スタンフォード大学やケンブリッジ大学の研究チームが、「過激な思想を持つ人物は複雑な認知処理を苦手としているため、無意識的に分かりやすいイデオロギーに傾倒している」とする論文を、科学誌のPhilosophical Transactions of the Royal Society Bで発表しました。

The cognitive and perceptual correlates of ideological attitudes: a data-driven approach | Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.2020.0424

Extremists struggle with certain kinds of brain processing, research shows | Live Science

https://www.livescience.com/extremist-psychological-traits.html

Extremist Brains Perform Poorly at Complex Mental Tasks, Study Reveals

https://www.sciencealert.com/extremist-brains-perform-poorly-at-complex-mental-tasks-experiment-reveals

ケンブリッジ大学の心理学者であるLeor Zmigrod氏らの研究チームは、2019年に認知と思考の相関性を題材とした研究を行いました。この研究では、522人の被験者を対象に37の認知タスクを実行させたほか、22の性格調査を実施しました。認知タスクは「右か左に移動する大量のドットのうち、どちらの方向に進むドットがより多いかを答えさせる」などの簡単なものであり、中には課題のルールを途中で変更し、即座に対応できるかという認知の柔軟性を図ったケースもあったとのこと。

新たな研究では、認知タスクを含む前回の実験に参加した被験者のうち344人を対象に、政治的・社会的・宗教的信念に関するアンケート調査を行いました。前回の研究で測定された認知タスクの結果とイデオロギーの相関性について分析した研究チームは、「過激な思考を持つ人物は、複雑な認知課題をうまく遂行できない傾向がある」と結論づけています。

具体的には、社会の特定のグループに対する暴力行為を支持するなどの過激な思考を持った人物は、タスクの実行中に情報を覚える作業記憶が弱く、タスクを解決するために戦略を立てて実行することを苦手とし、より衝動的でリスクを好む傾向にあるとのこと。

この研究では過激な思考を持つ人物以外にも、さまざまなイデオロギーを持つ人物の特徴も示されています。

政治的保守派の人物は、戦略を立てて実行するタスクの処理を苦手としつつも知覚的な処理は注意深く実行し、社会的なリスクを負うことを嫌ったとのこと。反対に政治的リベラル派の人物は、知覚的な処理を素早く実行しつつもあまり正確ではない傾向にありました。

Zmigrod氏は「複雑な認知処理を苦手とする人々は無意識のうちに極端な思想に傾倒し、独断的で権威主義的なイデオロギーの影響を受けやすくなる可能性がある」と述べています。さらにZmigrod氏はこの研究を「人々の認知の柔軟性や情報処理を改善するための戦略が、過激派の発展に対する対抗策になるのではないかと提起したもの」と位置付け、この研究を基に、今後は人々を取り巻く環境と認知の相関性について研究を行っていくと述べています。