なぜこのタイミングで?

 2020年いっぱいで活動を休止した嵐の松本潤が、2023年の大河ドラマ「どうする家康」の主演を務めることが発表された。ジャニーズ事務所所属の俳優が大河ドラマの主演を務めるのは松本で5人目。『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)の著書があり、ジャニーズドラマ・ウォッチャーでもある霜田明寛氏が「大河ドラマとジャニーズ」について解説する。

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 ジャニーズ事務所所属の俳優で大河ドラマの主演を務めたのはこれまで、東山紀之、香取慎吾(当時)、滝沢秀明、岡田准一の4名で、松本潤が5人目となる。

 以下に、これまでの主演作品と、放送開始当時の年齢を挙げる。

不惑の年を迎えて「大河デビュー」の嵐・松本潤

1993年「琉球の風」(東山紀之・26歳)
2004年「新選組!」(香取慎吾・26歳)
2005年「義経」(滝沢秀明・22歳)
2014年「軍師官兵衛」(岡田准一・33歳)

 一方、初めてドラマで単独主演を担ってからの年数で数えてみると以下のようになる。

東山紀之:1987年「荒野のテレビマン」から6年
香取慎吾:1996年「透明人間」から8年
滝沢秀明:1995年「木曜の怪談」から10年
岡田准一:2002年「木更津キャッツアイ」から12年

 主演級俳優になってからだいたい6年〜12年ほどで大河ドラマ主演を果たしている傾向があるのがわかる、遅くとも33歳までに。

「軍師官兵衛」に主演した岡田准一は当時33歳

 対して松本潤は2001年に「金田一少年の事件簿」で連続ドラマ初主演を果たしてから、2023年で22年の時が経つ。

 年齢も、松本は放送中に40歳を迎えることになり、ジャニーズ史上最年長の大河主演だ。

 これまでの例を振り返ると、大河ドラマ主演は、主演級になって10年ほど経ち、主演が定着してきた彼らのさらなるステップアップの意味も大きい。

 そう考えると、もう十分に国民的アイドルとして認知を得ている松本にとって、かなり遅れてやってきた主演にも思える。

 なぜ、松本潤はこのタイミングでの大河ドラマ主演に踏み切ったのだろうか。

「嵐の転機」とは

 大河ドラマ主演というのは、大きな“名誉職”ではあるが、民放のドラマと比べて、撮影期間も長く、長い間、拘束される。

「義経」主演は22歳の時だった滝沢秀明

 グループアイドルとして活動する彼らにとって、大きな時間的負担であることは間違いない。

 事実、SMAPもV6も基本的に年1回ペースでライブツアーをおこなっていたが、香取慎吾の大河ドラマ放送中の2004年はSMAPのツアーが、岡田准一が主演した2014年はV6のツアーが開催されていない。

 レギュラー番組も複数あり、ライブツアーの演出を自ら担うなど、嵐としての活動に力を入れていた松本潤にとって、嵐の活動中は、もしオファーが来ても考えにくいものだっただろう。

 実際、昨年11月の活動休止前にきたオファーも保留していたといい、本人もコメントしている通り「嵐という船を一度降りて、新たな冒険の先を見つけようとしている」タイミングだからこそ、快諾したといえるだろう。

「新選組!」には26歳で主演した香取慎吾

 そもそも松本潤のブレイクに繋がったと言えるのは役者業だ。

 高視聴率を獲得した「ごくせん」(2002年)や「花より男子」(2005年)での俺様キャラは、一気に女性の心を掴んだ。

 ちなみに櫻井翔は「嵐の転機」を聞かれて「松潤が『花より男子』に出たとき」と答えているほど(*1)。

 たしかに「花より男子2」が人気を博した2007年、嵐は一気にブレイクを果たしている。

 松本潤の役者としての2度目の転機が、嵐の再びの転機になる可能性もあるだろう。

大河ドラマ主演を経た後に

 では、実際に大河ドラマ主演を経たジャニーズにはどんな変化が起きたのか、これまでの例をみてみよう。

26歳で「琉球の風」に主演した東山紀之

「木更津キャッツアイ」以降、等身大の若者の役が多かった岡田准一は、大河ドラマを境に、一気に時代劇や歴史上の人物の役が多くなった。

 石田三成を演じた「関ヶ原」(2017年)をはじめ、現在は、土方歳三を演じた「燃えよ剣」が公開待機中。

「散り椿」(2018年)や「蜩ノ記」(2014年)も時代小説が原作で、ともに黒澤明の助監督や撮影を務めていた人物が監督の骨太作品だ。

 これらはシニア層の集客も多く、劇場には平日昼間も客が多く入るような作品で、アイドルとしての岡田准一を知らない層にも認知が広がった。

 俳優として、アイドル人気に頼らなくてもよい実力と認知を身につけたとも言えるだろう。

 滝沢秀明は、「義経」放送終了直後の2006年春から、主演舞台「滝沢演舞城」を開始。

 これはのちに自身が演出を務める「滝沢歌舞伎」へと発展し、引退後の今も「滝沢歌舞伎ZERO」として、演出を続け、後輩に引き継がれている。

 この舞台では、義経と弁慶の物語が展開されたり「五条大橋」という演目があったりと、滝沢が大河ドラマを経たからこその演出が入っている。

 さらに「滝沢歌舞伎」シリーズは義経の部分に限らず、和太鼓や桜吹雪など、和のテイストがふんだんに取り入れられている舞台になっている。

 そもそもジャニー喜多川の演出は、いい意味での“和洋折衷”の要素が多分にあり、大河ドラマを経たことで、原点回帰を果たしたといったところだろうか。

ジャニーズと元ジャニーズが

 それでは松本潤はどうなるのか――と撮影開始前から考えるのはいささか早計だが、滝沢のように演出家としての幅が広がる――というパターンは大いにあるだろう。

 嵐のライブの演出を担っていた松本潤は、2015年の嵐の「Japonism」というアルバムのツアーで和洋折衷の演出を取り入れている。

 ジャニー喜多川氏に自ら連絡をとり、見に来てもらったといい、これが、氏が見た最後の嵐のライブとなってしまった(*2)。

 演出家としての松本潤には、ジャニー喜多川イズムを引き継ごうという意思が強く見られる。滝沢のように、大河ドラマ出演が今後の演出にプラスに働く可能性は高い。

 さて最後に――ジャニーズと大河ドラマという観点で欠かせないのは、ジャニーズと元ジャニーズの共演だ。
 
 民放の連続ドラマではなかなか起こり得ないその現象が、大河ドラマだとサラっと起きてしまう。

 ちなみに放送中の「麒麟がくる」は、主演こそジャニーズではないものの、ジャニーズ俳優を多く見ることのできるドラマだ。

 徳川家康を風間俊介が演じたほか、長谷川純、井上瑞稀などCDデビューを経ていない30代のジャニーズ俳優から10代のジャニーズJr.まで多く出演。

 さらには彼らの“大先輩”である本木雅弘や、2018年をもって退所した今井翼も出演していた。本木と長谷川にいたっては親子の役だ。

ジャニーズから離れた松本潤を

 大きく話題となったのは、2016年の「真田丸」。

「男闘呼組」の元メンバーで、現在もジャニーズ事務所に所属する岡本健一と既に退所していた高橋和也が同じシーンで共演を果たした。

 プロデューサーは共演について、「お二人とも芝居の世界になくてはならない存在で、それぞれにキャスティングをして、今回、たまたま一緒のシーンになりました。大変失礼かもしれませんが、台本も全部出来上がった後、スタッフに言われるまで、元男闘呼組の共演とは気が付きませんでした」と話しているため、意図的ではなかったようだ(*3)。

 固定の視聴者の層からいっても「ジャニーズだ」という意識が薄まるのが大河ドラマで、普段なら実現しないようなかつての仲間たちとの共演を見られるのもまた醍醐味だと言えるだろう。

 そう遠くない将来に「ジャニーズの嵐」として活動再開が期待されるわけだが、今回は“ジャニーズであること”から少し離れた松本潤を見ることができる貴重な機会かもしれない。

(*1)TBS「櫻井・有吉THE夜会」 2019年1月24日放送
(*2)テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』 2020年7月29日放送
(*3)スポニチ「真田丸」で元男闘呼組共演が実現!高橋和也&岡本健一“偶然の産物” 2016年9月18日

霜田明寛
1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。就活・キャリア関連の著書を執筆後、4作目の著書となった『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は4刷を突破。 また『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』の編集長として、映画監督・俳優などにインタビューを行い、エンターテインメントを紹介。SBSラジオ『IPPO』凖レギュラー。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月28日 掲載