「闇営業」に非難の声

 新型コロナウイルスの感染拡大への対策を強化する改正特別措置法と改正感染症法が国会で成立し、今月13日から施行された。飲食店などが営業時間短縮の要請に応じなかった場合などに30万円以下の過料(緊急事態宣言が出ている場合)という行政罰が科されることになるわけだが、「夜の街」は話題に事欠かない。闇営業や飲食店からみかじめ料を受け取ってきた暴力団の現状などについて、ノンフィクションライターの尾島正洋氏がレポートする。

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 政府は今年1月上旬から2度目の緊急事態宣言を出して飲食店などに対して時短要請をしているが、繁華街では看板を消して闇営業しているクラブがあったり、深夜まで酒を飲んでいる国会議員がいたり。繁華街の飲食店などからは批判どころか強い非難の声が上がっている。

みかじめ料、闇営業、様々な不満が渦巻く

「時短要請がなされているさなかにもかかわらず、看板を消して夜8時以降も営業しているクラブがある。『闇営業』だ。このような店は8時でいったんは形だけ会計するが、その後の11時や12時までの延長料金も8時の時点で料金に上乗せしているようだ。自分は協力して店を閉めてコロナの感染拡大防止に協力しているのがバカらしい」

 都心の繁華街でクラブを経営している男性が不満を漏らす。

 この男性の店も、いわゆる女性の接待を伴う夜の街の店で、現在は自主的に休業中だ。

アフターコロナは見通せない状況だ

「店には十数人のホステスがいるが、休んでもらっている。クラブに勤める女の子たちは勤務先の店を移籍することもあり、複数の店で勤務を経験している場合もある。店は違えどもホステス同士の知人は多く、情報交換が盛んだ」

 すると、

「『あちらの店は営業して給料が出ている。うちもやってほしい』などと不満が出る。『こちらは時短要請に応じているため』と説明しても納得してもらえない場合もある。休業期間中の手当を出すことにしているが、経営としては苦しい。全く採算が取れない」

詐欺にあたる」

 男性の店は、通常の営業ができれば月に700〜800万円の売り上げがあり、忘年会シーズンの年末には1000万円を超える。

バブル時代のシノギは地上げがメイン

 この売り上げの補填にはほど遠いが、時短要請に応じた場合の1日につき6万円の協力金を申請するという。

 今年1月の1カ月分で協力金は186万円となるが、ここから月の家賃約100万円を支出し、そのうえホステスへの休業手当などもあり、とても成り立たない状況だ。

 男性経営者が協力金の問題点についてこう話す。

「自分の店は閉めていたので協力金を申請する。しかし、深夜12時や午前1時まで闇営業している店も協力金を申請したら問題ではないか。闇営業で行政罰を科されるはずが、逆に『8時で閉店していました』と虚偽の申請をして協力金を受け取るとしたら納得できない。詐欺のようなものだ」

 こうした「虚偽申請」について、警察当局の幹部は、

「通常営業していたのに、休業していましたと協力金を申請して受け取れば、資金支出の手続きをする自治体が被害者となる詐欺罪が成立する」

 と指摘する。とはいえ、

「実態は何もかも事件化するという訳ではなく、自主的な返還があればおとがめなしとなることもある。当然、被害の申告があれば捜査を始める」

 最近、持続化給付金をめぐる詐欺事件が多発したが、今後はこうした事件の摘発が相次ぐ可能性はあるだろう。

 汚職や選挙違反、詐欺事件などの知能犯捜査を担当している警察幹部も同様に、「詐欺にあたる」としたうえで、捜査の実務について解説する。

「このような事件の立証には、客の証言が絶対に必要。こうした情報を収集するとともに、捜査対象の店の1カ月間の営業実態を把握して悪質性について判断が必要となる。簡単に立件とは行かない。闇営業が数日だけだったなどの場合には立件は難しいのではないか」

バブルのころは

 自民党衆院議員の松本純が、緊急事態宣言中の今年1月18日夜、東京都中央区のイタリアンレストランを訪れ、その後はタクシーで銀座に移動。2軒のクラブを渡り歩き深夜までハシゴ酒を楽しんでいたことが報じられた。

 当初は「(店からの)陳情を承るという立場で、1人で」と説明していたが、後になって田野瀬太道、大塚高司の2人の後輩議員、女性も同席していたことが判明。

 3人は2月1日に自民党を離党し、公明党議員の遠山清彦も同様に銀座のクラブ訪問が発覚、議員辞職した。

 松本らが厳しい非難を浴びたにもかかわらず、自民党衆院議員の白須賀貴樹が2月10日夜、東京・麻布の高級ラウンジで女性と飲酒していたことが報じられた。

 白須賀は2月17日、「売り上げに苦しんでいる飲食店の方々もいる。知り合いの店だということで、売り上げに貢献したいと思った」と釈明して謝罪、同日に離党している。

 東京を中心に活動している、夜の繁華街事情に詳しい指定暴力団幹部がこんな風に語る。

「“売り上げに苦しんでいる”という議員の言葉をそのまま鵜呑みにはできないが、我々ヤクザのシノギも相当苦しくなってきている。夜の街のクラブや飲食店などからのみかじめ料については、そもそもコロナの問題が出てくる前から暴力団排除条例などの影響があり、非常に厳しい。そのうえ、コロナ禍で飲食店自体が営業していないとか、営業していても時短営業で経営は苦しく、みかじめ料どころではない。闇営業しているようなクラブやキャバクラなどは別だが……。結局、シャブ(覚醒剤)や振り込め詐欺などで何とかやって行くしかないところが多いのではないか。そういった犯罪はどこの組織も上の方から『厳禁』などと通達されているが、下の方は食っていくためにやらざるを得ないだろう。見通しは明るくない。バブルのころは地上げがメインで、月に数千万円のシノギは当たり前のことだったんだけどね」

(敬称略)

尾島正洋
1966年生まれ。埼玉県出身。早稲田大学政経学部卒。1992年、産経新聞社入社。警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、主に社会部で事件の取材を続けてきた。2019年3月末に退社し、フリーに。著書に『総会屋とバブル』(文春新書)。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月26日 掲載