歯の治療をするとき、気になることの一つに「通院回数が多い」ということがあります。虫歯などの症状が重ければ、通院回数が多くなるのも仕方ないのですが、特にモヤモヤとするのが、次回の治療がほとんどの場合、「1週間後」になることです。「なぜ、もっと早く治療を受けられないのだろう?」と疑問に思いつつも聞くことができず、諦めて、1週間ごとに通院している人も多いのではないでしょうか。

 なぜ、次回の治療はほとんどの場合、1週間後になるのでしょうか。歯科医師の中村貢治さんに聞きました。

理由は「詰め物」「かぶせ物」?

Q.歯の治療では、なぜ、次回の治療がほとんどの場合、1週間後になるのでしょうか。法律や国の指針、歯科医師会での申し合わせなど何らかのルール(目安)があるのでしょうか。

中村さん「『次回の治療は1週間後にしなければいけない』というルールは存在しません。法律も指針も存在せず、また、歯科医師会は任意団体で、非会員の歯科医院もあり、仮に『1週間後にしなければいけない』という申し合わせがあったとしても、そのルールが全ての歯科医院で守られることはありません。

ではなぜ、次回の治療が1週間後が多いかというと明確な理由があります。例えば、歯の詰め物やかぶせ物を削って型どりをした場合、それらの加工は歯科技工所へ依頼されます。技工所が2〜3日で技工物を作り、完成後、治療した歯科医院に届くのは依頼から5〜6日後ということになります。そのため、次回の治療が1週間後になるのです。

次に、歯の神経の処置をした後、歯の根元を掃除して消毒し、細菌を減らす薬を塗る治療を行っているとします。その場合、薬が十分作用するのに最低でも3日は必要となるため、次回の治療の予約はどうしても1週間後ぐらいになります。

要するに、ほとんどの歯の治療にとって、次の治療へ進む間隔を考えると1週間後が好ましいというのが大きな理由です。また、歯科医院のほとんどが予約制で治療を行っており、次回の治療の予約を決めるのに1週間後とする方が患者さんにとっても覚えやすく、歯科医院にとっても治療スケジュールを管理しやすいという事情もあります」

Q.次回の治療を1週間も空けなくて大丈夫なケースもあるのですか。ある場合、それはどのような治療のときですか。

中村さん「次回の治療までに1週間も空けなくてもよい治療はあります。例えば、歯の掃除は治療の翌日でも可能です。歯の根元の消毒も最短で3日以上空ければ、次の消毒をすることができます」

Q.通院回数を減らして早く治すため、患者が1回の治療で、より多くの処置を求めることは可能ですか。

中村さん「可能な場合もあります。ただ、『何度も通院するのが面倒』など患者の自分勝手な都合では希望に沿えないケースが多いです。また、医療機関で保険を使って治療を行うと、その治療内容ごとに『保険点数』が割り当てられます。そうした割り当てに基づいた治療方針や計画が『保険医療機関および保険医療担当規則(療養担当規則)』で決められており、1回の治療で規則よりも多くの治療を行うことが難しい場合もあります。その場合は患者さんの要望は実現できません」

Q.通院回数を減らすために私たちができることは何でしょうか。

中村さん「歯の治療期間を短くできるかどうかは、通っている歯科医院の予約状況や歯科技工所のスケジュール、その他、多岐にわたる事情が複雑に関係しています。まずは担当医としっかり向き合い、説明を受け、疑問や希望をしっかりと伝え、できることとできないことをしっかりと理解し、納得した上で治療を開始することが肝要です。

日常生活でも、歯の手入れをきちんと行うとともに定期検診を受け、歯や口の中の状態があまり悪化しないうちに治療を開始することができれば、通院回数も多くはならないと思います」