休憩をしようと思ったからです。日本の大学を卒業後、ワーキングホリデービザでカナダの片田舎の工場で働いていたのですが、お金もある程度たまったというところで、しばらく仕事から離れてニート生活をしたいと考えるようになりました。

そもそも、いわゆる『新卒で日本の会社に入社する』というレールからもう完全に外れていたということもあって、『しばらくは仕事をやめてニートをしていても問題ないかな』と思ってましたね。

ただ日本でニートをすると物価も高いし、家族や友人も近くにいるので周りの目も気になりそうなので、誰も知らない海外でのんびりニートしようという発想になりました」。

――それでトルコに行こうと

「トルコに行きたいと思ったはじめのきっかけは、首都のイスタンブールに本拠地を置く『ベシクタシュ』というサッカーチームが好きだったからです」。

――なるほど、サッカーチームがきっかけだったんですね

「学生のことからやっているサッカーのゲームがきっかけでこのチームが好きになったんですが、毎週末スタジアムに行って好きなチームの試合を見たり、現地のサポーターと仲良くなったりという、サッカーが生活の一部にあるような暮らしをしたかったので、トルコに移住することを考えはじめました。

今では、サッカーは生活の一部

そこから現実的にビザや物価、言語の観点からも考え、トルコに住むことが自分に合ってそうだと感じて、トルコに移住することを決めたという流れです」。

――トルコへの興味と、働きたくないという気持ちがちょうど合致したところでの「トルコでニート」になったというわけなんですね。それにしても、海外で収入が全くないとなると心配はありませんか?

「YouTubeからの収益がほんのわずかにありますが、現在は収入はほぼゼロです。とはいえ今はコロナの関係で外食もできないし、買い物もほぼしない性格でお金をあまり使わないので、問題はなさそうですね」。

○トルコでのニート生活

――ちなみに普段の生活の様子がとても気になるのですが……

ニートさんの部屋

「10時ぐらいに起きて、ツイッターやインスタグラムをチェックしたり、本を読みます。YouTubeや、AbemaTVで麻雀の試合を見たりしながら、昼ご飯を家で作ります。あとはトルコ語の勉強のためにNetflixでトルコのドラマを見たりもします。夜も、家でご飯を作って、サッカーの試合があるときはパソコンで見たりします。

現在トルコではカフェやレストランがテイクアウトのみの営業のみなので、友達とも気軽に集まれる場所もなく、基本的に家にずっといます。最近はYouTube動画の台本作りや撮影、編集をする時間も増えていますね」。

――やはり自炊が多いんですか?

「食事は自炊中心で、野菜やパスタ、お米が安いので簡単な自炊で済ませています。ちなみに自炊に飽きたらウーバーイーツのような出前アプリで食事を配達してもらうこともできますよ。10トルコリラ(約140円)ぐらいで、ケバブ一つから配達してくれるお店もあるのでとても便利なんです」。

――トルコ料理を気軽に楽しめるのもトルコの魅力ですね〜

「ドネルケバブといって、巻くタイプのケバブがコスパ良くて美味しいですよ。イスラム教徒がほとんどの国なので豚肉はありませんが、牛肉と鶏肉が中心で羊肉も食べれます。味付けもスパイスが強すぎず日本人の口にも合うと思いますね。あとは、ムール貝の中にお米が入っているミディエなんかもおすすめ。一口サイズで食べだしたら止まりません(笑)」。

――よだれが出てきました……。もう少しトルコについて伺いたいのですが、トルコ人の皆さんの気質はいかがでしょう?

「トルコ人の方々はゲストを“もてなしたい”気持ちが強く、外国人に対してとても親切にしてくれます。私が日本人ということを伝えると、珍しいのかたくさんの質問をしてきます。もともとおしゃべり好きな性格の人が多いので、初対面でもとてもフレンドリーに話してくるのでとても面白いですよ」。

地元の新聞で紹介されたことも

――親しみやすい国民性なんですね

「YouTubeの動画を見て私を知ってくれた人や、日本や韓国などのアジアの文化に興味がある人とインスタグラム経由などで知り合うこともあります。あとは、日本語を勉強しているトルコ人の友達が多いですね。

サッカーチームのベシクタシュのサポーターとも交流があります。同じチームを応援している友達としてとてもよくしてくれますよ」。

続いては、コロナウイルスがトルコの街や人に与えた影響について聞いていきます。トルコに住む日本人、ニートさんはどう感じられたんでしょうか?

●コロナの影響は……

○コロナの影響は……

――トルコでもコロナの影響はかなり大きいと思いますが、ニートさんから見てどうでしょうか?

「街の様子は大きく変わりましたね。コロナ前は冬でもマスクをする人はほぼいませんでしたが、今ではマスク無しで外出していると罰金があるので、ほとんどの人がマスクを付けています」。

――罰金ですか! とっても厳しいですね

「以前は、道端で集まったり、小さい椅子に座ってチャイを飲みながら世間話をするトルコ人が多かったですが、コロナの影響からかそういう人も減りました。

また、昨年の12月からカフェやレストランやなどの飲食店の店内で食事を取ることが禁止され、営業はすべてテイクアウトのみとなりました。ナイトクラブやバー、映画館なども全て閉まっています(筆者補足:トルコでは2020年末よりコロナ対策を強化。ショッピングモールへの入場制限なども行われた)。

イスタンブールのショッピングモール

また外出の許可については、平日は夜9時まで。週末の土日は終日、基本的に外出禁止となっているので、平日仕事をしている人は夜も出歩けないし、週末も外に出れないので、なかなか友人などに会えないという状況の人も多くいます。

トルコ人の知り合いでコロナにかかった人も何人かいますし、その知り合いの家族の中でコロナで亡くなった方もいるという話はたまに聞きます。ただ周りの日本人でかかったという話はいまのところ聞いていませんが……」。

――非常に心配な日々が続きますね

○ニートさんの今後

――ちなみにトルコでのニート生活も丸2年ということで、今後の予定は?

「日本に帰る予定もなく日本に職もないので、お金がある限りトルコにいたいと思っています。できればもう3年、4年ぐらいトルコにいたいですね。ただトルコのイカメット(短期滞在ビザ)の制度は急に廃止される可能性もあるので、その場合はがんばって仕事を見つけてトルコに残りたいと思ってます。

とりあえずトルコに住み続ければ何かしらチャンスが来ると思うし、トルコに住み続ける日本人として差別化ができるので、その先に永住権を取れるチャンスがあれば、そうする可能性もあると思います。

ただ他の国に住むのも面白そうなので、短期で近くのヨーロッパの国に移るという生活もいつかしたい、という思いもありますね」。

最後、ニートさんが思うトルコの魅力を質問してみました。

「そこまで気を張らずに生きていけることかな。トルコの人は適当でゆるい感じで、ミスをするのは当たり前。間違ったことをしても全然謝らないけど、フレンドリーだからどこか憎めないところがあり、私と相性が合うんです。

政治や経済のことで大変な状況であっても、それでもトルコ人の方々はどこか悲壮感もなくのんびり暮らしている気がします。ひまなときは海の近くや公園で座って、チャイやビールを飲みながら時間を過ごす。そういう生活ができるところがとても魅力的です」。多くの日本人が真似しづらいユニークな生き方を動画・SNSで配信することで注目を集めるニートさん。自身の興味や気分に背かず、肩肘をはらずに生活する様子は、オンライン時代の生き方のひとつの理想形であるように感じました。