スペース効率を極めた超小型車に注目!

 スペース効率を高めつつボディサイズをコンパクトにまとめた超小型車(マイクロカー)は、取り回し良さと車重の軽さもあって、都市部での手軽な移動手段を目指した「シティコミューター」として活躍が期待されています。

 最近では、トヨタとして初となるピュアEV「C+pod(シーポッド)」が2020年12月25日に発売されて話題を集めていますが、全長を切り詰めた2人乗りの超小型車というコンセプトは、かなり前から存在していました。

【画像】新型シーポッド登場で注目! 軽より小さいマイクロカーとは(26枚)

 現代でも通用する超小型車には、どのような車種があるのでしょうか。

超小型EVとして登場したトヨタ新型「シーポッド」

 まずは、新型シーポッドですが、同車は2人乗りの超小型EVです。

 ボディサイズは、全長2490mm×全幅1290mm×全高1550mm。RRレイアウトで最小回転半径は3.9mと、狭い道で優れた取り回し性を発揮します。

 9.06kWhのリチウムイオンバッテリーをシート足元の床下に搭載し、1回の充電で走れる距離は150km(WLTCモード)。最高速度は60km/hと、高速道路を使わない短距離移動には十分なスペックです。

 なお、普通充電(200V)での充電時間は約5時間とされており、100V充電にも対応しています。

 価格(消費税込、以下同様)は165万円から171万6000円と、軽自動車と同等の低価格を実現していることもシーポッドの特徴のひとつ。

 現時点では、法人や自治体などを対象に数量限定で販売されていますが、2022年を目処に個人向けに本格販売が開始される計画です。

 なお、シーポッドは軽自動車よりもコンパクトな超小型モビリティ(型式指定車)の規格で発売されています。

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 シーポッド以前にも、トヨタは超小型車を手掛けていました。それが2008年に誕生した「iQ」(小型自動車枠)です。

 全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmと、3mを切るコンパクトなボディに4名乗車可能な超効率パッケージを実現。最小回転半径はわずか3.9mという取り回しの良さが特徴でした。

 ダイハツとの共同開発となる新しい1リッター直列3気筒エンジンを搭載し、FF&CVTを組み合わせて最高出力は68馬力を発揮。

 2009年にはより実用域でのパワーを考慮して、94馬力の1.3リッター直列4気筒エンジン搭載モデルも追加されました。

 マイクロカーの場合、限られたサイズのなかでどれだけ快適な空間を生み出すかがポイントになりますが、iQは、新開発の電動パワステ採用などもあってエンジンルームをコンパクト化。

 さらに燃料タンクを床下に配置し、助手席側のダッシュボードを運転席より前方に持ってくるなどのアイデアで、十分な車内空間も確保しています。

 それでいながら、エアバッグやABS、ブレーキアシスト、S-VSC(旋回時の横滑りを抑制するスタビリティコントロール)まで搭載し、安全面にも配慮した設計であるのもポイントでしょう。

 ちなみに2012年にはトヨタのレース部門「GAZOO Racing」が手がけたスポーツ仕様の特別仕様車「GRMN Supercharger」も100台限定で登場。

 専用バンパー&リアスポイラーを装備し、エンジンにはスーパーチャージャーを追加。最高出力を122馬力まで引き上げるとともに、クロスレシオ化された6速MTを装備し、足回りも専用チューンした本格的なスポーツモデルになっています。

 最終的には2014年モデルまで改良が加えられ、2016年に生産が終了しましたが、マイクロカーが持つチープなイメージを打ち破るべくレザーシート仕様のパッケージが用意されていたり、従来にはない独特の個性が魅力的でした。

全長3mを切る超小型の軽自動車とは?

 日本独自の小さなクルマとして人気を博している軽自動車ですが、これをさらにコンパクトにして、軽の市販車としては初となるハイブリッドシステムを搭載したマイクロカーが、2003年デビューのスズキ「ツイン」(軽自動車枠)です。

 短いホイールベース(1800mm)に丸みを帯びたデザインや2シーターというマイクロカーらしい出立ちが特徴になっています。

スズキ「ツイン」

 全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mmのボディサイズは、当時の市販される軽自動車として最小で、パワーユニットは44馬力の660cc直列3気筒エンジンと、同エンジンを補助する役割を果たすモーターを搭載するハイブリッドの2種類をラインナップしていました。

 超コンパクトなツインの最小回転半径は3.6m、燃費はガソリンモデルが26.0km/L(10・15モード)、ハイブリッドモデルが32.0km/L(10・15モード)と低燃費を実現しています。

 軽自動車の平均乗車率が1.4名だったこともあり、2シーターに割り切ることで実現した超小型ボディですが、ツインの可愛すぎるデザインが不評だったのか販売面では苦戦し、2005年には生産が終了した短命な激レア車になっています。

 さらに、輸入車のマイクロカーとして忘れてはいけないのはスマートでしょう。

 スイスの時計メーカー「スウォッチ」とダイムラーベンツ(当時)が共同開発して、1998年にまったく新しいブランドとしてスマートは誕生しました。

 初代スマートがデビューしたのは1998年。全長2500mm×全幅1510mm×全高1500mmという超小型な2シータークーペとして登場しました。

 2座のシートがギリギリ収まるボディの四隅にタイヤを配置したレイアウトは、開発コンセプトである「スウォッチカー」そのもので、600cc直列3気筒ターボエンジンを搭載。

 日本には2000年に正規輸入が開始されましたが、2004年には軽自動車規格に合わせて全幅を狭めた日本オリジナルの「スマート K」も登場しています。

 このスマート Kの登場に合わせて、ノーマルのスマートクーペは排気量を700ccにアップさせています。

 また2004年に5人乗りのハッチバックモデル「for four(フォーフォー)」が誕生すると、クーペの車名が「for two(フォーツー)」に変更されました。

 その後の2007年には2代目へとフルモデルチェンジ。衝突安全性を考慮し、高張力鋼製モノコック「トリディオンセーフティセル」を採用しボディは全長2690mm×全幅1560mm×全高1540mmへとサイズも拡大し、パワーユニットも三菱製の1リッター直列3気筒エンジン&同ターボへと変更になっています。

 そして2012年には、ピュアEVモデルである「for two エレクトリックドライブ」も導入されました。

 コンパクトなサイズに航続距離140km以上を実現するリチウムイオンバッテリーを搭載したEVは、全長2740mm×全幅1560mm×全高1540mmにまでボディも拡大されましたが、このモデルが新型シーポッドにもっとも近い存在だといえます。

 現行の3代目は2015年に登場。「for four」に通じるフロントマスクを採用し、メルセデスの最新安全技術も盛り込まれ、より快適で扱いやすいシティコミューターに進化しています。

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 マイクロカーを中心としたシティコミューターは、「シンプル・イズ・ベスト」なクルマです。

 豪華な軽ハイトワゴンもいいですが、公共交通機関よりクルマ移動が増えそうな現在の状況ではシティコミューターはかなり魅力的な乗り物かもしれません。