今のクルマには暖機運転の必要はない?

 かつてクルマに乗る際に「暖機運転」をしたほうがクルマに良いといわれていました。では、技術が進歩した現代のクルマに暖機運転は必要なのでしょうか。

さまざまな要因から停止時の「暖機運転」が減少するなか、エンジンを労るにはどうすれば良いのでしょうか

 暖機運転とは、機械が始動してから一定時間に渡り負荷のかからない動作で運転することを指します。

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 従来のクルマではエンジンが暖まっていないとうまく走行できないという特徴があり、エンジンをかけたまま停止している状態の「アイドリング」により暖機運転を行うことが一般的とされ、とくに寒い季節はエンジンをしっかりと暖める必要がありました。

 しかし近年では、電子制御による燃料噴射装置が搭載されたクルマが導入され、コンピュータが調整してくれるシステムへと進化したため、暖機運転をしなくてもスムーズに走行できるようになっています。

 トヨタ「クラウン」の説明書を見ても、ガソリン車の説明書では暖機運転についてとくに触れられておらず、ハイブリッド車の説明書では、「ガソリンエンジンが冷えているときは、ガソリンエンジンの始動/停止を自動的におこないますので、暖機運転は必要ありません」と記載されており、従来のように暖機運転をする必要はないといえます。

 暖機運転の必要性について、トヨタの販売店担当者は以下のように話します。

「極端な低温時や、長い期間をおいてクルマのエンジンを始動した場合に限っては、数十秒間の暖機運転をおこなう必要がありますが、基本的には、現在販売されているトヨタ車で暖機運転が必要なものはありません。

 年式が古いクルマの場合は暖機運転が必要な場合があるので、ディーラーや整備士に確認してください」

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 暖機運転の必要性が減少した背景には環境問題も挙げられます。

 アイドリング状態による排出ガスによる空気汚染などが問題に挙がり、近年ではアイドリングは極力避けエンジンを停止するよう呼びかけられています。

 各都道府県の条例でもアイドリング禁止に関する項目を設けていることもあり、そういった要因も暖機運転の減少に繋がっているといえそうです。

暖機運転はNGでも暖機走行はやったほうが良い訳とは?

 一方で、クルマに搭載されているエンジンは耐えず動き続けている部分であるため、負荷が積み重なった場合に故障する可能性が高くなります。

 そういった意味では、機械全体の負荷を減らすことのできる暖機の必要性はあるようです。

 首都圏の自動車整備士は、エンジンに負荷がかからない方法について以下のように話します。

「クルマの走行中は暖機走行を意識した方がクルマにとって優しいといえます。

 暖機走行は、エンジンをかけ、しばらくは急発進、急停車、急ハンドルなど負荷のかからない運転をすることです。

 考え方は人間の体と一緒で、準備運動もしていないのに全力疾走をするとケガをする確率が上がってしまいます。

 高速道路のインターが自宅や旅行先から近くにあり、クルマが温まり切っていないのに合流をするためにアクセルをべた踏みするといったことはぜひとも避けていただきたいです」

かつては推奨されていた「暖機運転」。それでも長く乗るなら「暖機走行」が推奨される

 技術の進化によって暖機運転の必要性は薄れていますが、エンジンを長持ちさせるためにも暖気走行は推奨されるようです。

 アイドリングは環境保護の観点から極力避けたほうが良いですが、クルマを少しでも長く乗ろうと心がける「モノを大切にする」という意味では同じクルマを長く乗り続けるのもまたひとつのエコといえるのではないでしょうか。